概要情報
事件名 |
本四海峡バス(団交拒否・懲戒処分等) |
事件番号 |
東京地裁平成15年(行ウ)第610号
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原告 |
本四海峡バス株式会社 |
被告 |
中央労働委員会 |
被告補助参加人 |
全日本港湾労働組合関西地方神戸支部 |
判決年月日 |
平成17年 6月30日 |
判決区分 |
請求の棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、①組合員2名を出勤停止処分としたこと、②同出勤停止処分等を議題とする団体交渉申し入れに対し、労使関係を認めて応じることはできないとしたこと、③組合に対して組合事務所及び組合掲示板を貸与しなかったこと等が不当労働行為であるとして争われた事件である。 兵庫地労委は、会社に対し、①出勤停止処分の取消し及びバックペイ、②団体交渉の応談、③組合事務所の貸与等を命じた。これを不服として、会社から再審査の申立てがなされ、中労委は、初審の組合事務所の貸与命令を文書手交に改める他、その余の再審査申立てを棄却したところ、会社がこれを不服として行政訴訟を提起した。東京地裁は、別件訴訟の判決確定により、本件出勤停止処分の無効が確定し、会社が本件各出勤停止処分を取消し、差額賃金の支払いをしている以上、本件救済命令の取消しを求める法律上の利益は存しないとして、一部を却下し、その余の請求を棄却した。 |
判決主文 |
1 原告の請求のうち、中労委平成13年(不再)第44号事件及び同第59号事件・平成1 5年9月17日付け命令の主文2項中、兵庫県地労委平成12年(不)第6号事件・平成1 3年11月20日付け命令の主文1項、2項に係る再審査申立てを棄却した部分の取消しを 求める請求について、訴えを却下する。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
1000 ユニオン・ショップ
1501 黄犬契約
本件協約は、その文言上、会社が本件協約締結組合である訴外K組合の組合員だけを雇用することができ、また従業員がK組合の組合員でなくなったときはこれを解雇しなければならないとするクローズド・ショップ制を定めたものとは解し難く、また、そもそもクローズド・ショップ協定を締結した労働組合が存在する場合であっても、労働者の労働組合選択の自由や労働組合の団結権は等しく尊重させるべきであり、当該協定締結組合を脱退し、他の労働組合に加入した労働者及び当該労働組合の権利を否定することはできないとされた例。
2800 各種便宜供与の廃止・拒否
2610 職制上の地位にある者の言動
2625 非組合員化の言動
2902 労組法7条2号(団交拒否)と競合
会社は、社内に訴外K組合とZ組合という2つの労働組合が存在しているにもかかわらず、本件協約締結組合であるK組合に対してのみ組合事務所を貸与し、その団体交渉に応じる一方、Z組合とは、これをいずれも拒否しているのであって、これがZ組合の団結権や団体交渉権を侵害するとともに、同組合に所属する労働者に対する差別待遇として、その団結権や団体交渉権を侵害するものであることは明らかであり、また、Y1常務取締役及びY2支配人らによる「会社はK組合しか認めない」、「K組合の組合員でなければ新路線に乗務させない」等の発言やT代表取締役による個別面談等が、Z組合を嫌悪し、その排除をする意図の下で行われたことも明らかであるところ、会社の団体交渉拒否は、労組法7条2号の不当労働行為に該当するべきというべきであり、会社の組合事務所の不貸与や右記発言、個別面談等が労組法7条3号の不当労働行為に該当するとされた例。
6140 訴の利益
別件訴訟の判決確定により本件出勤停止処分の無効が確定し、会社が本件各出勤停止処分を取り消し、差額賃金の支払いをしている以上、そもそも、本件救済命令のうち、本件出勤停止処分に関する部分は目的を達し効力を有しないというべきあって、別件訴訟の判決確定により、会社において支払った差額賃金の返還を求める余地もない本件においては、この点について、本件救済命令の取消しを求める法律上の利益は存しないとされた例。
6140 訴の利益
本件救済命令が発出された後、会社はX1に対し徳島営業所に異動を命じた事実が認められ、また、Z組合自身がX1の徳島営業所勤務復帰により本件救済命令を取り消すことによって回復されるべき実質的な利益は失われてると主張し、本件転勤命令の不当労働行為性の主張を続ける意向がないと窺われることを併せると、本件救済命令のうち、本件転勤命令に関する部分は実質的に既に実現し、その限りで目的を達して効力を喪失したというべきであり、その取消しを求める法律上の利益は存しないとされた例。
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業種・規模 |
道路旅客運送業(バス専業) |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
 
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