労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  岩手銀行 
事件番号  岩手地労委昭和41年(不)第1号 
申立人  岩手銀行従業員組合 
被申立人  株式会社 岩手銀行 
命令年月日  昭和47年11月15日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  組合併存下での賃金協定の拡張適用申入れ、新入行員に対する組合の性格の説明、配転、担当業務、定昇、昇格に関する組合間差別をめぐる事件で定昇、昇格の差別是正、ポスト・ノーティスを命じ、そのほかは棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、昭和40年度から昭和43年度にわたる定期昇給について、各年度定期昇給時に申立人の組合員であった者の定期昇給を再査定のうえ、それぞれその当時における同組合員総数の昭和40年度は85.37 パーセント、昭和41年度は89.54 パーセント、昭和42年度は94.09 パーセント、昭和43年度は94.7パーセントを超える者が、B昇給以上の昇給になるよう是正し、是正の当時から本件審問終結時にいたるまで引続き申立人の組合員であった者で申立人が定期昇給差額金を求めているものに対し、是正時以降の賃金差額を支払うこと。
2 被申立人は、昭和40年度から昭和43年度にわたる昇格について、申立人の組合員であった者の再査定を行ない、遡って昇格の是正をし、昇格の是正に伴う手当等賃金差額を支払うこと。
3 被申立人は、前2項による是正結果を個人別に対照表示して申立人に通知すること。
4 被申立人は、本命令交付の日から7日以内に縦80センチメートル、横50センチメートルの白紙2枚を使用して墨汁により前記第1項及び第2項の命令があった旨を明記し、これを被申立人の本店及び各支店営業所に掲示し、少なくとも10日間存置して全従業員に周知させること。 
判定の要旨  1202 考課査定による差別
2901 組合無視
 銀行が提出した全疎明資料および全審問過程を通じて、申立て組合員の定昇を低く査定したことに対する妥当性が認められないこと、申立て組合を脱退し別組合に加入した者の定昇状況がよくなっている事実などからみると、申立て組合員を嫌悪し申立て組合の弱体化を企図してなしたものと認めざるを得ない。

1200 降格・不昇格
2901 組合無視
5121 挙証・採証
 昇格について、申立て組合員を不利に取扱ったとの組合主張につき、銀行からは申立て組合員を不利に取扱ったのではないとする具体的な反証がなされない反面、同位号者のうち申立て組合を早く脱退した者の昇格が有利になされている事実からみて、申立て組合、申立て組合員に対する不当労働行為と認められる。

2400 その他
 申立て組合は、銀行が別組合との間に協定した賃金協定を労組法第17条に基づき、拡張適用したい旨申入れたことは団結権、団交権の否認にあたる旨主張するが、申入れの当日団交が行なわれ、話合いがついた事実が認められるので不当労働行為とはいえない。

2620 反組合的言動
 銀行が、新入行員研修資料のうちの「当行行員としての心構え」のなかで、銀行には二つの組合があるとして、両組合の性格を述べたことは、その内容から、新入行員の申立て組合加入を嫌い、別組合への加入を歓迎する銀行の意向がくみとれるところからみて、申立て組合への支配介入といわざるを得ない。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
 申立て組合員4名の配転は、支店長の申立て組合員を嫌悪し申立て組合員疎外の意思を表示した人事報告に基づき、概ね同報告のとおり実施されている事実からみて、申立て組合の弱体化をはかり、別組合の育成に寄与した不当労働行為と認めざるを得ない。

2620 反組合的言動
 職場集会を録音したテープの消音、本店車庫前での集会に対する注意、申立て組合役員の中央委員会出席阻害等の行為は、多少嫌がらせ的な使用者の行為として不適当のそしりを免れない面もあるが、これをもって直ちに不当労働行為と認定するまでにはいたらない。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
 銀行員が希望する貸付業務に別組合員を多く配置し、一方、銀行員が好まない公金業務に申立て組合員を多く配置したことについて、銀行が合理的な理由を示さないことからみると、申立て組合員を差別して取扱ったものと認めざるを得ない。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
3011 従業員教育
 銀行員としての将来性を考えるとき、貸付業務の経験が必要であるにもかかわらず、格段の理由もなく貸付業務に申立て組合員を配置せず、また、貸付担当者研修会に参加させなかったことは、申立て組合員なるが故の差別扱いと認めざるを得ない。

3106 その他の行為
 別組合役員経験者で組織する労友会と、別組合現役員が会合をもったとしても、退役した組合員が現役員の相談に応ずることは一般にあり得ることであり、たまたま退役した役員が管理職であったとしても、これをもって銀行との間に意志疎通があったとは認められない。

4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
 定昇および昇格に関する差別扱いが申立て組合に対する支配介入の手段として行なわれたこと、組合からの申立てであることから、申立て組合の団結権回復に利益があると認められる救済時点の申立て組合員の救済のみを行なえば足り組合脱退者、退職者については被救済利益がないものと判断する。

4415 賃金是正を命じた例
 定昇差別の是正方法として、不当差別をうけなかった者の定昇実態が認定し得た40・41年度については、これを基準に、定昇実態が認定し得ない42、43年度については、全従業員の定昇実態の数字を基準に是正するのが妥当と考えられる。

4415 賃金是正を命じた例
 昇格差別の是正方法として、本来の昇格基準に定める各級における最低在位年数に達した者については、前述定昇の再査定結果に対応する人事考課の再評定により昇格せしめることが妥当と判断する。

業種・規模  金融業、保険業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集48集107頁 
評釈等情報   

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