労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大倉建設 
事件番号  大阪地労委昭和45年(不)第53号 
大阪地労委昭和45年(不)第88号 
申立人  総評全国一般大阪地方連合会大阪一般労働組合 
申立人  総評全国一般大阪地方連合会大倉建設労働組合 
被申立人  大倉建設 株式会社 
命令年月日  昭和46年 8月17日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  労基法違反是正の意見具申をした合同労組員を懲戒解雇したほか、組合結成集会の妨害、第二組合の結成および組合事務所の貸与、年末一時金支給の差別扱い等をした事件で原職復帰、バックペイ、差額支払い、ポストノーティス等を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、X1に対し、次の措置を含め、昭和45年6月25日以降、同人が解雇されなかったと同様の状態に回復させなければならない。
(1) 原職に復帰させること。
(2) 解雇の日から原職復帰の日までの間、同人が受けるはずであった賃金相当額を支払うこと。
2 被申立人は、昭和45年12月28日現在における申立人大倉建設労働組合の組合員全員に対して、一律 6,000円を支給しなければならない。
3 被申立人は、申立人大倉建設労働組合に対し、大倉労働組合と同様に、組合事務所を貸与しなければならない。
4 被申立人は、申立人大倉建設労働組合の就業時間内の組合活動については、大倉労働組合と差別してはならない。
5 被申立人は、縦3メートル・横2メートルの白色木板に、下記のとおり墨書して、被申立人会社本社の玄関付近の従業員の見やすい場所に、1週間掲示しなければならない。
               記
                       年 月 日
   総評全国一般大阪地方連合会
   大阪一般労働組合
     委員長 X2 殿
   総評全国一般大阪地方連合会
   大倉建設労働組合
     委員長 X1 殿
            大倉建設株式会社
               代表取締役 Y1
 当社は、下記の行為を行ないましたが、これらの行為は、労働組合法第7条第1号および第3号に該当する不当労働行為であったことを認め、ここに陳謝するとともに、今後このような行為を繰返さないことを誓約します。
               記
1 昭和45年6月29日、X1氏を解雇したこと。
1 扇町公園で開催された集会への参加とX1氏との交際をめぐって、X3氏に対し、解雇を申し渡す等、会社従業員に威圧を加え、これを妨害、禁止したこと。
1 大倉労働組合に対してのみ、組合事務所を貸与し、就業時間内の組合活動を許可していること。
1 大倉労働組合との間で、ユニオン・ショップ協定と唯一交渉団体約款を締結し、また、係長に大倉労働組合への加入工作を行なわせ、貴大倉建設労働組合の組織破壊を策したこと。
1 朝日新聞記事に関する責任追求の名のもとに、また、組合活動を理由に、貴大倉建設労働組合の組合員に対し、退社を求める等したこと。
1 貴大倉建設労働組合の組合員を、部長直属扱い等として職務上差別したこと。
1 昭和45年12月28日、大倉労働組合の組合員に対してのみ、一律 6,000円の金員を支給したこと。
 以上大阪府地方労働委員会の命令により掲示します。
6 申立人のその他の申立ては、これを棄却する。 
判定の要旨  0121 個人的活動
0208 暴力・不穏当な言動を伴った組合活動
社員表彰式におけるX1の発言および社長との話し合いは会社秩序を乱したものでなく、脱税問題への言及については、その非礼を謝しているので、同人の行為は労基法遵順守を求める全く正当なものである。

0110 結成行為の範囲とされた例
0700 職場規律違反
社員表彰式における労基法違反事項是正についてのX1の発言が、会社の秩序を乱したものであるとしてなされた解雇は同人の発言等が正当なものであるにかかわらず、組合結成に直結するものとして、その阻止を意図して行われた不当労働行為である。

1201 支払い遅延・給付差別
2901 組合無視
年末一時金について別組合と妥結した6,000 円未満の額での妥結を固執する会社の態度は何ら合理的理由なく、組合員に対してのみそれを支給しない会社の行為は、組合の弱体化を企図し、組合員の故に不利益に取扱ったものである。

1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社が、1部2課制を1部3課制に改め、新設の第3課に組合員のみを配属したことは、組合員を他の従業員と隔離して職務上差別し、その影響力を減少せしめて組合員に精神上の打撃を与え、組合の弱体化を意図して行った不当労働行為である。

2610 職制上の地位にある者の言動
2625 非組合員化の言動
3410 職制上の地位にある者の言動
労働委員会での会長の証言等に関する新聞記事の責任を追求して個々の組合員になされた会長らの言動は、職務上差別するとして組合脱退、退社を迫ったもので、組合組織の破壊を意図してなされた不当労働行為である。

2700 威嚇・暴力行為
組合結成等を目的とする活動に参加した従業員に対し、解雇する等と述べて威圧を加え、その活動を妨害した会社の言動は不当労働行為である。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
2901 組合無視
新労には組合事務所の貸与、就業時間内の活動を認めながら、組合には組合事務所の貸与要求に応ぜず、就業時間内の組合活動を一切禁止した会社の取扱いは、組合の組織破壊を意図した不当労働行為である。

3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
会社が、従業員に時間外労働を行なわせたことに労基法違反が認められるにしても、それが組合活動を妨害する目的でなされ、活動に支障を生じたとの疎明がなく、不当労働行為とすることはできない。

3106 その他の行為
会社が、被解雇者との交際を禁じたことは、会社営業上の機密漏洩を防止するためのものと認められず、同人と従業員との接触をしゃ断し、組合結成を阻止する意図をもってなされた不当労働行為である。

2500 別組合の結成・援助
会社と新労との間に締結されたユ・シ協定は、新労の活動の成果というよりは、旧結合の存在を否定する会社が、旧組合の組織破壊を企図したもので、団結権保障の本旨に反し、同協定中の唯一交渉団体約款も事実上の団交に支障が生じていなくても組合の組織活動等に不利な状況を生み出したことはいなめず、この協定を締結した会社の行為は、旧組合の組織破壊を意図してなした不当労働行為である。

3410 職制上の地位にある者の言動
3700 使用者の認識・嫌悪
新労への加入用紙を配布した係長の行為は、朝礼で課長の指示により残った課員に対して、課長退室直後なされていること、当時会社が組合の組織破壊と新労の育成強化を策していることから、係長の行為は、組合を嫌悪する会社の指示を受けて行ったものと推認される。

3700 使用者の認識・嫌悪
会長や社長の発言および従業員約30名がX1に同調して同人と行動をともにした事実から、会社が、従業員間に組合結成の動向があることを察知していたことが十分認められ同人に対する解雇通告に至る経緯よりして、会長が組合および総評を嫌悪する余り、本件解雇を社長に命じたものである。

業種・規模  不動産業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集45集119頁 
評釈等情報  労働判例 1971.11.1   134号 65頁 

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