労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  富士急行運輸 
事件番号  静岡地労委昭和45年(不)第10号 
申立人  全国自動車運輸労働組合富士急行運輸支部 
被申立人  富士急行運輸 株式会社 
命令年月日  昭和47年 2月 9日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が最大の取引先からの要請により、分会員に対し全自運脱退を強要もしくは慫慂し、これを拒否した分会員2名を不利益配転した事件で、両名の旧職場への復帰、支配介入と不利益をしない旨の謝罪文の手交を命じた。 
命令主文  1. 被申立人はX1、X2の両名をその所属する浜北営業所に復帰させ従来どおりの業務に就労させなければならない。
2. 被申立人は本命令書交付の日から5日以内に下記の陳謝文を申立人組合へ手交しなければならない。
            記
                     年  月  日
全国自動車運輸労働組合富士急行運輸支部
 執行委員長 X3 殿
             富士急行運輸株式会社
              代表取締役社長 Y1
          陳 謝 文
 当社が貴組合浜北分会員に対し全自運脱退を強要もしくは勧奨したことは組合に対する支配介入の不当労働行為であったことを認め、ここに陳謝するとともに今後このような行為を繰り返さないことを誓約致します。また貴組合員であることの故をもって不利益な取扱いも致しません。
3. 申立人その他の申立はこれを棄却する。 
判定の要旨  1300 転勤・配転
2621 個別的示唆・説得・非難等
配転が、取引先の要請による組合脱退強要を拒否したことが原因であっても不当労働行為に該当する。

1201 支払い遅延・給付差別
1300 転勤・配転
配転により、賃金減額の不利益を受けているから、これを補償すべきである旨主張するが、申立人の月次の比較対照の方法が適当でなく、月次を同じくして比較対照すれば、却って賃金増額を得たことがうかがわれるところから認容することはできない。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
会社職制が組合からの脱退を強要または慫慂したことが、取引先の強い要請にもとづくものであったとしても、会社がこれに協力し、その要請にこたえたものである以上、不当労働行為の成立を阻却するものとはいえない。

1300 転勤・配転
3900 「不利益の範囲」
労働組合法第7条1号にいう不利益取扱いとは、単に経済的なものに対してだけではなく、精神的なものにも生じうることは明かであり、配転先は従前の勤務に比べ、労働過重や休養の機会が少いことなどが認められるので、不利益取扱いでないとはいえない。

4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
5008 その他
不作為の仮処分決定は、債務者の任意の履行を求めるに過ぎないものであるのに反し、地労委の発する救済命令は、不当労働行為が行なわれなかったと同じ状態に労使関係を回復せしめるものであるから、仮処分とは別途に救済を求めることは毫も妨げないものと解する。

4411 配転・転勤・出勤停止・下車勤等の場合
5008 その他
被配転者を原職に戻すことが、会社企業の経営に重大な支障をきたすおそれがあるとしても、団結権侵害に対する原状回復は、労組法上労働者に認められた権利の範囲であり、これに照応する使用者に課せられた回復義務の履行として法の当然要請するところであると解すべきである。

5005 損害賠償の請求
5008 その他
申立人組合員の脱退によって蒙った損害補償および本件申立に要した費用一切の支払いを求めているが、不当労働行為制度の趣旨からみて、この請求は救済命令の範囲を逸脱したものというべきである。

業種・規模  鉄道業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集46集146頁 
評釈等情報   

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