労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大一紙業 
事件番号  京都地労委昭和45年(不)第2号 
申立人  総評化学同盟大一紙業支部 
被申立人  大一紙業 株式会社 
命令年月日  昭和48年 4月13日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  組合員に脱退工作したり、別組合を結成せしめたり、また、組合集会出席者の賃金をカットし更に、組合三役らを懲戒処分、退職扱い等にした事件で原職復帰、バックペイ、ポスト・ノーティスを命じ、別組合解散申立てについては却下した。 
命令主文  1 被申立人は、X1に対する昭和44年 6月25日付けの賃金カットを取り消し、カットした額を同人に支払わなければならない。
2 被申立人は、X2、X3に対する昭和44年10月30日付けの減給処分を取消し、減給相当額を同人らに支払わなければならない。
3 被申立人は、X4、X5に対する昭和44年10月30日付けの譴責処分を取り消さなければならない。
4 被申立人は、X2を昭和44年12月23日付け配置転換前の原職に復帰させるとともに、昭和45年1月21日から原職復帰に到るまでの間に同人が受けるべきはずの諸給与相当額を支払わなければならない。
5 被申立人は、X4に対する昭和44年12月1日付けの班長職からの降格を取消し、同日以降班長職復帰に到るまでの間の班長手当相当額を支払わなければならない。
6 被申立人は、X4に対する昭和45年7月7日付けの譴責処分ならびに同月25日付けの減給処分を取消し、減給相当額を支払わなければならない。
7 被申立人は、X4に対し、昭和45年8月15日から同年9月17日までの間、同人が受けるべきはずの諸給与相当額を支払わなければならない。
8 被申立人は、下記の文書を申立人に提出するとともに、同内容の文章を縦1メートル、横1.5 メートルの大きさの模造紙に墨書し、被申立人会社久御山工場正門内の従業員が出退社のさいに見易い場所に10日間掲示しなければならない。
              記
 会社は、会社職制が、貴組合の結成にさいし組合結成準備会のメンバーに対し、上部団体に加入しない組合の結成を要求したり、また、貴組合の組合員に対し、組合の行なうストライキへの不参加の要請や貴組合からの脱退ならびに会社が結成を期待している他の労働組合もしくは昭和44年11月4日結成された一般同盟大一紙業労働組合への加入を勧誘したりしたことは貴組合への支配介入であったことを認め、今後かかる行為はしません。
 以上、京都府地方労働委員会の命令により誓約します。
  昭和 年 月 日
  総評化学同盟大一紙業支部
   執行委員長 X3 殿
      大一紙業株式会社 代表取締役 Y1
9 申立人の一般同盟大一紙業労働組合に対する解散請求を却下する。
10 申立人のその余の請求を棄却する。 
判定の要旨  0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
1400 制裁処分
会社の交替制勤務の関係から、組合としては、集会を午後4時前後の時間帯を選ばざるを得ない事情にあったのであるから、集会が就業時間に多少くいこんでも会社として受忍すべきであり、かつ、業務に支障がなかったから、集会は正当な組合活動の範囲を逸脱したものではなく、かかる集会開催を理由に組合幹部を処分したことは、不当労働行為である。

1100 雇用関係の存否
1106 契約更新拒否
組合の中心人物が退職意思のないことを言明しているにかかわらず会社幹部の報告のみに基づき、本人の意思を確認せず、異例の退職措置をとったのは、実質的に解雇したに異ならず、結局、組合の中心人物たる同人を会社から排除する意図の下になされた不当労働行為である。

1203 その他給与決定上の取扱い
1603 組合活動上の不利益
職員の休暇の取扱い方によれば、形式的には欠勤届による欠勤であっても、所定の有給休暇期間内のものは実質的に有給休暇と扱われていたのであるから、所定期間に達していないX1が欠勤届を出して上部団体の大会に出席したことを理由に、会社が賃金カットしたことは、不利益扱いである。

1300 転勤・配転
組合委員長を、組合員が多数在籍している工場から、遠隔地にある組合員の僅少な工場に配転することにより同人の組合活動が困難になることが推認され、かつ、配転先の工場の業務廃止が予見されていて配転の合理的根拠が乏しいのにかかわらず、配転反対申入れを排して強行したのは、不当労働行為である。

1300 転勤・配転
組合書記長の営業部への配転は、未経験・異種への配転であり他方営業部に配転を約束された者が他に数名いること、さらに、組合活動をすれば不本意な配転を強いられることを暗示したものであること等を総合してみると、本配転は、不当労働行為である。

1200 降格・不昇格
1400 制裁処分
X4が月産生産量を達成できなければ班長を降りると約したというが、その事実は確認し難く、かつ、事実だとしても、X4の職務上の地位からみて生産の全責任を負わすことはできず、さらに生産量は約束のものには達しなかったが従来より向上していることなどからみて、会社があえて降職したのは、X4が組合員たることを嫌ってなした不当労働行為である。

1400 制裁処分
書記長X4が仕事の応援に行かなかったのは、組合員の有給休暇承認を条件としてX4が仕事の応援に行くといったに対し、会社が態度を保留して回答しなかったことによるものであり、これをもって同人の責任を追求し、譴責処分に付したのは、同人の組合活動を嫌ってなした不当労働行為である。

1400 制裁処分
譴責処分が不当労働行為である以上、この処分に伴う始末書提出拒否を理由とする減給処分もまた不当労働行為である。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
2625 非組合員化の言動
3410 職制上の地位にある者の言動
部長や課長代理らが組合結成の中心メンバーに対し、上部団体不加入、企業内のみの組織形態を求めたり、組合員に対し、ストへの不参加、組合脱退、別組合への加入を要請したことなどは、いずれも不当労働行為である。

4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
本件救済を求めている者のうち、X3ら5名は組合を脱退しているので、組合の同人らについての救済請求は認容できない。

1401 労務の受領拒否
4407 バックペイの支払い方法
X4の指名ストは、本来就労すべき職場における労務提供を会社が拒否した事情の下になされたもので、実質的にストライキとはいえず、不就労の責めは会社に帰せられるべきものであるから、Fの指名スト中の諸給与相当額も、当然これを支払うのが相当である。

5003 第二組合、その他の組織に関する請求
5008 その他
別組合の解散を求めている点については、労働組合の解散を命ずることは、労委の権限外のことであるから、却下するのが相当である。

業種・規模  パルプ・紙・紙加工品製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集50集43頁 
評釈等情報  労働法律旬報 高橋良爾 1973. 8.10  838号 61頁 

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