概要情報
事件名 |
聯合紙器前橋営業所 |
事件番号 |
群馬地労委昭和44年(不)第1号
|
申立人 |
聯合紙器労働組合 |
被申立人 |
聯合紙器 株式会社 |
命令年月日 |
昭和45年10月 8日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
|
事件概要 |
会社が行なった、争議中の組合批判文書の従業員宛への送付、職制による組合脱退勧誘、および争議終結後の組合役員への配転命令、組合役員の長期出張命令・出張拒否を理由とする出勤停止処分、団交拒否、組合掲示板の撤去等をめぐる事件で、支配介入の禁止、組合役員の配転取消し・原職復帰・不利益取扱いの禁止、組合役員の出勤停止処分の取消し・バックぺイ、団交拒否の禁止、ポストノーティスを命じ、掲示板の撤去については棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人組合および組合員を批判・非難する文書を従業員およびその家庭に送付して組合活動を不当に制約し、あるいは組合員に脱退を勧誘し、または長期出張・出向を命じて組合活動の阻止を図るなど、申立人組合の運営に支配介入してはならない。 2 被申立人は、申立人組合組合員X1を製造課貼合係元番係員に、組合員X2およびX3を製造課製函係印刷係員に、それぞれ復帰させるとともに、当該組合員であることの故をもって不利益な取扱いをしてはならない。 3 被申立人は、X2に対する昭和43年12月12日から3日間および昭和44年1月10日から5日間の出勤停止処分について, その処分がなかったと同様の状態に復し、その出勤停止処分期間中同人が受けるはずであった諸給与相当額を支払わなければならない。 4 被申立人は、申立人組合および同組合前橋支部が申入れた労働条件に関する団体交渉を、正当な理由なく拒んではならない。 5 被申立人は、命令交付の日から10日以内に、つぎの声明を縦1メートル、横 1.5メートルの白色木板に縦書で墨書し、前橋営業所正門の守衛所に接した従業員の見やすい場所に、1週間掲示しなければならない。 声 明 会社は、聯合紙器労働組合に対して行なった次のような行為が、聯労ならびに同前橋支部に対する不当労働行為であったことを認める。 (1) 組合およびその組合員を批判・非難する文書を従業員およびその家庭に送付して組合活動を不当に制約し、あるいは組合員に脱退を勧誘し、または長期出張・出向を命じて組合活動の阻止を図るなど、組合の運営に支配・介入したこと。 (2) 組合員を不当に配置転換して不利益な取扱いをしたこと。 (3) 聯労および同前橋支部が申入れた労働条件に関する団体交渉を正当な理由なく拒んだこと。 よって会社は、今後かかる行為を行わないことを声明する。 昭和 年 月 日 (注 掲示する初日の年月日を記載すること) 聯合紙器株式会社代表取締役 氏 名 聯合紙器株式会社前橋営業所長 氏 名 (注 掲示する際の代表取締役の氏名 営業所長の氏名を記載すること。) 聯合紙器株式会社前橋営業所従業員各位 6 被申立人は、第2項・第3項および第5項について、その履行状況をすみやかに当委員会に報告しなければならない。 7 申立人のその余の申立ては、これを棄却する。 |
判定の要旨 |
1300 転勤・配転
1302 就業上の差別
基幹部門の作業経験が豊富な聯労支部長X1を、ストライキ終了後、元の職場に置くべきであるにもかかわらず、ロスを押さえるとの理由だけで二次的職場に配置したままでおくことは、X1を一人だけの職場に配置し、組合活動の阻止を図り、かつ、従業員が嫌う職場に長く配置することで聯労からの脱退を期待した差別扱いと言わざるを得ない。
1300 転勤・配転
1302 就業上の差別
会社が、X2を未経験の係、従来臨時工が従事していた係および雑役係に、つぎつぎと配転を命じた行為は、機械に配置された者がすべて未経験者であり、かつ、職労組合員であったということ、仕事を覚えきらないうちに配置転換したこと、X2の作業経験からみて、いずれも同人に適した係ではなく、X2の聯労組合員として孤立化させ、組合活動に対する圧迫と報復のためになされたと判断せざるを得ない。
1300 転勤・配転
1302 就業上の差別
会社が、ストライキ終了後、X1に配転を命じた職場は、従来臨時工が就労する職場であることから、X1が聯労組合員であるがための嫌がらせと、聯労からの脱退を意図して行なった差別扱いとしての配転であると判断される。
1300 転勤・配転
4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
短期間に転々と職場を換えられているが、会社の配転理由はいずれも措信しがたく、一方、配転ないし出向先をあわせ考えると、聯労組員なるが故の嫌がらせと、組合活動の阻止を意図して行なった差別扱いとしての配転であると判断されるが、原職復帰については本人の希望もなく、今後の組合活動上支障も考えられず救済の要がないものと判断する。
2110 少数組合
会社は、団交拒否の理由として、聯労の組合員が少数であることをあげているが、少数組合であっても団交権を有することは自明であって、少数組合の故をもって団交を拒否した会社の行為は、正当な理由を欠く団交拒否であり不当労働行為と言わざるを得ない。
2300 賃金・労働時間
2301 人事事項
聯労役員X2の長期出張が、通勤時間、出張期間の点から、本人にとって重要な労働条件の変更であるとともに、聯労の組合活動に重大な影響を与えるものであることから、聯労が本件に関する団交を要求するのは当然であり、これを拒否した会社の行為は不当労働行為と言わねばならない。
2610 職制上の地位にある者の言動
2620 反組合的言動
3410 職制上の地位にある者の言動
組合の争議行為中、使用者が紛争解決のため、会社の所信を表明する文書を発すること自体不法とは言えないが、本件のように、聯労の衰退が顕著にうかがえる時期に、社長名で従業員宛に、聯労執行部および紙パ労連を激しく非難する文書を連続して郵送することは、聯労組合員を窮地に追い込み、聯労からの脱退を期待し、一部執行部を孤立させるためになしたものであり、使用者の言論の自由の範囲を逸脱した支配介入行為である。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
ストライキ後、Y1課長がX2と飲食をともにしながら、思想上の話をするとともに、聯労を脱退したX3は勇気があるとの発言を行なったことは、脱退組合員の行為を賞賛することによって、聯労からの脱退を図ったものと推認され、支配介入の意図で基づく発言であると判断せざる得ない。
3020 組合活動への制約
会社がX2に命じた長期出張は、自宅通勤を認めていること、実働時間が4時間になることを認めていること、出張先での職務が作業指導でなく通常作業であること、出張先のI紙器に組合がないこと、X2が聯労支部の役員であることを綜合すると、M営業所の組合を無力化させる意図で命じたものと断ぜざるを得ない。
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
2624 組合人事への干渉
3410 職制上の地位にある者の言動
ストライキ後、課長が入院中の部下X1(聯労支部長)を見舞った際に、近く行なわれる役員選挙につき意見を聞き、新労支部長への立候補を示唆した行為は、時期、環境、両者の関係等を考えると、会社がX1を聯労から脱退させようとしたものであり、組合運営に対する支配介入行為と判断される
2621 個別的示唆・説得・非難等
3411 その他の従業員の言動
新労結成前後、またはストライキ後に、出張所長・副組長らが、職場であるいは家庭を訪問して聯労脱退を勧誘しているが、この場合の脱退勧告は、新労組員として組織拡張を図るためになしたと考えられるので、申立人主張の会社指示によるものと認めるのは困難である。
|
業種・規模 |
パルプ・紙・紙加工品製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集43集324頁 |
評釈等情報 |
労働判例 1971年1月1日 114号 61頁 
|