概要情報
事件名 |
興和タクシー |
事件番号 |
京都地労委昭和43年(不)第16号
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申立人 |
京都自動車交通労働組合 |
被申立人 |
興和タクシー 株式会社 |
命令年月日 |
昭和45年 3月17日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
企業内における「赤旗」等の配布禁止の通達を出し、組合員が古い車両を割り当てられたことが問題となった事件で、このような方法による支配介入の禁止とポストノーティスを命じたが、車両割当についてはすでに新車を割当られていることから、不利益扱いとしての救済申立ては棄却した。 |
命令主文 |
1. 被申立人は、その従業員である乗務員の担当車の担当換えに際し、申立人組合員に対し、従前のものより古い車に担当換えして申立人組合員以外の乗務員と差別するような方法で申立人組合の運営に支配介入してはならない。 2. 被申立人は、申立人組合員が勤務交替時に会社施設内で組合ニュース、ビラおよび赤旗 (日本共産党機関紙、以下同じ) を配布する事を禁止または制限し、または上記の行為をなした者を処罰すると申し向けるような方法によって申立人組合の運営に支配介入してはならない。 3. 被申立人は、下記文書を申立人に提出するとともに、同内容の文章を縦1メートル、横1.5 メートルの大きさの模造紙に墨書し、被申立人会社正門内の従業員が見やすい場所に10日間掲示しなければならない。 記 会社が昭和43年3月20日担当車の担当換えに際し、貴組合員X1、X2および当時貴組合員であったX3に対し、従前の担当車より古い車に乗せ換えて差別待遇したこと、また、昭和43年2月23日付通達で、勤務交替時に貴組合員が会社施設内で組合ニュース、ビラおよび赤旗を配布するのを禁止または制限したことはいずれも不当労働行為であったことを認め、今後かかる行為はいたしません。 以上、京都府地方労働委員会の命令により誓約します。 年 月 日 京都自動車交通労働組合 執行委員長 X4 殿 京都自動車交通労働組合興和支部 支 部 長 X1 殿 興和タクシー株式会社 代表取締役 Y1 4. 申立人のその余の請求を棄却する。 |
判定の要旨 |
0120 政治(党)活動
0200 宣伝活動
3020 組合活動への制約
「赤旗」の配布行為は常に政治活動とはいえず、仮にそれに該当する場合でも国民は政治活動の自由を有するのであって、企業内の政治活動を規制できるのは職場の秩序保持のためやむをえない限度に限られるべきであるから、慣行を無視し突如赤旗等の持込みを禁止する通達を出したことは失当といわざるをえない。
1302 就業上の差別
X1ら組合員 3名の古い車への担当換えについては、勤務成績等を考慮したというが、いずれも中位の成績であって妥当性を欠き、当時会社が組合を嫌悪していた状況が認められること等からすれば、組合員なるがための見せしめとして行なった不利益取扱いであり、法7条1号の不当労働行為である。
0200 宣伝活動
0201 就業時間中の組合活動(含職場離脱)
3020 組合活動への制約
タクシー乗務員の休けいは一せいにとることができないのが実情であるから、組合ニュース、ビラ等の配布も必然的に勤務の交替時に集中するのはやむをえないもので、その配布の手段、方法が職場規律をみだし業務の運営に支障をきたすものでない限り、使用者はこれを規制しえないものであり、その内容を査閲した上で許可を与えるという制約を加えることは、組合の運営に対する支配介入である。
4100 退職届けの提出
4301 労組法7条3号(支配介入、経費援助)の場合
X1ら3名に対する担当車の取扱いは7条1号の不当労働行為であるが、1名は既に会社を退職し、他の2名はそれぞれ既に新車の担当を命じられているのであって、個人救済の利益は消失したので、この点の救済請求は棄却する。
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業種・規模 |
道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集42集165頁 |
評釈等情報 |
労働判例 1970年 6月15日 101号 58頁 
労働判例 1970年 6月 1日 100号 28頁 
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