平成16年4月20日 |
中央労働委員会事務局審査第三課
審査官 藤森 和幸
電話 03-5403-2175(ダイヤルイン)
FAX 03-5403-2250
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丸都運輸不当労働行為再審査事件
(平成15年(不再)第7号)命令書交付について
中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成16年4月20日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
命令の概要は、次のとおりです。
I 当事者
1 | 再審査申立人 株式会社丸都運輸(福岡県遠賀郡岡垣町、平成12年12月末日従業員数214名) |
2 | 再審査被申立人 全日本建設交運一般労働組合北九州合同支部(平成16年3月1日組合員数80名) |
II 事案の概要
1 | 本件は、会社が、(1)平成12年年末一時金の団体交渉申入れに関し、具体的な財務資料を開示し十分な説明を行うようにとの要求に応えず、同一の回答を繰り返すなどの対応をしたこと、(2)腕章闘争に対して配車せず乗務させなかったこと、(3)組合員に対し長距離運行の配車を減少させたこと、(4)組合に対して腕章着用の中止を求める厳重申入れ等を行ったこと、(5)平成12年年末一時金の交渉中に会社の従業員に対し下級職制を使って一時金支給要請書記載工作を行ったこと、がそれぞれ不当労働行為に当たるとして、組合が福岡県地方労働委員会(福岡地労委)に救済申立てを行ったものである。 |
2 | 初審福岡地労委は、団体交渉に誠実に対応しなかったこと及び腕章を着用した組合員に対して配車をせず組合の運営に支配介入したこと、が不当労働行為であると認定された旨の文書手交を命じ、その他の申立てを棄却したところ、会社はこれを不服として再審査を申し立てた。 |
III 命令の要旨
1 | 主文の要旨 本件再審査申立てを棄却する。 |
2 | 判断の要旨
(1) | 平成12年年末一時金に関する団体交渉について
会社は、組合が「経理関係資料の全部」という形で資料開示要求を重ねており、会社取引先の運賃額を開示する結果となる経理関係資料の開示に応ずるわけにはいかないと主張する。
しかし、第1回から第5回までの団体交渉における会社の一連の態度をみれば、会社は、一貫して自らの回答に固執するとともに、具体的理由を説明することもなく資料の提出を拒むなど自らの回答の根拠を説明する努力を怠り、組合の要求事項、修正案等に対してもこれらを一方的に拒否し、また、持ち帰って検討するとしながらもその理由を説明することもなく同一の回答を繰り返すのみであった。
また、会社は、組合が経理関係資料の全部を開示するよう要求していることを捉えて資料開示拒否の理由としている。しかし、会社には、団体交渉において自らの回答の根拠となる資料を選択して開示し、又は会計資料等に基づいてより詳しい数字等を示すことが求められていることから、会社の主張は採用できず、その他資料開示を一切拒否する合理的理由は認められない。
以上を勘案すれば、会社は組合からの団体交渉の申入れには形式的には応じているものの、団体交渉申入れ段階及び団体交渉の全過程における会社の態度は、合意を求める組合の努力に対して誠実な対応を通じて合意達成の可能性を模索する使用者の義務を尽くしているとは認められず、団体交渉を正当な理由もなく拒否したものであって、これは労働組合法(労組法)第7条第2号に該当する不当労働行為である。 |
(2) | 本件腕章闘争を理由とする本件配車停止について
会社は、最大の取引先において組合が腕章着用を行ったということで強い抗議を受けたことなどから、組合員に対する配車を停止する措置(配車停止)が会社存続のためやむを得ざる措置であったと主張する。
確かに、取引先での腕章闘争の実施時には会社は、会社施設内では腕章の着用を容認したものの、これを除き最初の腕章闘争以降一貫して、会社の施設内又は施設外においてこれを行わないよう文書で申入れを行っており、また、労働協約、就業規則等においても就業時間中の腕章の着用を容認するような規定はなく、そのような労使慣行が成立していた事実もない。さらに、最大の取引先より、腕章闘争によって同社の信用を失墜するなどとしてその中止を求められ、今回の腕章闘争においては前回に続き再度厳しく注意されたことなどから具体的に会社の業務運営に支障が生ずるおそれがあったものと認められ、本件配車停止は会社にとって無理からぬものであったと考えられる。
しかしながら、割増賃金等の問題について組合は団体交渉等において会社と対立していたこと、組合の腕章闘争が原因となって会社は最大の取引先から抗議等を受け、その業務運営に支障が生じるおそれがあったこと等の事実を通じてみれば、組合を軽視又は嫌悪する会社の反組合的意思が推認される。
また、本件配車停止は、就業規則に基づく減給等の懲戒処分とはいえず、乗務員に対して乗務を事実上拒否するものである。その結果、通常賃金総額の5割程度を占める時間外・休日割増手当が、全く支払われず、賃金を唯一の生活の糧とする労働者に重大な影響をもたらすものである。以上のことから、本件配車停止は、取引先への対応上必要であったという以上に、本件腕章闘争に対抗して組合に打撃を与えることを意図したものであるといわざるを得ない。
以上を勘案すれば、本件腕章闘争が労働組合の行為として正当性に疑問があるものの、会社の一連の行動から、本件配車停止は、組合の団結を侵害し、その弱体化を企図した行為であって、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為である。 |
(3) | 救済方法について
再審査の過程において、会社が団体交渉に誠実交渉義務を果たしたことは明らかではなく、将来において同種の不当労働行為の再発の可能性が否定できない以上、今後の健全な労使関係の確立を促進する観点から救済方法として初審命令主文の文書手交を命じることが相当であり、本件腕章闘争の対抗措置としての本件配車停止が不当労働行為と判断される以上、初審命令主文は不当とはいえないので、これを改める必要はない。 |
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【参考】 | 初審救済申立日 | 平成13年3月8日(福岡地労委平成13年(不)第1号) |
初審命令交付日 | 平成15年2月9日 |
再審査申立日 | 平成15年2月17日 |