労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  クレマツ 
事件番号  茨城地労委昭和45年(不)第3号 
茨城地労委昭和46年(不)第1号 
申立人  呉飼糧労働組合 
被申立人  クレマツ 株式会社 
命令年月日  昭和46年10月21日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社が申立組合員に対して、定昇一時金、慰安旅行等で差別扱いにし、また業務命令に反したとして組合員を減給処分にしたうえ、さらに事業所閉鎖に伴い解雇した事件で、定昇一時金等の不利益是正、減給取消し、解雇取消し、バックペイおよび陳謝文の掲示を命じ、慰安旅行については棄却した。 
命令主文  1 被申立人会社は、昭和45年12月25日付で行なった、申立人組合の組合員(X1他11名)の解雇を取消し、組合員らが受けるはずであった賃金相当額(定昇、一時金を含む)を支払わなければならない。
2 被申立人会社は、解雇取消後、上記の組合員らの勤務場所および退職希望者についてはその条件等に関し、誠意をもって団体交渉をしなければならない。
3 被申立人会社は、何らかの形で関東試験場を再開する場合においては、上記の組合員らを関東試験場で就業させなければならない。
4 被申立人会社は、申立人組合員の組合員X2、X3、X4についての昭和44年年末一時金の不当差別を是正し、最低1.8 ケ月を限度とし、再評価しなくてはならない。
5 被申立人会社は、昭和45年1月28日の減給制裁を取消さなければならない。
6 被申立人会社は、昭和45年1月4日付で行った役職制度、役付手当の廃止を撤回し、45年1月以降各組合員に支給すべき役付手当を支払わなければならない。
7 被申立人会社は、昭和45年定昇について、他の事業所と同様の基準でこれを行なわなければならない。
8 被申立人会社は、昭和45年夏季一時金について、他の事業場と同様の基準でこれを行なわなければならない。
9 被申立人会社は、下記の陳謝文をこの命令の日から7日間関東試験場玄関前ならびに各事業所の入口に掲示しなくてはならない。
 なお、掲示文は縦1m、横1.5 m以上の大きさにしなければならない。
                記
              陳 謝 文
 会社は、貴組合の組合員に対し、昭和44年年末一時金、役付手当の廃止、減給制裁、昭和45年定昇、昭和45年夏季一時金支給などについて差別し、また、関東試験場閉鎖および閉鎖に伴って組合員を解雇するなど、労働組合法第7条第1号、第3号に該当する行為を行ったことを認め、これらについて陳謝の意を表します。
    昭和46年 月 日
            クレマツ株式会社
               代表取締役 Y1
    呉飼糧労働組合殿
10 申立人のその余の申立ては棄却する。 
判定の要旨  1202 考課査定による差別
3601 処分の程度
執行委員の一時金査定について、事業所内で焚火をしたことなどを理由に低くすることは、申立人は単に暖をとっただけであり、それだけで、1.8 ケ月も減額するのはあまりにいきすぎであり、執行委員の過去の過失をことさらとり出したものであって不当労働行為にあたる。

1201 支払い遅延・給付差別
3700 使用者の認識・嫌悪
赤字を理由として、定昇をゼロ、一時金を不支給したことは過去には赤字でも一時金は支給されていたこと、また、従業員が就労している状態で定昇のゼロ、一時金が不支給とういうのは不当であり、これまでの事情よりみれば組合嫌悪のあらわれとみるべきで、不当労働行為である。

1400 制裁処分
3501 労働者の行為と不利益取扱の時期との関連
3700 使用者の認識・嫌悪
強行就労を理由とする減給処分は、会社の公休指定が、その理由において不十分であり、また従来の慣行に反しており、また日給月給制移行後は公休により給与が減額になることなどの事情があり、むしろいたずらにことをかまえたとみるべきであり、不当なものである。

1201 支払い遅延・給付差別
3700 使用者の認識・嫌悪
役付制度の廃止は、その理由に乏しいこと、また、組合員の大多数が役付者であることなどよりみて、組合に対する嫌悪の場にかられたものとみるべく、したがって、不当労働行為である。

1601 福利厚生上の差別
慰安旅行に試験場から約半数しか参加させなかったのは、養鶏という業務の性質上やむをえないものであり、これをもって直ちに不当労働行為であるとはいえない。

1800 会社解散・事業閉鎖
本件事業所一部閉鎖は、会社においても、その決定的動機が組合の結成と組合の諸要求にあったことを自認しており、したがって不当労働行為にあたる。

4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
一時金カットの処分は退職後においても被救済利益を欠くものではない。

4402 企業閉鎖・偽装解散と救済
解雇の救済方法として、会社に再開の意思のないこと、組合も強く望んでいないことより、再開したら就業させることと命ずるのが妥当である。

4420 団交を命じた例
一部事業所の閉鎖が不当労働行為と認められる以上、これに伴う解雇は取消すべきであるが、地元出身者などについては、その配転先等について十分配慮することが必要であるから、それらのことについては誠意をもって団交で決すべきである。

5008 その他
事業所の閉鎖が組合嫌悪を主たる動機としたものであっても、会社が事業継続の意思を失っている現在、事業再開を命ずることは妥当でない。

業種・規模  飲料・たばこ・飼料製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集45集240頁 
評釈等情報  労働判例 1972.1.1  138号 73頁 

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