労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  南労会(団交拒否) 
事件番号  東京地裁平成22年(行ウ)第429号 
原告  全国金属機械労働組合港合同
全国金属機械労働組合港合同南労会支部 
被告  国(処分行政庁:中央労働委員会) 
被告補助参加人  医療法人南労会 
判決年月日  平成24年6月25日 
判決区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 医療法人が、①組合員X1及びX2の懲戒処分に係る賞罰委員会の開催及び賞罰委員会の開催手続に関して組合の申し入れた団体交渉を拒否したこと、②組合員X1を懲戒解雇処分(以下「本件懲戒解雇」という。)に付したこと、③組合員X2を譴責処分(以下「本件譴責処分」という。)に付したことが、不当労働行為に当たるとして、大阪府労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労委は、①本件団交拒否は不当労働行為であるとして、賞罰委員会の開催及び賞罰委員会開催手続に関する団体交渉を拒否したことに関して文書手交を命じ、その余の救済申立てを棄却した。
 医療法人及び組合らは、これを不服として、それぞれ再審査を申し立てたが、中労委は、再審査申立てを棄却した。
 本件は、これを不服として、組合らが東京地裁に行政訴訟を提起した事件であるが、同地裁は、組合らの請求を棄却した。
判決主文  1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。  
判決の要旨  1 本件懲戒解雇が労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たるか(争点1)
(1) 本件懲戒解雇の懲戒事由のうち、①8.6発言〔注;平成3年8月6日の組合員X1のY1理事に対する発言〕は、Y1理事に対し、他の患者の面前で、大声で暴言を吐いたものであり、これが労使間で合意に達しないままに実施された3年変更〔注;平成3年8月5日付け診療時間及び勤務時間の変更〕の翌日に、Y1理事に対してなされたことを考慮しても、職場規律を乱すとともに、職員としての品位、診療所の名誉、信用を失墜するような言動を行ったというべきであり(就業規則16条8号、17条2号)、その情状も重い。
 ②PKO等ビラ掲示〔注;国連平和維持活動反対等のビラの掲示〕については、平成4年1月頃から、数度にわたり許可を得ないビラ掲示につき口頭で注意され、同年3月には書面で2度、就業規則違反行為の指摘を受け、今後継続する場合は賞罰規定に基づく判断をする旨の警告を受けていたにもかかわらず、同年5月末頃まで継続し、診療所1階待合室の掲示板に掲示されたことを併せ考慮すると、PKO等ビラ掲示は、正当な理由なく上長の指示に従わず、職場規律を乱すとともに、診療所の施設を許可なく私用に供したもので(就業規則16条4号、8号、18条3号)、その情状も重い。医療法人は、施設管理権に基づき、その所有する施設に対する組合らのビラの貼付等を制限できるから、PKO等ビラ掲示が組合らの方針に則った活動であったとしても懲戒事由となることが否定されるものではない。
 ③7.11掲示〔注;平成4年7月11日のX1によるY2事務長名を記載した掲示物〕は、患者に対して支払を次回にしてもらうことがある旨を知らせるものであるが、Y2事務長が組合支部勤務割に従わないことをもって、業務拒否と断定し、同人の氏名を朱書し、朱の下線を引き殊更に強調し、Y2事務長個人をおとしめるとともに、患者に診療所内の不和を知らしめて不安を抱かせるもので、職員としての品位や、診療所の名誉、信用を失墜するような言動を行ったときに当たり(就業規則17条2号)、その情状も重い。
 ④8.21行為〔注;平成4年8月21日に組合員X1ら3名がY3課長に抗議署名の受取を迫った行為〕は、課長職の導入及び任命という使用者の人事権に関する事柄について、使用者に対してではなく、Y3課長個人に対して抗議に及んだもので、受取を拒否したY3課長を執拗に追いかけ抗議署名の受取を迫ったものであって、職場規律を乱すもので(就業規則16条8号)、その情状も重い。
 このように、本件懲戒解雇の懲戒事由とされたX1の4つの行為は、個別にみても、いずれも悪質であって、その情状も重いものであるところ、X1が1年程度の間に、就業規則に反し賞罰規定に基づく判断をするとの警告を受けたにもかかわらずPKO等ビラ掲示を継続したり、賞罰委員会でX1に対する懲戒処分が検討されたにもかかわらず7.11掲示及び8.21行為に及ぶなどして、4件の懲戒事由に該当する行為を重ねたことに照らすと、全体としてみればその情状は特に重いから、労使間に厳しい対立があったことなどを考慮しても、懲戒解雇事由である就業規則19条1号の「前条各号の1に該当し、情状特に重きとき」に当たると認められ、懲戒解雇事由からみれば社会通念上相当性を欠くものではないと認められる。
(2) 組合らは、賞罰委員会の開催について分会と事前に協議し合意を得ていないことが事前協議合意協定に違反する旨主張する。
 しかし、賞罰委員会は、医療法人(A診療所)が懲戒するか否か等を決定するに当たっての諮問機関であって、少なくとも公正かつ合理的な方法により開催される限り、その開催が事前協議合意協定にいう「労働条件の変更をともなう事項」に当たるものということはできず、本件懲戒解雇にあたりB病院における前例に準じて賞罰委員会を開催したことが、直ちに事前協議合意協定に違反しているとか、賞罰委員会の開催自体がなかったなどと認めることはできない。
(3) 組合らは、本件懲戒解雇が平成7年2月から同年7月にかけて行われた分会副委員長X3に対する懲戒処分と均衡を欠き相当性を欠く旨主張する。
 しかし、本件懲戒解雇とX3に対する懲戒処分とでは、患者に対する影響の有無など懲戒事由の質を異にしている部分もあるし、懲戒事由が生じた期間も3年程度離れているから、X3に対する懲戒処分が出勤停止に止まったことをもって、直ちに本件懲戒解雇が相当性を欠くことにはならない。
(4) 組合らは、事前協議合意協定により医療法人が本件懲戒解雇を行うには分会と事前に協議し合意を得る必要があった旨主張する。
 事前協議合意協定は、「労働条件の変更をともなう事項」について事前協議と合意を要するものとしているが、これが個別具体的な懲戒権行使を対象にしているとは解されないから、本件懲戒解雇は事前協議合意協定に違反するものではない。
(5) 以上によれば、本件懲戒解雇は、客観的に合理的な理由を欠くものでも、社会通念上不相当なものでもなく、X1が組合員であることの故をもって、同人を解雇したとも、組合らの弱体化を目的として支配介入したとも認められないから、本件懲戒解雇が労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たらないと判断した本件命令に、組合ら指摘の事実誤認及び法律上の判断を誤った違法は認められない。
2 本件譴責処分が労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たるか(争点2)
 X2が、Y2事務長から人事マスター〔注;給与支払等のため職員の給与明細等の個人情報についてコード番号を付して登録しているもの〕取寄せの件について医療法人本部の事情聴取に応じるよう指示されたものの、応じなかったことは、正当な理由なく上長の指示に従わなかったとき(就業規則16条4号)に当たる。そして、本件譴責処分を行うことが事前協議合意協定に違反しないことは前記1(4)のとおりであり、ほかに本件譴責処分が社会通念上相当でないことをうかがわせるような事情は認められない。
 すると、本件譴責処分は、X2が組合員であることの故をもって、同人に対して不利益な取扱いをしたとも、組合らの弱体化を目的として支配介入したとも認められないから、本件譴責処分が労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たらないと判断した本件命令に、組合ら指摘の事実誤認及び法律上の判断を誤った違法は認められない。
その他   

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
大阪地労委平成 4年(不)第55号 一部救済 平成14年7月24日
中労委平成14年(不再)第34号・第38号 棄却 平成22年1月20日
 
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