労働委員会関係裁判例データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[判例一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  東洋精機 
事件番号  大阪地裁平成26年(行ウ)第55号 
原告  北大阪合同労働組合(「組合」) 
被告  大阪府(処分行政庁・大阪府労働委員会) 
参加人  東洋精機株式会社(「会社」) 
判決年月日  平成27年3月4日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 個人加入制の労働組合である組合は、組合員であるA1が勤務する会社に対し、A1が年次有給休暇を申請する旨の組合名義のファクシミリを送信したところ、会社は、就業規則では有休を取得しようとしている本人が休暇願を提出することとなっており、所定の申請手続に従っていないとして、A1の有休取得を認めなかった。組合は、これが不当労働行為に当たるとして、救済命令の申立てをしたが、大阪府労委は同申立てを棄却する命令をした。
2 組合は、これを不服として大阪地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、組合の訴えを棄却した。  
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用(参加によって生じた費用を含む。)は原告の負担とする。  
判決の要旨  第3当裁判所の判断
2 会社の対応に正当な理由があるか
(1) 就業規則との関係
 本件各有休申請は、所定の休暇願の用紙を用いず、組合名義の文書をファクシミリで送信する方法でなされており、同文書にはA1本人の署名や押印もないことに加えて、本件9月4日分有休申請については「所定の用紙での提出が必要なら、明日提出します」と組合がA1本人の時季指定権行使を代わりに事前に通知したとも解釈できる文言が付記されているのに、A1本人は、9月4日の終業時刻後に行われた団体交渉にも出席しているにもかかわらず、その時点までに何ら休暇願を提出しなかったのである。逆に、A1本人は、就業規則の規定を知っており、いずれも本件各有休申請の直前である9月3日及び10日に所定の休暇願を使用して9月3日又は11日の各有休申請を少なくとも行おうとしていたことからすると、A1は、適式な有休の申請は所定の休暇願を提出して行わねばならないことを十分認識し、また、本件各有休申請について、それが困難であったことを認めるに足りる事情も認められない。
 本件各有休申請は、たとえA1が確定的に行使した時季指定権を組合がその使者として代わりに申請したものであったとしても、上記文書の送信を受けた会社において、それらの事実を断定するに足りるものとはいえないから、会社が就業規則の定めに従った申請と認めることはできないとして本件各有休申請を認めずに欠勤扱いとしたことは、やむをえないというべきである。
(2) 会社における運用
 組合は、A1が所定の用紙で休暇願を提出しようとしたにもかかわらず、B2常務により受理されたかどうか不明であったことから、受取を拒否できないファクシミリにより提出するという方法を取ったのであり、会社対組合の集団的労使関係の中で取り扱う問題であることを明確にするために組合を発信者としたのであり、本人が届出をすることができないやむを得ない事情があったとも主張している。
 しかし、就業規則に従ってA1本人が有休取得の申請を行った上で(もし、受取を拒否される可能性があったとすれば、組合名義の上記文書に加えて自ら作成した休暇願をファクシミリで送信することができたことは明らかである。)、本件配転や有休取得の問題を団体交渉の場で話し合うことは十分可能であり、A1本人ではなく組合名義で本件各有休申請をしなければこれらの問題について団体交渉を行うことができないといった事情は認められない。
 また、A1は鍛造部門での就労を拒否する趣旨で有休を取得しようとしたというのであるから、9月4日及び同月12日の午前8時までに所定の休暇願又は電話によりA1本人が有休申請手続をすることが物理的に困難であったとの事情もうかがわれない。
(3) 組合の主張について
 アこれに対し、組合は、会社の有休申請手続に関する取扱いは極めて緩やかであり、会社は就業規則を恣意的に解釈して本件各有休申請に限り厳格に就業規則を適用していると主張し、有休取得手続に関する取扱いが極めて緩やかであったことの根拠として、①平成17年頃に午前8時10分頃に電話で有休を取得する旨連絡して有休扱いが認められたこと、②平成18年に始業時刻後に電話で有休を取得する旨連絡して有休扱いが認められたこと、③本件配転による配転先の上司が知らされていなかったことを挙げている。
 イしかし、就業規則では、代理による有休の申請は認められず、第三者による場合は、それが被用者の確定的に行使した時季指定権を第三者が使者として使用者に伝達するものであると確認できる方式のものでなければならないというべきであり、A1本人が申請をすることができないやむを得ない事情があったとも認められないことは前述のとおりであるから、会社が本件各有休申請についてのみ厳格に就業規則を解釈して適用したとの組合の主張は採用できない。
 ウまた、会社における有休申請手続に関する取扱いが、実際には就業規則の定めに従っておらず、本件各有休申請のように被用者本人以外からの有休取得申請であっても受け付けていたのであれば、本件各有休申請を認めずに欠勤扱いしたとの会社の対応は他の事例との公平性を欠く不当な対応であるということになるが、組合が指摘する①ないし③の事情は、いずれも会社が被用者本人以外からの有休取得申請を認めたものではないから、仮に組合が主張するとおりの事情を認定することができるとしても、本件各有休申請に対する会社の対応が不当なものであることを根拠付ける事情とはいえない。
3 会社が組合等を嫌悪していたとの主張について
(1) ①(組合との団体交渉を社外で行っていること)について
 本件各有休申請が行われた平成24年の団体交渉及び非公式の折衝は、いずれも会社会議室で行われている。証拠によれば、会社は、平成25年9月30日に団体交渉の場所として社外の会議室を指定したとの事実を認めることができるが、本件各有休申請から約1年後の事情であり、本件各有休申請の当時、会社が組合等を嫌悪していたことを基礎付ける事情と評価することはできない。
(2) ②(9月3日の休暇願の不受領)について
 休暇願は所属長を経て会社に提出しなければならないと就業規則は定めており、かつ、会社はA1に対し本件配転を命じているのであるから、会社の立場からすると、A1は既に機械部門ではなく、鍛造部門に所属しているのであり、したがって、A1が本件配転前に所属していた機械部門の部長でもあるB2常務が、異動先である鍛造部門の上司であるB3部長に休暇願を提出するよう指示したことは、A1が組合の組合員であるか否かにかかわらず、当然の対応ということができる。
 したがって、9月3日にB2常務がA1の休暇願を受け取ろうとしなかったことは、会社が組合等を嫌悪していたことを基礎付ける事情とはいえない。
(3) ③(9月18日の折衝の際の対応)について
 会社は9月3日の時点から本件各有休申請を認めることができない理由について就業規則で定める手続に従っていないからである旨説明し、また、証拠によれば、9月18の折衝の際には、会社は折衝の当初から本件各有休申請が就業規則9条4項の「年次有休休暇を申請しようとする者」による申請でないため認められない旨説明しており、いったん席を外して協議したのは本件各有休申請を認めることができない理由を再確認するためにすぎないことが認められ、それをもって、会社が主張する上記理由が直ちに虚偽であると推認することもできないのであるから、会社が正当な理由なく本件各有休申請を拒否しようとしていたとは認められない。
 したがって、9月18日折衝の際に会社が途中退席したことは会社が組合等を嫌悪していたことを裏付ける事情とは解されない。
(4) ④(B5業務部長の本件発言)について
 B5業務部長の本件発言は、「組合活動っていうのは、何らあれはないんですけど」、「A1さんはA1さんで主張するのはいいんですけども」と述べていることからすると、組合及びA1の組合活動を非難するものであるとも組合活動を制限するものとも解されない。A1は併存組合に所属しつつ組合に加入して併存組合から除名処分を受けていることに照らすと、B5業務部長の本件発言は、他の従業員と余計な摩擦が生じないように配慮するようにA1に要望したものであると解されるのであり、会社が従業員間で不要な軋轢が生じないように求めることが不当であるともいえないから、参加人が原告等を嫌悪してその活動を不当に抑制しようとしたものと解することはできない。▼したがって、B5業務部長の本件発言をもって、会社が組合等を嫌悪していたことを基礎付けることはできない。
(5) なお、組合は、会社が、組合と交渉し、ましてや確認書を交わすことはようやく築いた併存組合との円満な関係に水を差すことになるから、嫌悪してことさらに厳しく対応したと主張しているが、会社は、組合からの団体交渉の申出に応じており、組合も本件配転について了承した上で確約書を作成しており、会社の方針を基本的には認めた上で解決するという穏便な対応をしていることなどの事実に照らし、上記主張は採用できない。  
その他   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成24年(不)第68号事件 棄却 平成26年2月3日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約52KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。