概要情報
事件名 |
東洋計器 |
事件番号 |
大阪地労委昭和44年(不)第48号
大阪地労委昭和45年(不)第23号
大阪地労委昭和46年(不)第8号
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申立人 |
全大阪金属産業労働組合 |
被申立人 |
東洋計器 株式会社 |
命令年月日 |
昭和47年 6月 5日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、複数組合が存在する中で、申立人組合員に対して一時金の査定、ならびに団交の時期等を差別扱いし、またメーデーの有給休暇を拒否した事件で、不利益にならないよう再査定をすること、有給休暇をみとめること、またポスト・ノーティスを命じ、他は棄却した。 |
命令主文 |
1. 被申立人は、下記申立人組合員に対する昭和44年度および45年度の賃上げ、夏季一時金および年末一時金について、次のとおり措置しなければならない。 (1) 上記各賃上げおよび一時金の考課実施当時在籍した申立人組合員の、上記各賃上げおよび一時金ごとにおける成績考課(勤務態度による評定)の各ランクの人員の割合いが、申立人組合員を除く被申立人会社淀川工場従業員(ただし、課長以上の役職者を除く)の場合と同一になるように再査定すること (2) この再査定にあたっては、現在申立人組合員である者および当時申立人組合員であった者の従来の査定結果を同人らに不利に変更しないこと (3) この再査定について生じた差額相当額(ただし、各賃上げについては、それぞれ3月分から是正時までの分)を、それぞれ下記申立人組合員に支給すること (4) 再査定の結果、賃上げ額に変更を生じた場合は、それぞれ下記申立人組合員に対して、今後、再査定による賃上げ額を支給すること (下記組合員略) 2. 被申立人は、昭和44年5月1日、X1、X2およびX3が、それぞれ有給休暇を使用したものとして取扱い、同人らに対して、同人らが受けるはずであった賃金相当額を支払わなければならない。 3. 被申立人は、縦1メートル、横2メートルの白色木版に下記のとおり墨書して、被申立人会社の本社および淀川工場の正面または通用門付近の従業員の見やすい場所に1週間掲示しなければならない。 記 年 月 日 全大阪金属産業労働組合 執行委員長 X4 殿 同労働組合東洋計器分会 分 会 長 X1 殿 東洋計器株式会社 代表取締役 Y1 当社は、下記の行為を行ないましたが、これらの行為は、労働組合法第7条第1号、第2号および第3号に該当する不当労働行為であることを認め、ここに陳謝するとともに今後このような行為を繰り返さないことを誓約します。 記 1. 昭和44年度および昭和45年度の賃上げ、夏季一時金および年末一時金において、貴組合員に対し不利益な取扱いをしたこと 2. 昭和44年度賃上げおよび同年度夏季一時金の団体交渉において、東洋計器労働組合と合意に達したのちに貴分会に回答したこと 3. 昭和44年のメーデーに貴組合員が有給休暇を使用して参加することを拒否したこと 以上、大阪府地方労働委員会の命令によって掲示します。 4. 申立人のその他の申立ては、これを棄却する。 |
判定の要旨 |
1202 考課査定による差別
2900 非組合員の優遇
申立組合員の考課査定が、他組合員に比べて低いことについて従業員として査定に影響を及ぼす程の異質な点はない等合理的な理由がなく、一方会社が組合脱退の勧誘を行ない又、組合役員を処分していたりしていたことから考えると、この査定は、組合員を不利益に取扱うと同時にそれにより組合の弱体化を意図した行為である。
1203 その他給与決定上の取扱い
組合員2名の賃上げ分の支給額が少いのは考課査定の結果によるものでなく、欠勤による控除と認められる。
1203 その他給与決定上の取扱い
1600 休暇の取扱い
3106 その他の行為
メーデー参加のため有給休暇を求めたのに、これを認めず欠勤扱いとした措置は、有給休暇は原則として従業員が自由に利用出来、使用者がこれを拒否できるのは時季変更権を行使する場合に限られるものであるから、不利益取扱いであり、同時に組合の運営に対する支配介入である。
2244 特定条件の固執
2246 併存団体との関係
団交については、単にその回数だけで比較できないが、申立組合との団交において、回答を行わず交渉事項とは無関係な条件に固執していたりし、又、他組合の妥結案を提示して応諾を求め、それに固執するなど、申立組合の存在を軽視する等の態度があり、こういう団交は誠意ある交渉とはいえない。
4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
不利益取扱いをうけた当時、申立組合員であったとしても、救済時に、脱退している者については救済の必要をみとめ難い。
4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
有給休暇を欠勤扱いとされた日数まで、その後全部消化した場合には、その軽卒さは責められるにしても、そのことをもって、欠勤扱いを承認したとはいえない。
4415 賃金是正を命じた例
考課査定の救済方法としては、各ランクにおける人員の割合いが他組合員の場合と同様になるよう再査定をするとともに、その際に救済請求の趣旨より不利益に変更することを禁ずることをも命ずるのが妥当である。
4413 給与上の不利益の場合
有給休暇を欠勤扱いとしたことの是正として、控除した賃金の支払いを命ずると、既に欠勤扱いとされた日数に相当する休暇を後日消化しているので、かえって有利に取扱うこととなるが、余分の休暇扱いは、会社において適宜是正することが妥当と考える。
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業種・規模 |
電気機械器具製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集46集505頁 |
評釈等情報 |
労働法律旬報 1972. 8.10 814号 71頁 
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