労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  長崎陸運 
事件番号  長崎地労委昭和46年(不)第9号 
申立人  長崎陸運労働組合 
被申立人  有限会社 長崎陸運 外1名 
被申立人  有限会社 桑原運送店 
被申立人  長陸運輸 株式会社 
命令年月日  昭和47年 4月18日 
命令区分  全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない) 
重要度   
事件概要  N運輸、K運送店、N陸運の設立、廃止の都度移籍させられていた従業員が組合を結成し、N運輸に賃上げ、一時金に対する団交を要求をしたところ、それを拒否したほか、組合員への一時金支給を拒否し、福利厚生面で組合員を差別扱いした事件で、上記3社が外形上はそれぞれ独立した企業体になっているが、実質はY1個人によって経営される一企業体であるとの判断から、3社に団交応諾、一時金等の差別取扱いの是正を命じた。 
命令主文  1. 被申立人3会社は、申立人組合の申し入れた賃金および一時金要求その他の労働条件の決定について、すみやかに誠意をもって団体交渉を開始しなければならない。
2. 被申立人3会社は、昭和46年8月9日に非組合員に対して支給した夏季一時金と同一条件で計算のうえ、同一時金を組合員に対し、すみやかに支給しなければならない。
3. 被申立人3会社は、命令書交付の日から5日以内に、下記の文言を縦1メートル、横1.5 メートルの木板に墨書し、長陸運輸株式会社・有限会社桑原運送店。同長崎陸運の従業員が見やすい場所に5日間掲示しなければならない。
 なお、年月日の記載は掲示する初日をもってすること。
            記
 長崎県地方労働委員会の命令によって、次のとおりお知らせします。(1) 組合との労働条件に関する交渉について、誠意をもって応じなかったこと。
(2) 昭和46年度夏季一時金を非組合員にのみ支給し、組合員に対しては、組合脱退を強要したうえ、支給しなかったこと。
(3) 組合員に対して、欠陥車を配車したり、全く仕事を与えなかったこと。
(4) 給料から貸付金などを控除するに際し、組合員についてのみ一方的にこれを行なったこと。
 以上は、会社が行なった不当労働行為であることを認め、ここに陳謝いたします。
 長崎陸運労働組合
  執行委員長 X1 殿
              長陸運輸株式会社
               代表取締役 Y1
              有限会社桑原運送店
               代表取締役 Y1
              有限会社長崎陸運
               代表取締役 Y1
4. 被申立人Y1は、被申立人各社とともに、命令の実施について、格別の努力をしなければならない。 
判定の要旨  1201 支払い遅延・給付差別
2900 非組合員の優遇
一時金交渉中に、社長が非組合員にのみ一時金を支給し、組合員に対して、組合員には支給しない、組合を脱退すれば支給する、等の発言をなした行為は、組合員を理由なく差別することで組合の弱体化をはかった7条1号、3号に該当する不当労働行為である。

1302 就業上の差別
不当に解雇された委員長の復職にあたり、従前同人が専用していた新車から故障の多い不完全車に配車換えしたこと、収入の多い遠距離の仕事は勿論、市内の仕事も与えなかったことは、いずれも合理的理由が認められないところから、同人の組合活動を嫌悪してなした不当労働行為と判断する。

1601 福利厚生上の差別
委員長X1の惹起した事故の自動車の修理代金を、慣行に反して同人の給料から差引いたこと、また、従来の取扱いに反して同人に対してのみ病気治療費の借用を拒否したことは、いずれも合理的理由がないことからみて、同人の組合活動を嫌悪してなした不当労働行為である。

1102 業務命令違反
1401 労務の受領拒否
1601 福利厚生上の差別
組合員がN運輸からK運送店、N陸運に配属換えになることに反対したことを理由に、一方的に就労を拒否したこと、組合員にのみ慣行に反して給料の前借を拒否し、既前借分の分割払いを認めなかったことは、いずれも合理性が認められないところからみて、組合員に対する不利益取扱いである。

2242 回答なし
地区労のオルグとの連名で申入れた団交を理由なく拒否しベア・一時金要求に対し書面は受取るが回答の意思はないとの態度をとったN陸運の行為は、7条2号に該当する不当労働行為である。

4407 バックペイの支払い方法
非組合員にのみ一時金を支給したことが不当労働行為である以上、救済の方法としては、組合員にも非組合員に支給した条件と同一の基準でこれを支給するのが相当である。なお、支払義務は別掲の理由から、N運輸、K運送店、N陸運にあるものと判断する。

4421 文書掲示等を命じた例
委員長に対する配車換え、病気治療費の前借拒否等、組合員に対する一方的な就労拒否、給料の前借拒否等が不当労働行為と判断される以上、別掲の理由から、N運輸、K運送店、N陸運の3社連名のポスト・ノーティスを命ずるのが相当と判断する。

4502 交渉事項を対象に交渉出席者に触れた例
N運輸の団交拒否が不当労働行為である以上、N運輸に団交義務が存するのは勿論であるが、K運送店、N陸運が別掲の判断どおり、N運輸と同一性の会社であること、3社が共通の代表取締役Kの支配下にあることから、2社についても、団交応諾の義務があると判断する。

4916 企業に影響力を持つ者
N運輸、K運送店、N陸運の3社は、外形上はそれぞれ独立別個の法人格を有する企業体であるが、実質はY1個人が経営する一個の企業体とみるのが相当である。故に、対組合への責任は3社が一体となって負うべきであり、企業経営の実権者であるY1も労組法上の使用者としての責任を負うべきであると判断する。

業種・規模  道路貨物運送業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集46集394頁 
評釈等情報   

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