労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  宮崎紙業 
事件番号  東京地裁平成17年(行ウ)第252号 
原告  宮崎紙業株式会社 
被告  国 
被告補助参加人  宮崎紙業労働組合 
判決年月日  平成18年 1月30日 
判決区分  請求の棄却 
重要度   
事件概要  本件は、平成15年度賃上げ交渉において、正社員の基本給一律3万円賃上げの組合の要求に対し、原告が売上額等の経営状況に関する具体的数値等の開示なく、生活関連手当のみ300円増額するとの回答を行ったことが誠実交渉義務違反の不当労働行為であるとして争われた事件である。
 初審大阪府労働委員会が、会社の不当労働行為を認め、救済命令を発し、中央労働委員会も再審査でこれを支持した。
 原告はこれを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起した。
 同地裁は、原告の請求を棄却した。 
判決主文  1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、補助参加によって生じた費用を含め、原告の負担とする。 
判決の要旨  2300 賃金・労働時間
本件団交の団交事項は、補助参加人組合の組合員の賃上げ額に関するものであり、義務的団交事項に当たることはもちろん、労働者にとって最も重要な労働条件に関するものであるから、使用者である原告は客観的具体的根拠を示して説明するなどして可能な限り労働者の同意を得る努力をすべきといえるが、原告では、平成10年度以降、同14年度までは各年賃上げを行っていたにもかかわらず、本件賃上げ回答において、一時金及び退職金の基礎金額とならない生活関連手当についてのみ、賃上げ額も300円と前年度賃上げ額に比較しても、大阪府内の他企業と比較しても著しく低額な回答をせざるを得なかった理由について、客観的具体的根拠を示し、補助参加人組合の同意を得る努力をすべき義務があったとされた例。

2230 不穏当な態度
2235 その他組合の態度
補助参加人組合は、本件賃上げ回答について反発していたものの、基本給額を賃上げしないことについては事実上同意し、生活関連手当の増額を求めていたこと等の認定事実によれば、原告の賃上げ回答について妥結の意思全くないとの態度を示していたとまではいえないが、他方、原告の交渉態度については、概括的説明のみで、これまでは具体的な経営内容について説明しなくても賃上げについて妥結してきておりこれ以上説明する意思がないと繰り返し述べたこと、特段理由を述べることなく、補助参加人組合の組合員の平均値についてのみ明らかにするとの態度をとったこと、加えて、本件賃上げ回答について、第3回団交から最終回答であるとの回答に固執し、その後の団交申し入れに迅速に応じなかった等の交渉態度は補助参加人組合の同意を得ようとする真摯な努力をしていたとは評価できないとされた例。

2230 不穏当な態度
経営資料の開示について、確かに原告の主張するとおり、賃上げ額葉、売る上げ額、人件費等から直ちに明らかになるものではないが、原告としては、本件賃上げ回答額が経営上譲歩できる最大限のものであることにつき、可能な限り具体的数値を明らかにして説明することが補助参加人組合の理解を得るうえで不可欠であること、補助参加人組合は本件団交において、継続して本件賃上げ回答額の根拠となる経営資料の開示を求めていること、原告の売上、資本金、従業員の平均賃金・平均年齢・平均勤続年数が記載された補助参加人組合により配布されたビラについて、当該ビラ配布の情宣活動が、組合活動として相当な範囲を逸脱するものとは認められず、このことで原告が補助参加人組合に対し経営に関する資料を開示による営業活動の支障や経営に打撃を受けるおそれがあるとの主張は認め難いこと等から、原告の本件団交における交渉態度は誠実交渉義務違反に当たるとされた例。

業種・規模  パルプ・紙・紙加工品製造業 
掲載文献   
評釈等情報   

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