概要情報
事件名 |
伏見織物加工(12年団交) |
事件番号 |
東京地裁平成17年(行ウ)第583号(甲事件)・平成18年(行ウ)第65号(乙事件) |
甲事件原告・乙事件被告補助参加人 |
伏見織物加工株式会社 |
乙事件原告・甲事件被告補助参加人 |
京都-滋賀地域合同労働組合 |
被告 |
国(処分行政庁 中央労働委員会) |
判決年月日 |
平成19年1月25日 |
判決区分 |
一部取消、棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が①組合から申入れのあった夏季賞与等を議題とする団体交渉及び組合員Aの失業保険、退職金、夏季賞与、解雇予告手当等を議題とする団体交渉に応じなかったこと、②同人に解雇予告手当、退職金及び平成12年度夏季賞与を支給しなかったこと、並びに雇用保険及び厚生年金保険の加入手続きを取らなかったこと、③本件救済申立てを行ったことにより、申立後においても解雇予告手当等についての不利益取扱いを是正しなかったことが不当労働行為であるとして、申立てがあった事件である。初審京都府労委は、会社に対し、雇用保険の届出を怠ったことによる受給額の減少相当分の取扱い及び厚生年金保険の被保険者であることの確認を受けるために講ずべき措置について団交応諾を命じ、その余の申立ては棄却又は却下し、中労委は再審査申立てを棄却した。会社及び組合は、これを不服として東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、中労委命令のうち、厚生年金保険の加入問題に関し団交応諾を命じた部分を取り消し、組合の請求は棄却した。 |
判決主文 |
1.甲事件原告・乙事件被告補助参加人の請求のうち、中央労働委員会が中労委平成13年(不再)第46号第47号事件について平成17年10月19日付けでした命令のうち、京都府労働委員会平成12年(不)第6号事件・平成13年9月5日付け命令の主文1項(1)に係る再審査申立てを棄却した部分の取消しを求める請求について、訴えを却下する。 2.中央労働委員会が中労委平成13年(不再)第46号第47号事件について平成17年10月19日付けでした命令のうち、京都府労働委員会平成12年(不)第6号事件・平成13年9月5日付け命令の主文Ⅰ項(2)に係る再審査申立てを棄却した部分を取り消す。 3.乙事件原告・甲事件被告補助参加人の請求を棄却する。 4.訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は、これを2分し、その1を被告の、その余を乙事件原告・甲事件被告補助参加人の負担とする。 |
判決の要旨 |
① 会社が平成12年7月28日の団体交渉の申し入れに応じなかったことが、不当労働行為になるかについて 7月28日の団体交渉申し入れ時において、会社が、当時Xが組合員であると認識することはできず、その理由も組合がこれを明らかにしていなかったというべきであるから、団体交渉に応じなかったことが不当労働行為になるとは認められないとされた例。 ② 会社が平成12年10月7日の団体交渉申し入れのうち厚生年金保険及び雇用保険への加入問題について団体交渉に応じなかったことが不当労働行為となるかについて ア 団体交渉申し入れに際しては、いかなる事項を団体交渉事項とするかを具体的に明らかにすることは当然の前提であり、労働組合にはこれを明らかにする義務があるというべきであり、団体交渉申入書に「等々」と抽象的な記載がされている場合に、その範囲を、それまでの経緯から推し量って、これに適切に対応する義務が使用者にあると解し、使用者の判断に誤りがあった場合には不当労働行為に成立を認めることは、使用者に過大な義務を課し、労働組合法7条2号の成立範囲を広げ過ぎる解釈にほかならず、本件においても、組合が厚生年金保険問題について団体交渉申入書において具体的に説明した事実は認められないことから、不当労働行為にはあたらないとされた例。 イ 雇用保険加入問題については、中労委の本件命令後に、会社は、正当な受領額減額分を算定したうえで、差額をXに支払い、その根拠等の説明を行ったのであるから、この問題は決着していると認められ、Xに不利益があるということはできないし、実質的に団体交渉が行われたと同様となり、事情が変更され、本件命令の目的を達して効力を喪失したものと解されるとされた例。 ③ 会社が、平成12年10月7日の団体交渉申し入れのうち厚生年金保険及び雇用保険への加入問題以外の事項について団体交渉に応じなかったことが不当労働行為となるかについて ア 10月7日の団体交渉申入書の内容である一般労働条件関係について、当該申入れ当時、組合には会社の現職従業員たる組合員は所属していなかったから、Xの雇用関係の清算以外の問題については、団体交渉の開催は要求できないというべきとされた例。 イ Xの雇用関係に関する退職金等については、Xが期間満了により退職し、その雇用契約からして退職金がないことも明らかであり、解雇予告手当、退職金等の要求はいずれも一見して明らかに請求の根拠を欠くものであるから、会社がこれらの事項に対する団体交渉に応じなかったことには正当な理由があるとされた例。 ④ 解雇予告手当、退職金、厚生年金保険、雇用保険等にかかる取扱い及び救済申立後に不利益扱いを是正しないことが不当労働行為であるといえるかについて ア 組合は、会社がXに対して、解雇予告手当等の不支給、厚生年金保険等の加入手続をしないことで不利益な取扱いをし、これは、組合の運営に対する支配介入であると主張するが、Xは、退職時に組合員であったとは認められないから、組合には救済を求める適格がないとされた例。 イ 救済申立後も解雇手当等は前記③イのとおり、会社には支給義務はないのであるから、不当労働行為となる余地はなく、雇用保険や厚生年金保険の問題についても、会社は速やかに対応し、組合やXに対する報復として手続を怠っているとは認められないとされた例。 |