労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  門司信用金庫 
事件番号  中労委昭和44年(不再)第28号 
中労委昭和44年(不再)第29号 
再審査申立人  門司信用金庫 
再審査被申立人  門司信用金庫労働組合 
命令年月日  昭和47年10月 4日 
命令区分  一部変更(初審命令を一部取消し) 
重要度   
事件概要  争議時に就労した別組合員に対する非常勤手当の支給、組合員家族に対する文書配布、労働委員会出頭の証人の差別取扱い、仕事上のミスを理由ととする出納係の譴責処分、身元保証書未提出を理由とするX1.X2の減給処分、これらの処分に関する団交拒否をめぐる事件で、初審命令で棄却したX1.X2の減給処分、組合員家族に対する文書配布について不当労働行為の成立を認め、前者に対してはバックペイ後者に対してはポスト・ノーティスを、また、労働委員会出頭の証人の差別扱いについて是正を命じ、その余の再審査申立ては棄却した。 
命令主文  初審命令の主文を取り消し、次のとおり変更する。
1 門司信用金庫(以下「金庫」という。)は、X1およびX2に対する昭和41年5月16日付の減給処分をそれぞれ取り消し、次の措置を含めて、上記各処分がなかったと同様の状態を回復させなければならない。
(1) 上記各処分により同人らが失なった諸給与相当額(河野にあっては、昭和44年4月4日までの分に限る。)の支払い
(2) 上記各処分がなされたことを理由とする同人らに対する昇給、一時金等の減額分(X2にあっては、昭和44年4月4日までにかかる分に限る。)相当額の支払い
2 金庫は、労働委員会に門司信用金庫労働組合(以下「労組」という。)の申請にかかる証人として出頭した労組の組合員に対して、既往の分も含め、金庫の申請にかかる証人として出頭した従業員と同様に取り扱わなければならない。
3 金庫は、労組の組合員を出納係およびテラー係に集中的に配置したり、労働委員会に出頭する証人の取扱いについて、労組の組合員を他の従業員と差別取扱いをしたり、労組の争議行為に参加しない従業員に対して非常勤務手当を支給したり、また、労組を中傷する文書を労組の組合員の家族に配布したりして、労組の運営に支配介入をしてはならない。
4 金庫は、労組に対し下記文書を本命令交付後1週間以内に交付しなければならない。
               記
門司信用金庫は、貴組合の組合員を出納係およびテラー係に集中的に配置したこと、労働委員会に出頭する証人の取扱いについて、貴組合の組合員を他の従業員と差別取扱いをしたこと、貴組合の争議行為に対抗して、これに参加しない従業員に対して非常勤務手当を支給したこと、組合員に対する懲戒処分は団体交渉事項ではないとしてその団体交渉を拒否したこと、および貴組合を中傷する文書を貴組合の組合員の家族に配布したことは、いずれも貴組合に対する不当労働行為であり、ここに陳謝の意を表するとともに、今後このような行為をくり返さないことを誓約します。中央労働委員会の命令により本文書を交付します。
   昭和 年 月 日
               門司信用金庫
                 理事長 Y1
 門司信用金庫労働組合
     執行委員長 X3 殿
5 労組のその余の救済申立てについては棄却する。 
判定の要旨  1203 その他給与決定上の取扱い
2900 非組合員の優遇
労働委員会に出頭する証人は、労使いずれの側の申請によるも、労働基準法第7条の公の職務に該当するものと解してさしつかえなく、使用者申請の証人を出張扱いとし、組合申請の証人の賃金をカットしたことは、組合員なるが故の不利益取扱いであるとともに、支配介入といわざるを得ない。

1400 制裁処分
出納違算を理由とする組合員3名の懲戒処分は、出納違算が出納係としての簡易な事務処理の誤りに起因していること、財務局から出納違算の多いことが指摘され、金庫が出納違算の防止に関する指示をなした直後であることからみて、組合員なるが故になされた処分とは認められない。

1400 制裁処分
出納違算に関する始末書未提出を理由とする組合員3名の懲戒処分は、出納違算を対象とする懲戒処分が不当労働行為でないのであるから、たとえ労組の指示に基づくとはいえ、同人らが始末書を提出しなかった以上、就業規則により処分されても不当労働行為とはいえない。

1400 制裁処分
現金保管処理の責任を負う出納係は、金額の多寡にかかわらず現金が納庫されたかどうかを確認する義務があり、このような措置をとらず、現金を放置したまま帰宅した行為は、係としての注意義務を怠ったもので、たとえ組合員であっても譴責処分をうけるのは当然であり、不当労働行為とはいえない。

1400 制裁処分
3600 処分の差別
身元保証書未提出を理由とする組合員2名への懲戒処分は、同人らが身元保証書に添付する保証人の印鑑証明手続で遅れる旨申立ていること、同人らと同様に身元保証書未提出の別組合員が処分をうけていないことからみて、活溌な組合活動家である同人らを嫌悪してなした不利益取扱いである。

2301 人事事項
懲戒処分は、被処分者の人事考課に反映し、その後の労働条件にも影響するところから、出納違算および現金保管処理に関する懲戒処分につき、就業規則上の適用に疑義をもち、その釈明を求めて団交を申入れるのは当然であり、これを団交事項でないとして拒否するのは妥当でない。

2620 反組合的言動
組合の情宣活動によって、出資者、取引先が動揺するのを恐れた金庫が、労使紛争の現状につき見解を明らかにし、金庫に対する理解と協力を求めるためビラを配布した行為は、信用を重んずる金融機関としては止むを得ないものと認めざるを得ず、支配介入とは認めがたい。

2620 反組合的言動
金庫が従業員父兄に文書を配付した行為は、文書の内容が組合および組合員を非難攻撃し、賃金上の差別は勿論のこと、場合によっては金庫からの追放も辞さないことを明らかにして、組合からの脱退を説得するよう依頼したものであることからみて、組合の弱体化を意図した支配介入といわざるを得ない。

2900 非組合員の優遇
組合の争議行為中就労した別組合員に非常勤務手当を支給した行為は、手当の性格からいって妥当とは認められず、別組合との協定に基づく「手当」を文言上拡大解釈し、争議行為に参加しない者に支給することで、組合の争議行為を規制する意図でなされた支配介入と認めざるを得ない。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合員を出納係、テラー係に集中配置した理由として、会社は申立て組合に対する争議対策上の便宜を考慮したものである旨主張するが、これをもって、業務の単純な両係に中堅職員の多い申立て組合員を集中配置した理由とはなり得ず、申立て組合の弱体化を企図してなしたものと認めざるを得ない。

4416 将来にわたる不作為を命じた例
4419 現存格差を一挙に是正した例
組合申請証人に対する差別扱いの救済については、かかる行為の禁止に止まらず、不利益扱いについて是正する必要があるから、この点の初審命令を変更し、会社申請証人と同様に取扱うよう命ずることとした。

5124 その他の審査手続
配転に関する団交拒否については、初審においては請求していないのであるから、再審査の段階において救済を申立てても、当委員会としては、労働委員会規則第54条の規定により、再審査の対象として取扱うことはできない。

5124 その他の審査手続
身元保証書の更新に関する懲戒処分についての団交拒否については、初審においては請求していないのであるから、再審査の段階において救済を申立てても、当委員会としては、労働委員会規則第54条の規定により、再審査の対象として取扱うことはできない。

業種・規模  金融業、保険業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集48集373頁 
評釈等情報   

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