労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  都タクシー 
事件番号  京都地労委昭和42年(不)第23号-1 
申立人  全国自動車交通労働組合京都地方連合会 
申立人  都タクシー労働組合 
被申立人  都タクシー 株式会社 
命令年月日  昭和45年 5月 1日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  組合員に対し組合脱退の強要、新車割当てにおける他組合の組合員との差別、一時金の半額支給、出勤停止処分、下車勤務処分等を行ない、さらに組合の会社構内における組合ニュース、ビラの配付、および会社施設の利用の禁止、組合掲示板の撤去等を行なった事件で、支配介入、差別取扱いの禁止、処分取消し、バックペイ、陳謝文の掲示等を命じた。 
命令主文  1. 被申立人は、X1、X2、X3、X4およびX5に対する昭和41年年末一時金支給ならびに阪根勉、関口定次に対する昭和42年夏季一時金支給にさいして行なったそれぞれの半額カットを取り消し、同人らが受けるべきはずの残額分を支払わなければならない。
2. 被申立人は、X6に対する昭和42年3月16日付で行なった2日間の、X7に対する昭和42年3月14日付で行なった8日間の、それぞれの出勤停止処分を取り消し、出勤停止期間中同人らが受けるべきはずの諸給与相当額を支払わなければならない。
3. 被申立人は、X8に対する昭和41年11月24日付で行なった3日間の下車勤務処分、ならびに昭和42年12月15日付で行なった 3日間の出勤停止処分を取り消しそれぞれの期間中同人が受けるべきはずの諸給与相当額を支払わなければならない。
4. 被申立人は、申立人組合の組合員に対する新車割当ての差別を改め、従来の慣行による新車割当てを行なわなければならない。
5. 被申立人は、申立人組合の組合員に対する組合よりの脱退および都新労働組合への加入の強要、退社の勧告ならびに組合に対する中傷・誹謗などの言動を行なって組合の運営に支配介入してはならない。
6. 被申立人は、組合が配布するニュース、ビラ等の社内配布の禁止ならびに組合活動のための会社施設利用の禁止を改め、従来の慣行どおり会社の業務に支障のない限りこれらの行為を容認しなければならない。
7. 被申立人は、下記内容の文書を横 1.5メートル、縦1メートルの大きさの模造紙に墨書し、命令書交付の日から10日間、被申立人会社の京都営業所および本社正門内の従業員が見易い場所にそれぞれ掲示しなければならない。
              記
 会社および会社の職制は、貴組合の組合員に対し、組合を中傷・誹謗し、全自交の組合員なるが故に新車割当ての差別扱い、始末書提出強要、下車勤務処分、出勤停止処分などをして組合からの脱退、新労加入の強要、退社の勧告などを行なったことは、いずれも不当労働行為であったことを認め、今後かかる行為は一切行なわず、正常な労使慣行の確立に努めることを誓います。
  年  月  日
              都タクシー株式会社
               代表取締役 Y1
  都タクシー労働組合
    執行委員長 X9 殿
  全国自動車交通労働組合京都地方連合会
    執行委員長 X10 殿
8. 申立人らその余の請求を棄却する。 
判定の要旨  0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
1203 その他給与決定上の取扱い
組合員4名に対し、組合員解雇事件の公判を傍聴したことにつき、業務を中断し車両を放置したとの理由で年末一時金の半額支給を行なったことは、傍聴に要した時間が休憩時間中で1時間以内であったこと、傍聴したことが故に正常な業務が阻害された事実はないこと、その他の諸々の事実をみると、組合員なるが故の不利益取扱いと判断できる。

0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
1201 支払い遅延・給付差別
1400 制裁処分
3601 処分の程度
組合員某の道路交通法違反事件の聴聞傍聴に行った組合員2名を、就業規則違反として2日または8日の出勤停止処分に付し、加えて同人らに対し、夏季一時金の半額支給をしたことは、聴聞傍聴に行った時間が就業規則所定の休憩時間外であっても、タクシー業の性質上、休憩時間は弾力的に解さざるを得ないものであり、傍聴によって会社の業務運営に支障を来たしたともいえないことからして、不当労働行為と判断せざるを得ない。また、出勤停止処分が不当労働行為である以上、これに基づく夏季一時金半額支給措置も法7条1号の不当労働行為である。

1302 就業上の差別
会社が、組合分裂後、一方的に新労組合加入の運転手にのみ新車を割り当て、申立組合加入の運転手には旧車を与えたことは、組合分裂前には労使が確認した基本方針により車両割当てを行なってきたこと、旧車は稼動率が悪く、水揚高に減少をもたらすこと等の事情を勘案すると、不当労働行為と断ぜざるを得ない。

1400 制裁処分
組合員X4に対して、課長との長時間にわたる議論により業務妨害があったとして、下車勤務処分にしたことは、X4の発言が会社職制の理不尽ないいがかりに対する返答としてなされたものであるから、X4の言動は正当であり、したがってこの処分は不当労働行為であるといわざるを得ない。

1400 制裁処分
3601 処分の程度
業務妨害を理由に組合員X8を出勤停止処分にしたことは、業務中断を惹起したことが、職制らの業務執行に関する連絡が不十分であったためであり、かつ処分の態様が明らかに過酷なものであることからして、組合員であるが故にX8を嫌悪した不当労働行為といえる。

2500 別組合の結成・援助
2610 職制上の地位にある者の言動
2621 個別的示唆・説得・非難等
3410 職制上の地位にある者の言動
社長を陣頭に職制を動員して、組合の実力者を買収し、種々の便宜を与えて、別組合結成に奔走させ、別組合結成後は職制による組合脱退、別組合加入の強要を行なったことは、明らかに組合壊滅を図った支配介入行為である。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
2900 非組合員の優遇
3020 組合活動への制約
組合ニュース、ビラ等の配付および会社施設の利用を禁止したことは、従来の慣行を無視していること、他組合に対しては認めていること等の事実に徴すれば労組法7条3号に該当する不当労働行為といえる。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
組合員がいなくなった営業所の組合掲示板を撤去したとしても支配介入行為とは判断できない。

4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
一部組合員に対する年末一時金の半額支給は、組合との協定によったものというが、当該協定は半額支給の条件を呑まなければ他の組合員にも支給しないという会社の態度から、やむなく妥結した結果であって、かかる緊急やむ得ない事情のもとでの協定をもって被救済利益の放棄とは認められない。

4831 組織変更
会社は、申立当初の申立人である連絡協議会なる団体は解散消滅したので現申立人組合は当事者適格を有しないと主張するが、現申立人組合は当初の申立人と他の労組とに一時分裂していたものが、再び統合されたもので、規約および運動方針も従来のままを踏襲してきている経過から、両者は同一性を失なっていないことが認められ、現申立人組合に本件救済申立の資格あり、と判断できる。

業種・規模  道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集42集303頁 
評釈等情報  労働判例 1970年 7月15日  103号 27頁 

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