労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  聯合紙器仙台工場 
事件番号  宮城地労委昭和44年(不)第3号 
申立人  聯合紙器労働組合仙台支部 
被申立人  聯合紙器 株式会社仙台工場 
被申立人  聯合紙器 株式会社 
命令年月日  昭和46年 3月30日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  組合員に対する雑役の指示、年休請求の不許可、執務場所の囲い、支部長の長時間拘束、スペア用員というゼッケンの強制着用、支部長の解雇、組合員に対する出勤停止処分などをめぐる事件で、不利益取扱い、支配介入の禁止、出勤停止処分の取消し、バックペイ、陳謝文の手交を命じ、支部長の解雇等については棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員に対し、スト終了後、スト突入前の職場において就労させることなく、どぶ上げなどの雑役に従事させたり、また、申立人組合員の請求する年次有給休暇を正当な理由がないのにも拘らずこれを認めず、あるいは、申立人組合員の行なったビラまきについて、就業規則違反であるとして必要以上に長時間にわたり、申立人組合員の行動の自由を拘束するなどの不利益な取扱いをすることにより申立人組合に対して支配介入を行なってはならない。
2 被申立人は、申立人組合員X1、同X2に対する昭和44年8月11日付けの出勤停止処分を取消し、同人らに対し、その出勤停止処分期間中、同人らが受けるはずであった諸給与相当額を支払わなければならない。
3 被申立人は、本命令交付の日から7日以内に、下記事項を記載した陳謝文を申立人組合に手交しなければならない。
        陳 謝 文
 会社が貴組合の組合員に対し、昭和43年夏期一時金闘争におけるスト終了後、スト突入前の職場において就労させることなく、どぶ上げなどの雑役に従事させたり、貴組合員X1に対し、段ボールあるいはベニヤ板の囲いの中で仕事をさせたり、あるいは、正当な理由がないのにも拘らず同人の請求した年次有給休暇を認めなかったり、また、貴組合員X3に対し、応援予備員として、就労させるに当り「スペア用員」というゼッケンを付けることを強制したり、あるいは、同人の行なったビラまきについて就労規則違反であるとして必要以上に長時間にわたり申立人組合員の行動の自由を拘束したりしたことは、同人らに対する不利益取扱いであるとともに貴組合に対する支配介入行為であって、労働組合法第7条第1号および第3号に該当する不当労働行為であると認め、今後このような行為を絶対に行なわないことを誓約する。
  昭和 年 月 日
             聯合紙器株式会社
               代表取締役 Y1
             聯合紙器株式会社仙台工場
               工 場 長 Y2
聯合紙器労働組合仙台支部
 支部長 X3 殿
4 申立人のその余の申立は、これを棄却する。
5 被申立人は、第1項ないし第3項の命令を履行した後、履行した旨すみやかに当委員会に報告しなければならない。 
判定の要旨  0203 職場闘争と業務妨害
0421 幹部責任
数々の不当労働行為に対する抗議行動であっても、突如として集団で押しかけ、窓から乱入して工場の正常な業務を妨害したことは、正当な組合活動の範囲を逸脱するものといわざるをえないから、それを企画・指揮・煽動した支部長を懲戒解雇しても不当労働行為と認めることはできない。

1300 転勤・配転
工場長から組合員X1が受けた転勤話の内容は、「Y駐在所の内勤としていってくれる気はないか」といった程度のものであり、またX1がそれを断った後は工場長からX1に転勤のことで一度も話がなかったことからみて、工場長の行為が組合弱体化を目的とした不利益扱いと断ずることはできない。

1302 就業上の差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
スト終了直後、組合員のみに清掃等の雑役を行わせたことについて、会社はトラブルの発生を懸念したこと等の理由をあげるが、いずれも納得できないものであるところから判断して、雑役に従事させたことは、組合員に対する不利益取扱いであり、組合に対する支配介入である。

1302 就業上の差別
2901 組合無視
工場が組合員X2に対して連続夜勤をさせたことは、工場がX2の汽車通勤という事情をとくに考慮したためであって差別扱いしたものではない。

1400 制裁処分
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合員X1,X2の抗議行動への参加態様をみると附和随行の域を出ないので、就業規則にいう懲戒処分の要件を満たさないことは明白であるから、会社が両名に対して出勤停止の懲戒処分を行なったことは、両名の従前からの組合活動を理由とする不利益取扱いであり、また組合に対する支配介入である。

1600 休暇の取扱い
工場が組合員X1の年休請求を認めないで欠勤扱いとしたことは、工場に年休の時期変更権を行使する正当な理由が存在したものと認めることが困難であることからみて、X1に対する不利益取扱いと判断すべきものである。

1302 就業上の差別
2901 組合無視
組合員X1の執務場所に囲いをしたことについて会社は機密漏洩のおそれがあるためであるというが、それならば他にも方法があることや工場がAに対してとった年休の取扱い等からみて、X1に対する不利益扱いであるとともに組合に対する支配介入である。

1602 精神・生活上の不利益
支部長を応援予備員に指名して「スペア用員」というゼッケンを着けるよう強制した行為は、「スペア用員」という言葉が労働者の人格を無視した侮辱的表現と認めるべきところから、支部長の組合活動を嫌悪し組合の壊滅を意図した不利益取扱いである。

2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
2700 威嚇・暴力行為
組合支部長らの行なった無届ビラ配布について、就業規則違反であるとして必要以上に長時間にわたり支部長の行動の自由を拘束した労務担当課長の行為は、注意ないし説得の域を越えるものであり、それまでに行なわれた会社の支配介入行為とあわせ考えれば、組合に対する支配介入行為である。

4820 単一組織の支部・分会等
会社は、独自の規約がないことや組合員数が2名となっていることをとらえて組合には当事者適格がないと主張するが、組合資格審査の結果、適格と決定しているのであるから、会社の主張には理由がない。

4905 経営補助者
会社は、工場長には当事者適格がないと主張するが、不当労働行為制度の趣旨から判断して、支配介入のような事実行為の場合は労働者と対立する関係において使用者のために行為する権限を有する機関も被申立人たりうると解せられる。

5008 その他
労働委員会が会社のした懲戒処分の軽重を論ずることは、権限外の事項に属する。

業種・規模  パルプ・紙・紙加工品製造業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集44集218頁 
評釈等情報  労働判例 1971年7月1日  126号 59頁 

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