平成16年1月23日
中央労働委員会事務局審査第二課
課長    高梨 和夫
TEL 03−5403−2157
FAX 03−5403−2250

青木組・共和運送不当労働行為再審査事件
(中労委平成11年(不再)第29号)命令書交付について

 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成16年1月22日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
  再審査申立人 京都−滋賀地域合同労働組合
 (京都市伏見区小栗栖北後藤町1)組合員数 4名
  再審査被申立人 株式会社青木組(京都市南区東九条西河辺町2) 従業員数約80名
 共和運送株式会社(京都市南区東九条南烏丸町20) 従業員数約120名

II 事案の概要
 昭和57年2月9日、青木組が施工する河川改修工事現場において、共和運送の従業員Kが被災する労災事故(以下「本件事故」という。)が発生した。平成10年4月11日、Kは組合に加入した。
 本件は、青木組が、(1)平成10年4月30日、本件事故に関する組合からの団体交渉申入れを拒否したこと、(2)同年5月6日及び8日、顧問弁護士を使って組合の運営に支配介入を行ったこと、及び(3)共和運送が、同年7月27日、本件事故に関する組合からの団体交渉申入れを拒否したことが、それぞれ不当労働行為であるとして京都地労委に救済申立てのあった事案である。
 初審京都地労委は、平成11年5月20日、本件で組合が主張する事実は不当労働行為に該当しないことが明らかであるとして、組合の救済申立てをいずれも却下した。組合は、上記決定を不服として、平成11年6月3日、再審査を申し立てた。

III 命令の概要
 主文
 本件再審査申立てを棄却する。
 判断の要旨
(1) 青木組及び共和運送の使用者性について
 青木組の使用者性
 組合は、Kと青木組との間には労働契約関係はないことを自認しており、本件事故以降、Kは青木組の施工する建設工事現場で就労した事実もないことが認められる。そうすると、青木組はKの雇用主ではなく、また青木組がKの労働条件等について関与したとする事実はなく、その他に関与を認めるに足る具体的な疎明もない。
 以上によれば、青木組は労組法第7条の使用者に当たらないことは明らかであって、青木組が本件事故に関する組合からの団体交渉申入れを拒否したことは、労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たらないことは明らかである。なお、青木組が顧問弁護士を使って組合の運営に支配介入したという申立てについても、青木組は使用者に当たらないのであるから、これが労組法第7条第3号の不当労働行為に当たらないことは明らかである。
 共和運送の使用者性
(ア) 本件事故に関する資料等の提出要求に至る経緯からすると、Kは京都下労働基準監督署長に対して障害等級認定を不服として争っていることは認められるものの、共和運送に対しては、本件事故後から長期間にわたって何らの要求も行っていない。その後15年を経過した平成10年7月に至ってはじめて、組合は本件団体交渉申入れを行い、その中で本件事故に関する資料等の提出を求めたものである。
 他方、Kと共和運送の間の雇用関係に関する事実をみると、本件事故当時、Kと共和運送の間に雇用関係のあったことは認められる。しかし、Kは、共和運送が昭和58年2月25日付けで同人を退職扱いとしたことに対して特段異議を述べたことはなく、また自らの退職を前提に健康保険の任意継続被保険者申請を行っている。これらの点からすると、Kは昭和58年3月頃には既に共和運送を自己都合により退職していたものといわざるを得ない。
(イ) 上記の点を併せ考えると、Kと共和運送の間の雇用関係は昭和58年3月頃には既に終了しており、当時、同人は共和運送に対して雇用関係の存否や本件事故に関する資料等の提出問題について争っていたものでもない。そうすると、Kと共和運送の間に労働契約関係は存在せず、団体交渉義務の前提となる労使関係はないというべきである。
 以上によれば、共和運送はKとの関係において労組法第7条の使用者には当たらないことは明らかであって、共和運送が本件事故に関する組合からの団体交渉申入れを拒否したことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たらないことは明らかである。
(2) 京都市の発注者責任に関する主張について
 組合は、京都市の発注者責任を追及するためにも労災事故に関する資料等の提示が重要である旨主張するが、発注者責任の問題はあくまでも組合と京都市との間の問題であるから、それをもって共和運送が団体交渉に応ずるべきであるとはいえない。
(3) 結論
 上記判断のとおり、青木組及び共和運送が組合からの本件各団体交渉申入れを拒否したことは不当労働行為に当たらないことは明らかであり、これが組合に対する支配介入の不当労働行為に当たらないことも明らかである。
 したがって、本件で組合が主張する事実は不当労働行為に該当しないことが明らかであるとして、本件申立てをいずれも却下した初審決定は相当である。

【 参考 】
 1 本件審査の概要
  初審救済申立日 平成10年 5月 8日(青木組事件)、平成10年9月9日(共和運送事件)
  初審命令交付日 平成11年 5月20日
  再審査申立日 平成11年 6月 3日
 2 初審命令主文要旨
  本件申立てを却下する。



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