概要情報
事件名 |
メタルプリント |
事件番号 |
大阪地労委昭和46年(不)第16号
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申立人 |
大阪一般労働組合 |
被申立人 |
メタルプリント 株式会社 |
命令年月日 |
昭和47年 9月21日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、組合活動家2名を単純な職場に配転し、45年度賃上げに低い考課査定を行ない、さらに抗議行動を職場離脱として懲戒処分に付したこと等が争われた事件で、考課査定の是正と差額支給、懲戒処分の取消し、バックペイおよびポスト・ノーティスを命じ、他は棄却した。 |
命令主文 |
1. 被申立人は、昭和45年度賃上げにおける考課点をX1については9点、X2については8点に修正し、それぞれ支払い済みの賃金との差額を支給しなければならない。 2. 被申立人は、X2およびX3に対して、二交替制勤務協力一時金として10,000円を支給しなければならない。 3. 被申立人は、X3を昭和45年11月21日以降班長として取扱わなければならない。 4. 被申立人は、X1に対して、昭和45年9月14日の3日間の出勤停止処分をしなかったものとして取扱い、同処分がなければ同人が得たであろう賃金相当額を支給しなければならない。 5. 被申立人は、X2およびX3に対して、昭和45年9月14日の譴責処分がなかったものとして取扱わなければならない。 6. 被申立人は、家庭訪問を行なって申立人組合メタル分会からの脱退をすすめてはならない。 7. 被申立人は、縦1メートル、横2メートルの白色木板に下記のとおり墨書して、被申立人会社正門付近の従業員の見やすい場所に一週間掲示しなければならない。 記 年 月 日 大阪一般労働組合 委員長 X4 殿 大阪一般労働組合メタル分会 分会長 X1 殿 メタルプリント株式会社 代表取締役 Y1 当社は、当社が行なった下記の行為は労働組合法第7条第1号および第3号に該当する不当労働行為であったことを認め、ここに陳謝するとともに、今後このような行為を繰返さないことを誓約します。 記 1. X1氏およびX2氏に対して、再三塩ビ切り作業を行なわせるなどして嫌がらせを行なったこと 1. 昭和45年度賃上げにおいて、X1氏およびX2氏に対して不当な考課を行なったこと 1. 二交替制勤務協力一時金をX2氏ら貴分会員8名に支給しなかったこと 1. 班長候補の決定と班長任命において、X1氏、X2氏およびX3氏らを不当に差別したこと 1. X1氏を3日間の出勤停止処分に、X2氏ら貴分会員6名を譴責処分に付したこと 1. 家庭訪問を行なって貴分会からの脱退をすすめたこと 1. 組合旗を撤去し、ビラ・ポスターをはぎ取ったこと 以上大阪府地方労働委員会の命令により掲示します。 8. 申立人のその他の申立ては、これを棄却する。 |
判定の要旨 |
1202 考課査定による差別
組合は、賃上げにおける考課査定において、組合員の平均が他の従業員の平均より低位であると主張するが、それは、現在の組合員との比較であって、査定当時の組合員の平均と比較してみると、僅かな差が存するに止まるから、不当労働行為とは認め難い。
1202 考課査定による差別
2901 組合無視
考課査定のうち、X1とX2の考課点において、勤務態度・知識・技能および出勤率が、他の従業員に比し、劣っていないのに低位に査定されているのは、会社が同人らの組合活動を嫌悪して行なったものであり、この会社の措置は、不利益取扱いおよび支配介入行為であるといわざるを得ない。
1201 支払い遅延・給付差別
2901 組合無視
夏季一時金の上積みとみなされる協力金の支給について、分会員8名にのみ支給しなかった会社の措置は、正当な理由がないことから、分会員であることを嫌悪した不利益取扱いおよび支配介入に該当するといわざるを得ない。
1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
分会の中心的活動家であるX2およびX1を、従業員から敬遠され、通常は新入社員やアルバイトによって行なわれている塩ビ切り作業に従事させた会社の措置は、合理的理由が見出せず、同人らの組合活動を嫌悪してなされたものであると認められるから不利益取扱いおよび組合運営に対する支配介入にあたる。
1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社が、X1ら7名の集団抗議行動は職場離脱であるとして、X1を3日間の出勤停止処分に、X2ら6名を譴責処分にしたのは、X1らの抗議が寮食堂使用の事前連絡不十分、ビラ・ポスターの無断撤去等に対するものであることからみて、同人らのみを問責するのは当は得ず組合活動を阻害しかつ弱体化を目的とした不当労働行為である。
1604 その他
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社が、X1ら3名を班長候補にしなかったのは、選考基準に従って公正に決定したと主張するが、同人らが他の班長候補者より劣っていたとは認められないこと、同人らが組合結成時からの分会員であることなどからみて、不利益取扱いおよび支配介入行為といわざるを得ない。
1604 その他
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
X3を班長に任命しなかった会社の措置は、同人が分会員であることを嫌悪してのことと認められ、不利益取扱いおよび支配介入であるといわざるを得ない。
2240 説明・説得の程度
分会は、団交において会社が、考課に関する具体的基準と分会員の個人別考課点を明示しないことは、実質的団交拒否であると主張するが、分会は交渉の結果、会社の考課基準を了承しており、個人別考課点を明示しない会社の態度を直ちに不当とすることはできない。
2246 併存団体との関係
分会は、新労との団交を先行させているのは実質的団交拒否であると主張するが、分会の要求提出日を含め、分会と新労の団交開催回数、時期等について十分疎明していないので、組合の主張を直ちに採用することはできない。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
係長らによる分会員の家庭訪問は、分会員の組合活動に言及し、会社にとって不都合であると述べたり、家庭訪問が契機となって分会員の組合脱退・退社などが認められるので、家庭訪問に名をかりて、その実分会脱退をすすめたものといわざるを得ない。
3020 組合活動への制約
従前の慣行等を無視しビラ・ポスターをはぎ取り、組合旗を一方的に撤去した会社職制の行為は、分会の存在を嫌悪して行なったものと認められ、分会に対する支配介入である。
4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
分会員8名のうち、6名については、その後分会を脱退しまたは退社しているので、協力金の不支給については救済しない。
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業種・規模 |
出版・印刷・同関連産業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集47集357頁 |
評釈等情報 |
 
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