労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  芦原運送 
事件番号  大阪地労委昭和45年(不)第90号 
大阪地労委昭和46年(不)第6号 
申立人  全国自動車運輸労働組合大阪合同支部 
被申立人  芦原運送 株式会社 
命令年月日  昭和46年12月25日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  分会長に対する下車勤、退職予告および懲戒解雇と退寮要求、分会執行委員3名に対する懲戒解雇と退寮供給、年末一時金支給についての組合間差別、解雇問題等についての団交拒否、協定書への署名拒否等をめぐる事件で、下車勤、退職予告、懲戒解雇の取消し、原職復帰、バックペイ、従業員あるいは他労組員と同一基準による年末一時金の支給、誠意ある団交の応諾、分会員各個人に待遇に関する誓約書の提出強要の禁止、ポスト・ノーティス等を命じ、協定書署名拒否については棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、X1に対して、次の措置を含め、昭和45年12月4日からの下車勤措置、昭和46年1月11日づけ退職の予告、ならびに同月15日づけの懲戒解雇が、それぞれされなかったと同様の状態に回復させなければならない。
(1) 原職に復帰させること
(2) 下車勤措置の日から、原職復帰の日までの間に、同人が受けるはずであった賃金相当額を支払うこと
2 被申立人は、X2、X3およびX4に対して、次の措置を含め、昭和46年2月20日づけ懲戒解雇がなされなかったと同様の状態に回復させなければならない。
(1) 原職に復帰させること
(2) 懲戒解雇の翌日から原職復帰の日までの間に、同人らが受けるはずであった賃金相当額を支払うこと
3 被申立人は、X1、X2、X3およびX4に対して、従前どおり寮の居住および使用を認め、また食堂を利用させなければならない。
4 被申立人はX1他11名に対して、昭和45年度年末一時金(従業員1人平均100,00円)の一部(80%分)として、すでに支払った従業員に対すると同一の基準により支払わなければならない。
 また被申立人は、上記12名ならびにX他6名、計19名に対して、昭和45年度年末一時金の残額分(20%分)として、芦原運送株式会社単純労働組合の組合員らに支払ったのと同一の基準により支払わなければならない。
5 被申立人は、昭和45年11月2日に申立人らが提出した要求事項、本件懲戒解雇問題ならびに昭和46年3月1日に芦原運送分会が提出した要求事項について、申立人または芦原運送分会と誠意をもって団体交渉を行ない、かつ、交渉権限をもつ上部団体役員または懲戒解雇された芦原運送分会役員等が団体交渉に出席することを拒否してはならない。
6 被申立人は、申立人ならびに芦原運送分会の意に反して、同分会員の労働条件その他の待遇に関し、同分会員各人に承諾書、協定書などの提出を求めてはならない。
7 被申立人は、縦1メートル、横2メートルの木板に下記のとおり明瞭に記載して、本社ならびに大分、水島、名古屋の各営業所に正面入口付近の従業員のみやすい場所に10日間掲示しなければならない。
                記
                     年  月  日
 全国自動車運輸労働組合大阪合同支部
   執行委員長 X6 殿
             芦原運送株式会社
              代表取締役  Y1
 当社は、貴組合芦原運送分会の役員4名を懲戒解雇したり、同分会員に昭和45年度年末一時金の全額または一部を支給しなかったり、貴組合また芦原運送分会との団体交渉に誠意をもって応じなかったり、あるいは貴組合および芦原運送分会の運営に支配介入したりしました。
 これらの行為は、労働組合法第7条第1号、第2号、第3号に該当する不当労働行為であることを認め、ここに陳謝するとともに、今後このような行為を行なわないことを誓約します。
 以上、大阪府地方労働委員会の命令によって掲示します。
8 申立人のその他の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  0500 勤務成績不良
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
分会長に対する勤務成績不良等の懲戒解雇理由は、本件審査等に対して解雇を正当化するために収集されたものであり、しかも、事実に反するもの、ないしはすでに措置ずみのものばかりであること等からみて、本件解雇およびそれに伴う退寮要求は、7条1・3号に該当する不当労働行為である。

0700 職場規律違反
経営会議を立聞きしようとして妨害し、同会議の開催を不能ならしめたとの会社主張は事実に反するもので、これを理由に、分会長に対して退職を予告したことは、同人の正当な組合活動を理由とする不利益扱いである。

0900 不正行為
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
分会執行委員らに対する会社経費の不当支出等の懲戒解雇理由は、本件審査等に際して解雇を正当化するために収集されたものであり、しかも、同人らの責任によるものとは思われないもの、ないしは問題とするに足りないものばかりであること等からみて、本件解雇は、7条1・3号に該当する不当労働行為である。

1201 支払い遅延・給付差別
平和協定に署名することを分会員に強要したことが支配介入と認められるかぎり、署名することを年末一時金支給の条件とし、これを拒否した分会員に対して、一時金を支給しなかったことは、合理的な理由がなく、不利益扱いと認められる。

1201 支払い遅延・給付差別
資金繰り困難を理由に平和協定に署名した分会員に対しても、年末一時金の20%分を支給しなかったことについても、合理的な理由を見出し難く、不利益扱いと認められる。

0412 順法闘争・残業拒否
1302 就業上の差別
1602 精神・生活上の不利益
会社が、新たに請負った仕事に従事させるにあたり、分会長に早出拒否等を行なわないことを求めた行為は、分会と自主的活動を阻害するもので、これを拒否したことを理由に同人を下車勤務としたことは、精神的にはもちろん、職務上、経済上の不利益扱いである。

2215 上部団体参加否認
2244 特定条件の固執
2251 一方的決定・実施
分会結成以来行なわれた団交のうち、殆んどの場合は、社長が交渉議題と無関係な経営計画について一方的な説明を行なったり、組合側交渉委員数の不足を理由に協議を拒否したり、上部団体役員等の出席を嫌悪したりしたもので、誠意ある団交とは認められず、団交拒否といわざるを得ない。

2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
3700 使用者の認識・嫌悪
親睦会を育成強化しようとした社長の発言、上部団体加盟等の組合組織形態についての選択および署名を求めた行為、会社役員等の分会長に対する非難中傷、あるいは朝礼における分会長や分会をひぼうした文書の読み上げと配布等の諸行為は、いずれも支配介入行為に該当する。

2500 別組合の結成・援助
上部団体に属さない組合を希望するとの社長の言動とか、新労が結成以来上部団体に加盟せず、実質的な組合活動を行なわずに、会社の意のままに動いていること等からみて、新労が自主的に結成されたものではなく会社の指導によって結成されたものを認められる。

1604 その他
3102 争議対抗手段
会社提案の平和協定の内容は、分会が行なった正当な争議行為を非難するばかりでなく、労働者のもつ労働基本権を不当に制限するもので、このような協定について分会員を含む従業員の署名を求めること自体支配介入行為である。

2252 署名・調印拒否
組合事務所の貸与など一応の合意に達した事項に関する協定書への調印を社長が拒否したとしても、協定書の内容について労使の間に完全な合意が成立しているものとは認められないので、本件署名拒否は支配介入行為とはいえない。

業種・規模  道路貨物運送業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集45集580頁 
評釈等情報   

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