労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成30年(不)第67号
プロヴ・コミュニケーションズ不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和2年3月17日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   平成30年7月20日、会社は、A2を解雇した。その後、A2は組合に加入し、組合は、同人の解雇撤回を要求して、会社に団体交渉を申し入れた。
 しかし、会社は、A2との雇用関係は完全に終了したと回答して、団体交渉に応じなかった。
 本件は、組合が30年8月6日、同月21日及び9月3日付けで申し入れたA2の解雇に関する団体交渉に会社が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たるか否かが争われた事案である。
 東京都労働委員会は、会社に対し、正当な理由のない団交拒否に当たる不当労働行為であるとして、文書の交付を命じた。 
命令主文  1 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付しなければならない。
 年 月 日
 組合
 執行委員長 A1 殿
会社         
代表取締役 B
 貴組合が平成30年8月6日、同月21日及び9月3日付けで申し入れた団体交渉に当社が応じなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を操り返さないよう留意します。
 (注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
2 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
 
判断の要旨  (争点)A2の解雇に関する団体交渉に会社が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たるか。
 組合が、平成30年8月6日、同月21日及び9月3日付けでA2の解雇撤回等を要求して団体交渉を申し入れたのに対し、会社は、8月14日、同月23日及び9月7日付書面により、会社は団体交渉に応じる立場にはないとして、団体交渉に応じなかった。
 会社は、A2が本件解雇について何ら争わないまま、会社を完全に退職し、会社と同人との雇用関係が完全に終了した後になって、組合が会社に対して団体交渉を求めているのであるから、会社にはこれに応ずる義務はないと主張する。
 しかし、労働者が解雇されたとしても、解雇そのものについて争いがあるなど労使間に未解決の問題が残されている場合において、組合が組合員の労働条件に係るその未解決の問題について団体交渉を申し入れたときには、使用者は、その団体交渉に応ずべき立場にあるといえる。
 これを本件についてみると、A2が解雇通告時に異議を述べたか否かについては争いがあるが、同人が私物の搬出や退職に伴う手続に応じたことは認められる。しかし、A2は、7月20日の解雇通告から17日後の8月6日には、組合を通じて解雇撤回を要求し、解雇について争う意思を明確に示しているのであるから、たとえ、同人が解雇通告時等に明確に異議を述べず、また、私物を搬出し、退職に伴う手続にも応じていたとしても、そのことから直ちに同人が解雇を認め争わない意思を表明していたということはできない。
 そうすると、A2に対する解雇通告については、上記3回の団体交渉の申入れ当時労使間に依然として未解決の問題として残されていたものであるというべきであり、会社と同人との雇用関係が完全に終了しているため、団体交渉の申入れに応ずる義務はないとの会社の主張は、採用することができない。
 以上の次第であるから、組合は、A2の解雇という組合員の労働条件に係る会社との間の未解決の問題について、時期に遅れることなく団体交渉を申し入れており、会社はそれに応ずべき立場にあったということができる。それにもかかわらず、会社はその申入れに応じなかったのであるから、会社の対応は、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。 
掲載文献   

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