労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  藻岩ハイヤー 
事件番号  北海道地労委昭和44年(不)第27号 
申立人  藻岩ハイヤー労働組合 
被申立人  藻岩ハイヤー 株式会社 
命令年月日  昭和45年 2月17日 
命令区分  一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) 
重要度   
事件概要  会社は、新労に対してのみ団交権を認め、組合事務所を貸与し、多額の無事故対策資金を支給して旧労と差別扱いし、また、旧労の組合員を乗客との暴力事件を理由に解雇した事件で、団交応諾、差別扱い禁止、原職復帰及びバックペイを命じ、ポストノーティスについては棄却した。 
命令主文  1. 被申立人は、団体交渉、組合事務所の供与、無事故対策に関する助成金の支給について、申立人を藻岩ハイヤー新労働組合と差別してはならない。
2. 被申立人は、申立人の組合員X1に対する昭和44年9月25日付の解雇を取消し、原職に復帰させるとともに解雇の日から原職に復帰する日までの間に、同人が受けるはずであった諸給与一切に相当する額を支払わなければならない。
3. 申立人のその余の申立ては棄却する。 
判定の要旨  0600 暴力行為
3700 使用者の認識・嫌悪
如何なる事情があっても運転手が乗客に対し暴行することは不問に付せないが、本件懲戒解雇は、暴行が乗客に誘発されたこと、事件発生直後双方非を認め合って落着した事情等を全く考慮しておらず、他方、本人の所属する組合を会社が極度に嫌悪していたと認められる諸事実からみて、籍口解雇といわざるを得ない。

1302 就業上の差別
新労と旧労の新車の割当て状況をみると15対1とかなりの差がみられるが、タクシー業においては車両の消耗度や運転手の移動も激しく、ある時点における両組合間の割合を比較することだけによって直ちに差別的な取扱いの有無を判断することは相当でない。

1302 就業上の差別
無線車の割当について会社は、顧客へのサービスを目的とするから、勤務成績を評価して行なった結果、組合間に差異が生じたと主張しているのに、組合からは、組合所属の故等差別に関し具体的疎明がないから、不当労働行為とは認められない。

2245 引き延ばし
2246 併存団体との関係
交渉日時の回答を遅らせ、その後持たれた交渉には社長は出席せず、内容も別労との交渉についての事後報告的なものでしかなかったことは、その実質からみて団体交渉に応ずべき立場にあるものとして誠意ある態度を認めることはできず法 7条 2号に該当する不当労動行為である。

3020 組合活動への制約
仮眠室は必要に応じて組合が使用することができる状態にあることは認められるが、会社の物品を保管する場合には施錠され、また部屋はその都度口頭で許可を得て使用するということであるので、仮眠室の利用は会社の管理権の下におかれているというべく、新労に供与されている組合事務所との差別は解消していない。

2803 その他
無事故対策のための活動がそれぞれの組合の自主的な活動として行なわれている場合に、会社がその行なわれ方を問題とすることにより、一方の組合に対して助成金を与えない措置をとることはまさに一方の組合を差別することにほかならない。

4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
団交の目的たる石炭手当に関しては、すでに旧労の組合員も新労が会社と協定したのと同額の手当の支給を受けており、従って石炭手当をめぐる団交の応諾についてはもはや救済の利益はない。

4603 その他
別組合に対して与えられた無事故対策の助成金に関しては、個々の組合員についての不利益扱いが問題とされているのではなく組合に対する会社の支配介入の点が問題なのであるから、助成金の支払いを過去に遡ってまで認めるのは相当でない。

2800 各種便宜供与の廃止・拒否
組合の再三にわたる組合事務所の貸与の求めに対し、会社が場所がないとの理由で拒否する一方で、別組合に組合事務所を供与し、別組合の事務所は別組合が勝手につくったものだ、場所がないから駄目だとしてこれを拒否した一連の行為は、組合を別組合と明確に差別するもので、法 7条 3号に該当する不当労働行為である。

業種・規模  道路旅客運送業(ハイヤー、タクシー業) 
掲載文献  不当労働行為事件命令集42集94頁 
評釈等情報  労働判例 1970年 5月 1日 98号 27頁 

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