平成15年4月8日 |
中央労働委員会事務局審査第二課
課長 高梨 和夫
TEL 03−5403−2157
FAX 03−5403−2250
|
|
大阪証券取引所不当労働行為再審査事件
(中労委平成12年(不再)第56号)命令書交付について
中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成15年4月8日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
命令の概要等は、次のとおりです。
I 当事者
再審査申立人 | 株式会社大阪証券取引所(大阪市中央区) 従業員数約290名(平成12年2月現在) |
再審査被申立人 | 大阪証券労働組合(大阪市中央区) 組合員数約300名(平成12年2月現在) |
II 事案の概要
1 | 本件は、大阪証券取引所(取引所)が、大阪証券労働組合(組合)の申し入れた仲立証券株式会社(取引所において有価証券の売買取引等の媒介業務を行っていた会社)の企業再開等を議題とする団体交渉申入れを拒否したことが不当労働行為に当たるとして、救済申立てのあった事件である。在) |
2 | 初審大阪地労委は、平成12年10月26日、取引所の組合に対する使用者性を認め、本件団体交渉拒否は不当労働行為に当たるとして、取引所に対して、仲立分会組合員の雇用問題を議題とする団体交渉応諾及び文書手交を命じたところ、取引所はこれを不服として再審査を申し立てた。 |
III 命令の概要
2 | 判断の要旨
(1) | 取引所の使用者性について
ア | 仲立証券の再建策検討等に対する取引所の関与の有無・程度
(ア) | 取引所は、仲立証券の示した再建策について協議に応じ、また平成9年10月には、取引所の方から取引所が立会業務代行会社と証券会社を設立するという具体的な再建案を提示し、取引所と仲立証券の両者が具体的な再建案を策定していることが認められる。そして、この再建案に基づいて、仲立証券社長が希望退職者を募集したり、この提案にある代行会社と同趣旨で設立されたKBSが仲立証券従業員を優先的に採用している。さらに、取引所は、平成10年3月には、仲立証券の支店廃止、自主廃業という従業員の雇用問題を直接左右する仲立証券の経営方針に関する申入れまで行っている。 |
(イ) | このような取引所の対応は、仲立証券の再建策の検討について仲立証券との間で緊密な協議を行い、両者で共同して再建策を決定していたものと認められ、さらに、仲立証券の支店廃止等の経営方針に言及するなど積極的に関与していたものといえる。そして、この再建策に従って、仲立証券は退職者を募集し、取引所は仲立証券の退職者を代行会社に採用するなど、両者は相互に連携して上記再建策を実行に移していたものである。 |
|
イ | 取引所の仲立証券に対する制度面等における支配力ないし影響力の有無・程度
(ア) | 取引所の基本的な機能及び有価証券売買取引等の基本的仕組みからみて、仲立証券は制度的に取引所に依存せざるを得ない立場ないしは従属的な立場にあったものであり、取引所は仲立証券に対して、制度的にみて相当な支配力を有していた。
また、資本関係や人事面からみても、取引所は仲立証券に対する相当な支配力を有していたのであり、このような両者の関係も一つの要因となって、取引所は、一連の仲立証券の再建策検討等について積極的に関与していたのである。 |
(イ) | また、平成9年9月1日以降の急激かつ大幅な仲立手数料率の引下げ及び立会外売買制度の導入という取引所の施策の変更が、仲立証券の仲立手数料収入の大幅な減少を招来し、仲立証券の経営に大きな打撃を与えたのであって、これらの施策の変更が仲立証券従業員の基本的労働条件である賃金の削減に直接の影響を与えたというべきである。 |
|
ウ | 上記のとおり、取引所は、平成9年10月以降、仲立証券の再建策検討及び支店廃止等の経営方針について積極的に関与し、仲立証券と共同して再建策等を決定しさらにこれを実行に移していた。
そして、このような取引所の仲立証券の再建策検討等に対する積極的な関与は、仲立証券が制度面・資本面・人事面において取引所に依存せざるを得ない立場ないしは従属的な立場にあったことから、取引所が仲立証券に対して相当な支配力を有していたこと等に基づくものといえる。
以上を総合して判断するに、取引所は、仲立証券従業員の基本的な労働条件である雇用問題に対して、現実的かつ具体的な支配力を有していたということができる。
したがって、取引所は、本件における団体交渉上の当事者であり、労働組合法第7条第2号の使用者に該当する。 |
|
(2) | 不当労働行為の成否について
取引所は、本件の仲立証券の解散・従業員解雇はいずれも取引所の不当労働行為でないことは明白であるから、取引所に団体交渉を命じる意義はない旨主張する。しかし、労働組合法第7条第2号は労使間の交渉を通じて適正な労働条件・労使関係上のルールを決定するという手続保障としての意義を有する制度であるから、本件団体交渉の必要性は、仲立証券の解散等の当否とはかかわりなく存在する。 |
したがって、本件団体交渉拒否には正当な理由はなく、これを労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当するとした初審判断は相当である。 |
【 参考 】
1 | 本件審査の概要
初審救済申立日 | 平成11年 5 月12日(大阪地労委平成11年(不)第39号) |
初審命令交付日 | 平成12年10 月26日 |
再審査申立日 | 平成12年11 月 1日 |
|
2 | 初審命令主文要旨
(1) | 平成11年5月6日付け申入れの団体交渉について、媒介業務廃止に伴う媒介業務に従事していた組合員の雇用問題を議題とする団体交渉に応ずること。 |
(2) | 上記(1)に関する文書手交。 |
|