労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  三幸自動車 
事件番号  東京地裁平成25年(行ウ)534号 
原告  三幸自動車株式会社(「会社」) 
被告  東京都(処分行政庁・東京都労働委員会) 
被告補助参加人  全労協全国一般東京労働組合(「組合」) 
判決年月日  平成27年1月19日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 会社が、組合員A1を、同人による就業時間中の無許可の労働組合活動、ホームページへの記事の掲載による会社の機密漏洩、虚偽の内容のビラ配布による名誉毀損及び原告役員に対する暴行を理由に解雇(「本件解雇」)したことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
2 東京都労委は、本件解雇は、労組法7条1号及び同3号の不当労働行為に該当するとして、会社に対し、本件解雇の撤回、A1の原職への復職、バックペイ並びに文書交付及び掲示を命じた(「本件命令」)。
3 会社は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したところ、同地裁は、会社の請求を棄却した。 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用を含め、原告の負担とする。 
判決の要旨  1 会社と組合及びA1との関係について
 会社は、会長が組合及び組合活動を嫌悪する発言をしていただけでなく、団体交渉等の場で、組合員であるA1が労働者代表として会社との交渉相手になることについて否定的な態度を示し、会長の発言に沿った内容の親睦会規約の改正を、本部長も加わった上で行っていたことが認められる。また、団体交渉において、会社は、交渉が紛糾する中での組合側の失言や、ビラに記載された、客観的に個人攻撃とは解し難い本部長に関する記載や、ビラの細かな誤記などについて、繰り返し非難し、執拗に謝罪を求めるなど、組合側の小さなミス等を取り上げて過剰に攻撃的、敵対的な態度で対応していたものと認められる。会社が組合活動に理解を示して公平に対応していたとは評価し得ないのであり、会社は、組合及びその組合活動並びに組合員であるA1を嫌悪していたと推認するのが相当である。
2 本件解雇の相当性について
(1)  解雇理由1(第2回団体交渉へのA1の出席が重大かつ悪質な就業規則違反であること)について
 A1の就業日に開催された第2回団体交渉へのA1の出席が形式的に就業規則の規定に違反していたとしても、会社の指摘を受けて第3回団体交渉以降の開催時間は就業規則上の問題が生じないよう配慮したものに改められ、また、第2回団体交渉への出席も、本来自由な利用が可能な休憩時間(労働基準法34条3項)に行われたものであることからすれば、同出席は、重大かつ悪質な就業規則違反であると評価することはできないから、解雇を相当とする事由には当たらないというべきである。
(2) 解雇理由2(ホームページに会社の機密情報を掲載し続けたことが重大かつ悪質な就業規則違反であること)について
 A1は、会社の組合に対する回答文書のほか、会社の賃金体系や手当の計算方法等に関する具体的な説明文書、会社と労働代表との間で締結された定年後継続雇用に関する協定書等をホームページに掲載しているところ、これら文書は、公開を予定して作成したものとは考え難く、または、会社の内部情報として取り扱われるのが一般であるから、情報を第三者に閲覧可能な状態に置くことにより、会社が不測の不利益を被る可能性を否定することはできない。ホームページへの掲載行為は、不適切な行為であったといわざるを得ない。しかし、同掲載行為に関し、明確な削除指示まではなく、その後、口頭注意とともに直ちに完全に削除するように指示がされているところ、A1は、その翌日にはホームページを閉鎖し、組合及び支部も、会社に対する書面において、配盧が不十分であったことを認める旨の記載をしており、また、上記閉鎖から本件解雇までの間に、A1が新たにウェブサイトなどで公開したと認めるに足りる証拠はない。以上の事情に照らせば、A1に就業規則の規定を遵守する意思がないと評価することはできないというべきであり、会社が実際に不利益を被ったとの事情もうかがわれないことを考え併せれば、同掲載行為が解雇に相当する重大な非違行為であると認めることはできない。
(3) 解雇理由3(虚偽の内容のビラにより会社の名誉が毀損されたこと)について
 ビラの記載は、A1が当時認識していた事実を正確に記載したものとはいい難いが、事実関係において重大な誤りを含んでいるとまではいえず、賃金の減額に関し会社が一部を補填するとの点に触れていないことをもって、解雇事由である「会社の名誉を毀損」する行為に当たるものと評価するのは相当でない。また、同ビラの配布の態様が正当な組合活動の範囲を逸脱したものと評価すべき事情もうかがわれない。同ビラの記載やその配布行為が解雇理由に当たると認めることはできない。
(4) 解雇理由4(A1の本部長に対する暴行行為の悪質性)について
 A1の腹部と本部長の腹部とが接触した事実を認めることはできるが、「暴行」と評価するのを相当とする程度の接触が生じていたとは考え難いというべきである。A1及び組合の回答及び説明が不自然かつ不合理に変遷している旨の会社の主張は理由がなく、A1が本部長の警告を無視して本部長に体当たりした旨の主張は、事実を認めるに足りる的確な証拠はない。以上のほか、上記接触が「暴行」と評価するのを相当とする程度のものであったことをうかがわせる事情は存しないから、上記接触をもって解雇理由に該当するものと認めることはできない。
(5) 本件解屋の相当性について
 会社が主張する解雇理由1から同4までにつき、懲戒処分を実際に受けたわけでもない上、いずれも解雇理由に足りるものとは認められない以上、 就業規則に規定する「度々懲戒処分をうけたにもかかわらず、尚改しゅんの見込みがないとき」に準じる行為があったとも認められないことは明らかである。本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠くものというほかなく、相当性を認めることはできない。
3 本件解雇の不当労働行為該当性について
 本件解雇は、A1が労働組合の組合員であり、労働組合の正当な行為をしたことを理由に会社がA1に対してした不利益な取扱いであると認めることができるから、労働組合法7条1号の不利益取扱いに該当するとともに、会社の唯一の組合員であるA1が解雇された結果、会社が組合の関与を受けなくなる点で、同条3号の支配介入にも該当すると認めることができる。 
その他   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成24年(不)第10号 全部救済 平成25年7月2日
 
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