概要情報
事件名 |
永井鉄工所 |
事件番号 |
大阪地労委昭和43年(不)第49号
大阪地労委昭和44年(不)第57号
大阪地労委昭和45年(不)第13号
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申立人 |
全大阪金属産業労働組合 |
被申立人 |
永和商事 株式会社 |
被申立人 |
株式会社 永井鉄工所 |
命令年月日 |
昭和46年 4月28日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
分会公然化以来、分会員にのみ残業を停止し、一時金支給にあたり、分会員を低く査定し、さらに分会員の郷里へいやがらせの手紙を出し、父兄に圧力をかけ、組合の反対を無視して就業規則を改正し、電話、面会者の取次ぎ、分会あて郵便物、電報等の社内での手渡し、組合文書の社内掲示などを一切拒否し、あるいは団交開催日時を分会に通知しないことなどをめぐる事件で、残業停止措置のとりやめ、残業手当相当額の支払い、非組合員の平均増加率に見合った一時金の支払い、ポストノーティスを命じ、他は棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人らは、申立人組合の組合員X1、同X2および同X3(以下「X1ら3名」という)に対する残業停止の措置をとりやめ、他の従業員と同様に残業を行なわせるとともに、X1ら3名に対して、昭和41年12月30日から45年3月末日までの間の残業手当相当額として、下記の金員を支払わなければならない。 記 (1)X1に対して、1ヶ月につき残業時間 43.06時間に相当する金員 (2)X2に対して、1ヶ月につき残業時間 40.06時間に相当する金員 (3)X3に対して、1ヶ月につき残業時間 21.50時間に相当する金員 2 被申立人らは、X1ら3名に対して、下表の金員を支払わなければならない。 (省 略) 3 被申立人らは、縦1メートル、横2メートルの白紙または白色木板に下記のとおり墨書して、更衣室内の従業員の見やすい場所に1週間掲示しなければならない。 記 年 月 日 全大阪金属産業労働組合 執行委員長 X4 殿 全大阪金属産業労働組合 永井鉄工分会 分会長 X2 殿 株式会社永井鉄工所 代表取締役 Y1 永和商事株式会社 代表取締役 Y2 当社は、下記の行為を行ないましたが、これらの行為は、労働組合法第7条第1号および第3号に該当する不当労働行為であったことを認め、ここに陳謝するとともに、今後このような行為を繰返さないことを誓約します。 記 1 昭和41年12月30日以降、貴分会員各位に残業を停止したこと 2 昭和42年年末一時金以降44年年末一時金までの間の各一時金の支給にあたり貴分会員X1氏、同X2氏および同X3氏に対して、不利益な取扱いをしたこと 3 貴分会員に対する電話および面会の取次ぎを一切拒否したこと 4 貴分会あての郵便物および電報を社内で手渡すことを一切拒否したこと 5 貴組合が求めた組合文書の掲示を一切拒否したこと 6 団体交渉の開催日時を貴分会に通知せず、貴分会から問合わせがあっても答えなかったこと 以上、大阪府地方労働委員会の命令によって掲示します。 4 申立人の支配介入に関するその他の申立ては、これを却下する。 |
判定の要旨 |
1201 支払い遅延・給付差別
1202 考課査定による差別
会社が主張する一時金支給基準は、いずれも実際に行なわれたものとは認め難く、分会員に対する各一時金の不利益扱いを正当化するために、本件審査の過程において案出されたものと判断され、しかも分会員が非組合員に比べて勤務成績が不良であるとも認め難く、したがって正当な査定が行なわれたれとは認め難い。
1302 就業上の差別
分会員にのみ残業を停止した理由として会社は、組合が残業拒否闘争を行なっていたというが、これは本件審査において突如もちだされたものであることまた分会員の残業拒否が常態であるともいうがこれも事実に反し、むしろ納期が迫ったときは、従業員の積極的な協力によって残業が行なわれ、なんら業務に支障がなかったこと等からみて、会社の主張は認められない。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
従来、休憩時間中の電話および面会は必ず取次ぎ、就業時間中の場合でも弾力的に取扱ってきたにもかかわらず、分会公然化後間もなく合理的な理由もなく一切拒否していることは、電話および面会の多くが組合関係者であること等からみて、組合活動を規制するためになした支配介入行為である。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
分会あての郵便物等を社内で手渡すことを拒否した会社の措置は、職場内で手渡せば手間も経費もはぶけること、組合が社内における手渡を強く望んでいること、合理的な拒否理由が認められないことなどから判断して、組合弱体化を企図してなした支配介入行為である。
3020 組合活動への制約
組合文書の更衣室内掲示を認めても、会社業務に支障をきたしたり、会社施設が損われるとは考えられず、一方組合活動上、組合文書の会社施設内掲示が重要な意義をもつこと等から判断すると、会社施設内における組合文書の掲示を一切認めないとの会社の措置は支配介入行為である。
2901 組合無視
会社が分会に団交開催日時を通知せず、また分会の問合せにも答えないのは、組合の要求書等が本部・支部・分会の三者連名であり、また会社の団交開催通知等も三者あてであること、分会員も交渉員として団交に出席していること等を総合すると、支配介入行為である。
4407 バックペイの支払い方法
残業停止による減収額の遡及支払いについては、各月の残業時間数にかなりの差異がみられるから、分会公然化前3ヶ月間の月平均残業時間数によって算出することがもっとも合理的と考えられる。
4407 バックペイの支払い方法
会社には明確な一時金支給基準がないので、支給基準にしたがった救済は不可能であるが、41年年末一時金以前は各従業員はほぼ同じ増額率であるので、41年年末一時金を基準とした各一時金における非組合員の平均増額率に見合った一時金を支給することがもっとも合理的であると考える。
4909 事業分離後の新企業体
N商事は、旧N鉄工の営業の実態はすべて新N鉄工に移ったのであるから、本件被申立人となりえないというが、旧N鉄工の資産の配分、雇用関係承継の実態、会社を支配する人的構成などからみて、N商事は、旧N鉄工の分身と認められ、したがってN商事の主張は認められない。
5200 除斥期間
分会員の郷里へいやがらせの手紙を出したこと、分会員の父親に圧力をかけたことおよび組合の反対を無視して就業規則を改正したこと等の事実は、いずれも救済申立のあった日までに、すでに1年を経過しており、かつ継続する行為とも認められないから救済の対象とすることはできない。
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業種・規模 |
金属製品製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集44集283頁 |
評釈等情報 |
 
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