概要情報
事件名 |
酒井特殊カメラ |
事件番号 |
大阪地労委昭和44年(不)第1号
大阪地労委昭和44年(不)第24号
大阪地労委昭和44年(不)第40号
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申立人 |
全大阪金属産業労働組合 |
被申立人 |
株式会社 酒井特殊カメラ製作所 |
命令年月日 |
昭和47年 3月15日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が分会公然化前、威嚇的に分会の動静をさぐり、分会公然化後は、分会の誹謗、新組合結成の賛同署名の便宜供与、分会員の家庭工作、地労委審問出席およびメーデー参加の年休請求に対する欠勤扱い、賃上げ実施時期の組合間差別、分会員の退寮処分と戒告処分、および一時金考課査定の不利益取扱等を行った事件で、考課査定方法の是正の他は申立てを全面的に認容し、不利益取扱いの是正とポスト・ノーティスを命じた。 |
命令主文 |
1. 被申立人は、認定した事実第2表に記載のX1ほか18名の者(以下単に「19名」という) に対する昭和44年度賃金引上げを同年4月25日支払分から実施したものとして取扱い、同月1カ月間の引上げ額を支払わなければならない。 2. 被申立人は、下記の者に対する欠勤扱いを下記の日時について年次有給休暇扱いとしなければならない。 記 (1)X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7およびX8の8名については昭和44年 2月10日 (2) X9およびX7の2名については昭和44年4月3日 (3) 19名のうちX10およびX11を除く17名については昭和44年5月1日 3. 被申立人は、X2およびX4に対し、昭和44年5月13日づけの譴責処分および減給処分をしなかったものとして取扱い、同人らに減給額を支払わなければならない。 4. 被申立人は、昭和44年夏季一時金における考課得点を下記のとおり是正し、各人に対し増加点数を1点 620円として算出した金員を支払わなければならない。 記 (1) X1については、職級を3級に格付し、考課得点を40.8点とすること (2) X2、X3、X4、X12、X6、X13、X8およびX14についてはそれぞれ 8.0点を加えること (3) X9およびX15については 7.6点を加えること (4) X5については 3.1点を加えること 5. 被申立人は、縦1メートル、横2メートルの白色木板に、下記のとおり墨書して、すみやかに会社従業員の見やすい場所に1週間掲示しなければならない。 記 年 月 日 全大阪金属産業労働組合 酒井カメラ分会 分会長 X1 殿 株式会社 酒井特殊カメラ製作所 代表取締役 Y1 記 当社は、貴分会の分会員に対し、下記の行為を行ないましたが、これらの行為は、労働組合法第7条第1号および第3号に該当する不当労働行為であったことを認め、ここに陳謝するとともに今後このような行為を繰り返さないことを誓約いたします。 記 1. 昭和43年12月27日夜X1、X2およびX3を会社に連行し、X2とX3に対し工場長が威圧を加え、分会員の氏名を明らかにするよう強要したこと 2. 昭和44年の正月休みを利用してX4、X3およびX2らを組合から脱退させるべく家庭工作を行なったこと 3. 貴分会が反対している株式会社酒井特殊カメラ製作所労働組合の結成について積極的に支持し協力したこと 4. 昭和44年2月10日および 4月 3日に行なわれた労働委員会の審問への出席や、同年5月1日メーデー参加のための年次有給休暇請求に対し、組合活動であることなどを理由に欠勤扱いしたこと 5. 昭和44年賃上げにおいて、貴分会には実施時期を1カ月遅らせたこと 6. 昭和44年5月9日X2に退寮通告を行なったこと 7. 昭和44年1月24日X2に対し戒告処分を行なったこと 8. 昭和44年5月13日X2およびX4に対し譴責処分および減給処分に付したこと 9. 昭和44夏季一時金において、分会員に対して不公正な考課査定をしたこと 以上大阪府地方労働委員会の命令により掲示します。 6. 申立人のその他の申立ては棄却する。 |
判定の要旨 |
1201 支払い遅延・給付差別
2900 非組合員の優遇
会社が、分会に対し44年賃上げの実施時期を合理的理由もなく別組合より1カ月も遅らせて実施したことは、分会員に対する不利益取扱いであり、不当労働行為であると断ぜざるを得ない。
1202 考課査定による差別
2900 非組合員の優遇
分会員13名に対する44年夏期一時金の考課査定が全従業員の平均得点を下回っていることは、査定について合理的理由が認められないことからみて、会社が分会員なるが故に不利益に取扱ったものといわざるを得ない。
1400 制裁処分
会社が、組合員X2に対し寮規則を守らなかったことを問責し、直ちに退寮処分に付したことは酷に過ぎ、会社の意図は組合活動の故に行なわれたものというべく不当労働行為に該当する。
1400 制裁処分
会社が、分会員X2が会社の指示に従わず、勝手に会社所有のロッカーに分会活動のビラを貼りつけたことを理由に戒告処分に付したことは、酷に〓するものというべく、分会に対するいやがらせとみなし得るのであって不当労働行為に該当する。
1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社が、分会員X4およびX2の2名を、加工不良品を出したという理由で、8時間にわたり問責し、同人らを減給処分に付したことは、同人らの分会活動を嫌悪してなされたものと認められ不当労働行為といわざるを得ない。
1203 その他給与決定上の取扱い
1600 休暇の取扱い
会社が、分会員の地労委審問出席およびメーデー参加のための年休請求に対し、組合活動を目的とするものであるとして認めず、欠勤扱いとしたことは不当労働行為に該当する。
1200 降格・不昇格
会社が、分会結成の中心人物である分会長の職級格付について、他分会員に比較しとくに低くした真の理由は、同人の組合活動を嫌悪し、報復的措置として行ったものと解するのが相当であり不当労働行為といわざるを得ない。
2500 別組合の結成・援助
会社が分会を激しく誹謗している中で、別組合結成の賛同署名が会社の支持を得て行われていることは、分会破壊を意図した不当労働行為であるといわざるを得ない。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
分会公然化後会社は、会社職制が分会員らと同郷であることを利用し、同人らをして分会脱退を勧奨せしめたものと推認される一連の家庭工作を行わせたことは、不当労働行為であると認めざるを得ない。
2700 威嚇・暴力行為
3100 スパイ
分会の存在を察知した会社側が、寮生の善導のためと称し分会三役を尾行、連行し威嚇的に動静を探った行為は、分会の存在を明らかにさせるため計画的に行ったものと推認され不当労働行為に該当する。
2612 従業員の親族・保証人・友人の言動
3420 従業員の親族・保証人・友人の言動
分会員X2の実兄が分会脱退を勧奨したのは、会社の課長に促がされたものとみられ、会社の行なった不当労働行為に該当する。
4302 組合員資格喪失者(含組合脱退・死亡)
4613 P.Nのみを命じ、他の救済の必要性を認めなかった例
分会は、分会員X2の退寮処分及び戒告処分を取り消すよう求めているが、同人は現在すでに退社しているので、当該救済としては陳謝文の掲示を命ずる。
5000 具体的請求の欠除
分会は、考課査定方法の是正を、分会公然化前に行われた考課査定方法に基づくよう求めているが、分会が会社に対し査定方法に関し具体的要求を示してない以上、新考課査定方法を認めざるを得ず、この申立てを採用することはできない。
4415 賃金是正を命じた例
分会員12名に対し行われた考課得点に、当該分会員の属する職級における分会員と非分会員の各考課平均得点の差の点数を加えることをもって救済の実を果し得ると判断する。
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業種・規模 |
精密機械器具製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集46集234頁 |
評釈等情報 |
 
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