労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  近宣 
事件番号  大阪地労委昭和46年(不)第65号 
申立人  近宣労働組合 
被申立人  株式会社 近宣 
命令年月日  昭和48年 6月 6日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  会社会議室、掲示板の組合使用拒否、営業部組合員からの得意先取上げ、昇格、一時金の組合員に対する低査定、組合員X1の配転および停職処分、宣親会の設立等をめぐる事件で、申立人の主張を認め、再査定、処分取消し、施設使用拒否の禁止、陳謝文の手交を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員に対して、昭和46年4月昇格、同年夏期一時金および同年10月昇格の各考課査定について、各査定時における申立人組合員の平均額ないし平均支給率が、非組合員のそれら(認定した事実中の第2表ないし第4表に記載のとおり)を下まわらないように再査定し、これによって生じた差額相当額を支払わなければならない。
 なお、この再査定にあたっては、申立人組合員の最低額ないし最低支給率が、非組合員のそれら(認定した事実中の第2表ないし第4表に記載のとおり)を下まわらないようにし、かつ、各申立人組合員の従来の考課査定を同人らに不利益に変更してはならない。
2 被申立人は、X1に対し、昭和46年10月1日づけ配置転換命令および同月11日づけ停職処分がなされなかったものとして取扱うとともに、同停職処分がなければ同人が受けるはずであった賃金相当額を支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人が組合活動のために、その施設の利用を求めた場合、業務に支障を生ずる場合を除き、これを拒否してはならない。
4 被申立人は、申立人に対して、下記の陳謝文をすみやかに手交しなければならない。
               記
                     年 月 日
 近宣労働組合
  委員長  X2 殿
               株式会社 近宣
                 代表取締役 Y1
 当社は、下記の行為を行ないましたが、これらの行為は、いずれも労働組合法第7条第1号および第3号に該当する不当労働行為であることを認め、ここに陳謝するとともに、今後このような行為を繰返さないことを誓約します。
               記
1 昭和46年2月22日以降、貴組合員X2氏、同X1、同X3氏、同X4氏および同X5氏の担当する得意先を一方的に管理職扱いなどに変更したこと
1 代表取締役らが、従業員の組合加入を妨げ、組合を中傷誹謗するなどの言動をしたこと
1 宣親会を利用して貴組合の組織の拡大を妨げるなど貴組合の弱体化をはかったこと
1 昭和46年4月および同年10月の昇給ならびに同年夏期一時金の支給について、貴組合員を不利益に取扱かったこと
1 昭和46年10月1日づけで貴組合員X1氏を作業部へ配置転換し、同月12日より3日間同氏を停職処分に付したこと 
判定の要旨  1202 考課査定による差別
2900 非組合員の優遇
会社が、昇給および一時金の考課査定において、組合員を集団的に低く査定したことは、評定項目の内容が査定者の主観的恣意的判断に左右されると認められるものであり、組合員らが非組合員より低く査定されるべき事情も見当らず、組合員であるが故の不利益取扱いであるといわざるを得ない。

1302 就業上の差別
2900 非組合員の優遇
3800 行為の結果・その他
会社が、執行委員長ら5名の保有していた得意先を管理職に移譲したことは、同人らにとって極めて不利な措置であるにもかかわらず、何らの代償措置を講じていないことなどからみて、組合員であるが故に不利益を課し、さらに組合員間においてもその取扱いを異にし、組合員間の離間を企図した不当労働行為である。

1300 転勤・配転
会社が、X1を営業成績不良を理由に営業から作業部へ配転したことは、営業から作業部への配転が異例であること、猶予期間中に強行されたことからみて、同人を嫌悪してなされた不利益扱いといわざるを得ない。

1300 転勤・配転
1400 制裁処分
1604 その他
会社が、本件配転について団交継続中に、被配転者の机等を移動させ、さらに業務命令拒否を理由に同人を停職処分に付したことは、配転命令が不当なものである以上是認することはできない。

2501 親睦団体の利用
会社が宣親会を設立させ、宣親会と決定した労働条件を組合との団交の場での回答とし、かつ、宣親会会長であるY2次長を団交に出席させる等の行為は、組合の弱体化を意図したものといわざるを得ず、労組法7条3号に該当する不当労働行為である。

0110 結成行為の範囲とされた例
2610 職制上の地位にある者の言動
社長が委員長らに対し、「組合結成を4月まで待ってほしい」と発言したことは、労働組合の結成時期は労働者自らが判断すべきことであることにかんがみ、支配介入である。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
社長が経理部所属組合員に対し、経理マンが組合員であるのはおかしいとの旨の発言をしたことは、組合員の範囲の決定が労働組合の自主的判断に委ねられていることに容かいしたものであり、同人に対する組合脱退強要に等しいものといわざるを得ない。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
社長が企業外の者の団交出席について組合非難の発言をしたことは、企業外の者であっても上部団体の役員あるいは組合の委任を受けた者を団交に出席させることは組合が自由になしうるところであることからして、不当労働行為である。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
次長が、社員2名を料理店に誘い、「組合に入る必要はないのではないか」等の発言をしたことは、明らかに同人らの組合加入をけん制し、これを妨害する意図の下になされたものと判断される。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
3020 組合活動への制約
会社が、会議室が社長室兼用であることを理由に組合の会議室使用を拒否したことは、会社が、組合に対抗して設立させた団体である宣親会には利用を許しているところからみて、組合を差別的に取扱うものといわざるを得ない。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
会社が、スペースがないことを理由に組合の掲示板使用を拒否したことは、レクリエーションなどのビラなどを自由にはらせていることからみて、その利用目的が組合活動であるがためと認められ、不当労働行為である。

2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
次長の組合加入妨害の発言は、次長が会社の利益を代表する者であるから、会社がその責を負うべきものと考える。

2501 親睦団体の利用
3410 職制上の地位にある者の言動
宣親会は、会社の労務担当部長および次長が会則を起草、配布し、加入を呼びかけたものであり、経営参加等に関する規定を含む会則の内容からみて、会社が設立させた団体であることは疑問の余地がない。

4421 文書掲示等を命じた例
得意先の取上げによる不利益扱いの救済は、得意先が時日の経過によりかなり変動があること、得意先の再配分が事実上不可能であることなどの事情があるので、陳謝文の手交にとどめざるを得ない。

4415 賃金是正を命じた例
昇給および一時金の考課査定上の不利益扱いの救済としては、組合員の平均額ないし平均率および最低額が非組合員のそれらを下まわらず、かつ、不利益変更とならないよう再査定を命ずることが妥当であると考える。

業種・規模  情報サービス・調査業(ソフトウェア業等)、広告業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集50集352頁 
評釈等情報   

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