労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  光風会 
事件番号  東京地裁平成11年(行ウ)第263号 
原告  医療法人光風会 
被告  中央労働委員会 
被告参加人  回春荘病院労働組合 外5名 
判決年月日  平成13年10月31日 
判決区分  救済命令の一部取消し 
重要度   
事件概要  本件は、医療法人光風会が、その経営する回春荘病院の従業員が組織 する労働組合の行った平成4年4月22日及び23日のストライキに対し、ストライキに参加した組合員の平成4年5月分給与に ついて、基本給以外の調整給及び諸手当等からカットを行ったこと、組合の書記次長を受付事務から看護助手に配転したこと、ス トライキを実施したことを理由に執行委員長及び組合員4名を厳重注意処分としたことが、それぞれ不当労働行為であるとして申 立てがあった事件である。
 初審茨城地労委は、光風会に対し、平成4年5月分給与からカットした金額のうち精勤手当を含む諸手当相当分の支払、組合書 記次長に対する配転命令の取消等、執行委員長及び組合員4名に対する厳重注意処分の取消等、これらに関する文書手交及び掲示 を命じた。
 中労委は、初審命令のうち精勤手当の支払を命じた部分を取り消し、その余の再審査申立てを棄却したところ、光風会はこれを 不服として東京地裁に行政訴訟を提起した。
 同地裁は、平成13年10月31日、中労委命令主文第4項の取消請求のうち、組合書記次長の配転命令の取消し等に対する再 審査申立てを棄却した部分に係る訴えを却下し、本件ストライキは違法であるとして、執行委員長らの厳重注意処分取消し等に対 する再審査申立てを棄却した部分については、これを取り消し、その余の請求は棄却した。 
判決主文  1 被告が中労委平成7年(不再)第16号不当労働行為再審査申立 事件について平成11年10月6日付けでした命令の主文第4項の取消請求のうち、次の部分の取消請求に係る訴えを却下する。
茨城県地方労働委員会が、茨労委平成4年(不)第2号不当労働行為救済申立事件について平成7年3月7日付けでした命令のう ち、第2項の部分に対する再審査申立てを棄却した部分。
2 被告が中労委平成7年(不再)第16号不当労働行為再審査申立事件について平成11年10月6日付けでした命令の主文第 4項のうち、次の部分を取り消す。
茨城県地方労働委員会が、茨労委平成4年(不)第2項不当労働行為救済申立事件について平成7年3月7日付けでした命令のう ち、主文第3項及び第4項記載の誓約書中<3>の部分に対する再審査申立てをいずれも棄却した部分。
3 原告のその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用及び補助参加によって生じた費用の各2分の1を原告の、訴訟費用の2分の1を被告の、補助参加によって生じた費 用の2分の1を被告補助参加人らの各負担とする。
判決の要旨  0300 争議行為の範囲
組合が、病院の保安要員確保について非協力的な態度を取った結果、ストライキの実施中、本件精神病院において、入院患者の自 殺等の緊急事態がいったん発生した場合、十分な対応をなしうる態勢を欠くに至ったと評価せざるを得ず、また、本件ストライキ を行うに当たって、組合が予め患者の生命・身体の安全確保に十分な配慮をしたと認められないから、本件ストライキは、精神病 院に勤務する従業員が行う争議行為としての正当性の範囲を逸脱したものであって、違法との評価を免れないとされた例。

1204 スト・カット
3102 争議対抗手段
本件賃金カットは、ストライキ実施前に、光風会によって文書で組合に予告されており、光風会はストライキが違法か否か判明し ない実施前の段階で既に賃金カットを予告の上、ストライキ実施後、その予告どおり違法な賃金カットを行ったという一連の行為 は、本件ストライキが違法に行われたことを理由としたものではなく、その他の正当な組合活動又は組合員であることを理由とし て行なったと推認され、全体として組合の正当な争議権の行使を抑圧する結果となるから、光風会による本件賃金カットは、組合 活動に対する支配介入及び組合員に対する不利益取扱いと評価される不当労働行為であるとされた例。

1300 転勤・配転
本件配転命令当時、その対象者の組合員X1は組合活動の中心的存在の一人として積極的に活動し、また、組合は労働条件に関す る問題を巡って会と対立姿勢を鮮明にし、X1ら組合役員の指導の下、病院初の本件ストライキを実施し対立しており、その1ヶ 月後に配転の打診がなされ、異職種間の配転であるにもかかわらず、X1の意志に反して本件配転命令がなされていることからす れば、本件配転命令は、積極的な活動を行ってきた組合の指導的立場にあるX1を嫌悪し、かつ、ストライキの指導を行ったX1 の組合活動に報復する反組合的意図に基づくものと推認できるから、労働組合法第七条第一号に該当する不利益取扱いに当たると された例。

1400 制裁処分
3600 処分の差別
6344 支配介入に関する不当労働行為の成否の判断の誤り
本件厳重注意処分については、光風会は就業規則上の懲戒処分と同等の処分と考えていたものであり、組合員らに昇給や退職金の 算定において不利益を与えない注意行為と認められ、また、本件ストライキが違法であると判断されるのであるから、光風会が組 合員らに対し違法なストライキの指導責任を問う趣旨で文書を交付し、厳重注意を与えた行為は、労働者の違法な行為に対応して 使用者がなす通常一般の行為とみられ、会の組合活動に対する支配介入の意思に基づくとはいえないから、本件厳重注意処分を不 当労働行為と認定した部分は違法との評価を免れないとされた例。

業種・規模  医療業 
掲載文献  労働委員会関係裁判例集36集855頁 
評釈等情報   

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