労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  文英堂 
事件番号  京都地労委昭和43年(不)第6号 
申立人  京都印刷出版産業労働組合 
被申立人  株式会社 文英堂 
命令年月日  昭和47年 1月20日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が分会公然化の動きを察知、職制を利用しての別組合の結成、公然化大会参加者への監視、統一行動参加の声明文作成妨害・撤去、分会幹部中傷、分会員の学習会参加妨害、夏期一時金低額支給、昇進上の差別、分会中心人物の降格などを行なった事件で、別組合の結成と監視などの禁止、ポスト・ノーティスを命じ、他は棄却した。 
命令主文  1. 被申立人は、会社職制をして御用組合をつくらせたり、分会公然化大会への参加者を途中で監視などさせたり、 10.21統一行動に関する声明文の作成および貼付を制止したりして、組合の運営に支配介入してはならない。
2. 被申立人は、次の文書を申立人に提出するとともに、同内容の文章を縦1メートル、横 1.5メートルの大きさの模造紙に墨書し、被申立人本社内の従業員が出退社の際見易い場所に10日間掲示しなければならない。
            記
 会社は、会社職制をして御用組合をつくらせたり、また貴組合文英堂分会公然化大会の参加者を途中で監視などさせたりしたことならびに昭和42年の 10.21統一行動に関する声明文作成および貼付を制止したりしたことは貴組合の運営に対する支配介入であったことを認め、今後かかる行為はいたしません。
 以上、京都府地方労働委員会の命令により誓約します。
   昭和 年 月 日
 京都印刷出版産業労働組合
   執行委員長 X1 殿
            株式会社 文英堂
               代表取締役 Y1
3. 申立人のその余の請求を棄却する。 
判定の要旨  1200 降格・不昇格
分会長に対する課長昇格、その後の係長への降格は、同人の組合活動を封じるために昇格させたが、組合を脱退しないため降格したともみうるが、課長職が使用者の利益代表者にあたると認められる以上、分会長を降格させたことを労組法上の不利益扱いとみることは困難である。

2500 別組合の結成・援助
2620 反組合的言動
本社労組結成までの会社側の言動、職制を主体とする構成からみて本社労組は、会社が支社労組対策とあわせて本社での分会公然化に対処するため、それを妨害せんと、次課長らの会社職制と意を通じ、これら会社職制をしてとらしめた措置であり、御用組合と推認するにかたくない。

2611 その他の従業員の言動
2625 非組合員化の言動
3411 その他の従業員の言動
分会公然化大会参加者に対する次長らの行為は、本社労組員の自主的行動とは考えられず、分会員を御用組合に吸収することが奏功しなかったため、会社の意を受け、分会の活動をけん制する目的でなした支配介入行為であると認めざるを得ない。

1201 支払い遅延・給付差別
2902 労組法7条2号(団交拒否)と競合
会社は分会より早く昭和42年度の夏季、年末一時金を御用組合と妥結し、分会が闘争中に分会員以外の者に支給したが、支給時期は例年とほぼ同様であり、差別扱いの意図があったとは認めがたい。

0120 政治(党)活動
3020 組合活動への制約
組合が、組合活動の一環として一定範囲の政治活動を行なうことは妨げなく、企業内の政治活動を就業規則で規制していても、職場秩序紊乱や業務運営に支障がある場合に限定されるべきであり、共同声明文の内容からみて、その作成や貼付の制止、撤去は施設管理権の域をこえ組合運営への介入である。

3020 組合活動への制約
会社施設を社用以外の目的で使用する場合は、原則的には会社の許可を受けるべきであるから、組合といえども無断で使用すれば、これに対して会社が注意を与えるのは当然で、支配介入とはいえない。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
3020 組合活動への制約
会社構内で無断で集会を行なったことに対して、会社が集会届けの提出を要求し、かつ、無許可で外部労組員が構内に立入ることを禁止する旨通告したことは、施設管理上の正当な行為とみるべく、支配介入とはいえない。

4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
声明文の撤去は不当労働行為と認定されるが、分会の抗議に対し、会社が既に遺憾の意を表わし、今後組合と協議した上処理したい旨あるいは今後このような行為をしない旨確約しているので、原状回復の目的を達したというべきであり、救済の利益は消滅している。

業種・規模  卸売業、小売業、飲食店 
掲載文献  不当労働行為事件命令集46集58頁 
評釈等情報  労働判例 1972. 5. 1  146号 77頁 

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