平成20年12月24日
中央労働委員会事務局第二部会担当 審査総括室 審査官 池田 稔 TEL 03−5403−2175 FAX 03−5403−2250 |
東海旅客鉄道(業務指示違反)不当労働行為再審査事件
(平成19年(不再)第68号)命令書交付について
・ 乗務点呼時等に管理者が行う試問や試問に答えられない場合の個別指導を通じて、会社が組合員を不利益に取り扱い、もって組合に支配介入したものとは認められない。
・ 試問回答集について、会社が別組合にのみ配付した事実は認められず、組合間で差別取扱いを行ったとは認められない。
・ 会社が、試問回答集の別組合への配付に抗議するとして試問回答を拒否し続けた組合員を厳重注意したことは、別組合への配付の事実が認められないのであるから、不利益取扱いには当たらない。
中央労働委員会(第一部会長 諏訪康雄)は、平成20年12月24日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。命令書の概要は次のとおりです。
I 当事者
再審査申立人
ジェイアール東海労働組合(「組合」組合員 約500名)
ジェイアール東海労働組合新幹線関西地方本部(組合員 約150名)
同新幹線関西地方本部大阪第二運輸所分会(「分会」組合員26名)
再審査被申立人
東海旅客鉄道株式会社(「会社」従業員 約2万名)
II 事案の概要
本件は、会社が、(ア)乗務点呼時や添乗時に行う試問及び試問に答えられなかった場合に行われる個別指導(「試問等」)を通じて、組合員に対して差別的な取扱いを行うとともに、組合の指名ストライキを妨害したこと、(イ)試問回答集を別組合のみに渡し組合間差別を行ったこと、(ウ)乗務点呼時の試問への回答を正当な理由なく拒否し続けたとして組合員9名を厳重注意としたこと(「本件厳重注意」)が不当労働行為であるとして、救済申立てがなされた事件である。
初審大阪府労委は、上記(ア)ないし(ウ)はいずれも不当労働行為に当たらないとして組合らの申立てを棄却したところ、組合らは平成19年12月12日、再審査を申し立てた。
III 命令の概要
1 主文
本件再審査申立てを棄却する。
2 判断の要旨
(1) 試問等を利用しての不当労働行為の有無について
会社管理者による試問等は乗務員の知識・技能レベル向上のために行われるものであり、安全運行が重要視される会社において試問等が行われることには合理性、業務上の必要性がある。
組合らは、分会のストライキ決定以降、組合員にだけ恣意的に試問等を行ったと主張するが、(ア)会社が、分会の組合員が所属する大阪第二運輸所で乗務員に対して行われている試問回数を超えて組合員に対して試問を行った事実や、組合員が組合員以外の乗務員と比して多く試問等を受けた事実は認められず、(イ)組合員に対する個別指導の契機は、会社の業務掲示物を確認しておけば回答できる内容であるのに回答できなかったこと等にあり、個別指導における会社管理者に不当な対応があったとは認められない。
したがって、会社は、試問等を通じて、組合員を不利益に取り扱い、もって組合の運営に支配介入したとはいえない。
(2) 試問回答集配付による組合間差別の該当性について
組合らは、会社が、組合員が入手した試問回答集を組合には配付せず、別組合に配付したと主張するが、会社が同回答集を作成し別組合に配付した事実を認めることはできない。そうすると、組合間差別を行ったとする組合らの主張は、その前提を欠くことになり、採用できない。
(3) 本件厳重注意について
組合員9名は、会社が試問回答集を別組合に配付したことに抗議するとして試問回答を拒否し続けたが、上記(2)のとおり、会社が試問回答集を不正に流出させたとは認められないから、これら組合員が試問への回答を拒否したことに正当な理由があったとはいえない。
したがって、試問回答拒否という業務命令違反に対して行なわれた本件厳重注意は不利益取扱いに当たらない。
【参考】
本件審査の経過
初審救済申立日 平成18年 3月24日(12号)、同年9月8日(43号)
初審命令交付日 平成19年11月29日
再審査申立日 平成19年12月12日