労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  福井新聞社 
事件番号  福井地労委昭和44年(不)第3号 
申立人  福井新聞労働組合 
被申立人  株式会社 福井新聞社 
命令年月日  昭和45年 6月27日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  賃上げの一方的実施、組合員4名を永年勤続表彰せず、また別件和解による組合員の原職復帰に際し、同職場の組合役員を他の職場に身替り配転させた事件で、労使協議による賃上げ実施、配転取消し、原職復帰を命じ、表彰については却下、他は棄却した。 
命令主文  1. 被申立人は、申立人と協議して、申立人組合員に対し、昭和44年4月度より賃上げを実施しなければならない。ただし、賃上額は本人給および能率給を合わせて組合員1人平均 7,500円を下まわってはならない。
2. 被申立人は、昭和44年2月20日付け組合員橋本喜代志の配置転換を取消し、同人を原職に復帰させなければならない。
3. 申立人の永年勤続者表彰に関する請求は却下する。
4. 申立人のその余の請求は棄却する。 
判定の要旨  1300 転勤・配転
2301 人事事項
組合員X1の配転は、和解により復帰したX2の身替り配転と認められ、配転先の職場が配転前の職場と比べ常に極めて高温であり、疲労その他身体に与える影響を考慮すると不利益な職場への配転であるにもかかわらず、これについての団交をも拒否していることからみて、不当労働行為の誹は免れない。

1202 考課査定による差別
2900 非組合員の優遇
公正に疑義のある査定方法によって実施された賃上げについて、第二組合員と比し顕著な差別が存在するにかかわらず、会社が査定結果と賃上額の関係等を機密であるとして明らかにせず、差別についての合理的な理由を十分疎明しない以上、組合員に関する賃上げは組合員なるが故の差別取扱いと判断せざるを得ない。

2251 一方的決定・実施
2902 労組法7条2号(団交拒否)と競合
3106 その他の行為
過去の組合員に対する賃上げ実施状況、組合が全額査定の適用を強く拒否し続けていること等の労使関係の実施と会社の全額査定が公正に疑義があることから、第二組合との賃上げ協定を労働法第17条を理由に組合に適用することは組合の団結権を侵害するおそれがあり適当ではない。

2240 説明・説得の程度
査定基準や評価方法を明らかにしないで行なった賃上げ方法は、団交において組合に対し労働条件を明示したものとはいえず、団交権を実質的に無視したものというべきで、査定結果や査定結果と賃上額の関係等を明らかにしない以上、その公正さを疑われてもやむを得ない。

4417 条件付命令・協議命令
組合は、賃上げについて、全額査定の廃止、一律スライドによる実施等を求めているが、賃金配分方法は、労使が団交において協議決定するのが本来のあり方であり、労働委員会が不当労働行為の救済命令によって創設すべきものではないと考えるので、実施さるべき賃上げは、組合員の平均が全従業員の平均を下回らない限度で、その配分について労使協議すべきことを命ずるのが適切である。

5008 その他
労働委員会は、賃金配分方法が不当労働行為と判断した場合適切な方法によりその是正を命ずることができるのであって、会社における全額査定配分が不当労働行為であるか否かを審査することは当委員会の権限内の事項である。

5121 挙証・採証
賃上げ等の不利益扱いの立証は、申立人がなすべきであるが、差別意思を完全に立証することは困難であるから、外形的に立証したときは、その差別に合理的な理由の存することを使用者が反証しない限り、不当労働行為意思を推定される。

1300 転勤・配転
5201 継続する行為
本件申立ては、就業規則に規定する表彰をうける日から各1年以上を経過してなされているから、救済申立権を失った後になされたものと解すべきである。なお、組合は、中労委勧告に基づく協定書調印までは不当労働行為が継続し、申立権は消滅していないと主張するが採用できない。

業種・規模  出版・印刷・同関連産業 
掲載文献  不当労働行為事件命令集42集412頁 
評釈等情報   

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