平成20年12月19日

中央労働委員会事務局第二部会担当審査総括室

室長榎本重雄

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Fax3−5403−2250

NTT不当労働行為再審査事件〔平成19年(不再)第52・53号〕命令書交付について

命令のポイント

会社は、11年7月1日の分割再編成に伴う組合員Aの転籍について、Aが黙示的に同意し ていたこと、Aが当時加入していた申立外X組合との間での団体交渉は尽くされていたこと等 から、Aが新たに加入した組合との団体交渉には応じられないと主張するが、Aが一貫して転 籍に同意していないこと、X組合と団体交渉も尽くされていなかったこと等から、会社が組合 からの団体交渉申入れに応じないことは労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たると判 断。

中央労働委員会第二部会(部会長菅野和夫)は、平成20年12月19日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。

I  当事者

[第52号再審査申立人・第53号再審査被申立人]

日本電信電話株式会社(以下「会社」):従業員数約3000名(17年3月1日現在)

[第53号再審査申立人・第52号再審査被申立人]

全労協全国一般東京労働組合(以下「組合」):組合員数約4000名(17年3月1日現在)

II  事案の概要等

1  本件は、会社が、11年7月1日に実施された会社の分割再編成に伴うAの転籍問題等について、組合が16年5月14日に申し入れた団体交渉に応じなかったことが不当労働行為であるとして、17年3月1日、救済申立てがあった事件である。

2  初審東京都労働委員会は、会社に対し、転籍問題等に関する団体交渉に応じなかったことは不当労働行為に当たるとして、その旨の文書交付及び履行報告を命じた。

3  会社及び組合は、これを不服として、19年9月14日、再審査を申し立てた。

III  命令の概要等

1  命令主文本件再審査申立てを棄却する。(初審命令を維持)

2  判断要旨

[1]会社からの救済申立て却下の主張について

Aが会社に在籍したとしても19年3月31日に定年退職していることになるから、本件救済申立ては却下されるべきであるとの会社の主張については、労働委員会は、現時点における事情等一切を考慮したうえで適切な救済方法を定め得るのであるから、Aが定年退職していることになるからといって、組合が申立事実について救済を求める利益を喪失することになるわけではない。

[2]転籍問題等の団体交渉申入れに応じなかったことが、労組法第7条第2号に当たるか

(1)  Aは転籍先会社への転籍に同意していたかについて

会社は、Aが転籍に黙示的に同意していたこと及び11年7月1日に転籍して以降何らの異議申立ても行っていないことから、Aの転籍問題に関する団体交渉に応じるべき使用者でないと主張するが、

ア  Aは、会社に対し、転籍日(11年7月1日)前の同年4月26日に転籍に同意できない旨の文書を提出して以降、一貫して転籍には同意できない旨述べ、Aが加入する申立外X組合は少なくとも同年8月30日(Aの転籍を問題視する最後の要求書の提出日)までは、本件転籍に同意していなかったものといえること、

イ  その後、Aは、従前加入していたX組合を脱退し(12年6月30日)、13年8月21日に組合に加入しているが、その間、会社に対し本件転籍に同意していないことの意思表示や異議申立てをしたことはなかったものの、本件転籍問題について漫然と放置するような対応をしていたとは認められないこと、

ウ  また、13年9月から14年5月までに転籍先会社と組合との間において、Aの転籍問題以外のことを含めて23回団体交渉が行われているが、このことをもって組合がAの使用者を転籍先会社と認識していたとは認めることはできず、A自身もそのように考えていなかったことは明らかであること

等から、Aは、転籍に同意できない旨の文書を提出して以降、転籍日である11年7月1日以降においても、本件転籍に同意していなかったと認められるから、「Aは、会社が『雇用する労働者』(労働組合法第7条第2号)に該当するといえる。」とした初審判断は相当である。

(2)  Aの転籍問題等に関する団体交渉申入れについて

会社とX組合との間の本件転籍問題についての団体交渉は、同組合が、Aが同意しないまま転籍を命じた場合には裁判所等で争うことになる旨述べて終了し、しかも、11年8月30日には上記(1)アのとおりの要求書を提出していることからみて、尽くされていたとみることはできない。

また、AがX組合を脱退した後1年2か月を経て加入した組合は、組合員となったAの労働条件の問題について固有の団体交渉権を有しており、Aの転籍問題はAの雇用の帰趨という労働条件の問題であるから、会社と組合との間の義務的団交事項に当たる。

さらに、会社は、X組合からの上記(1)アの要求書、組合からの13年8月の団体交渉申入れ、16年5月14日の組合からの本件団体交渉申入れ及びその後の団体交渉申入れに何ら回答をすることもなく、また、応じない理由さえ示すことなく終始し、放置し続けていた。

このような会社の行為は正当な理由なく団体交渉を拒否していると認められるから、労組法第7条第2号に当たる。

【参考】本件審査の状況

・初審救済申立日平成17年3月(東京都労委平成17年(不)第11号)

・初審命令交付日平成19年8月30日

・再審査申立日平成19年9月14日


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