平成20年11月26日

中央労働委員会事務局
第二部会担当審査総括室長榎本重雄

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モービル石油(業務変更等)不当労働行為再審査事件(平成6年(不再)第49号)命令書交付について

中央労働委員会第二部会(部会長菅野和夫)は、平成20年11月26日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。

【命令のポイント】会社が、支部との協議・合意を経ないで行った支店統廃合と組合員の業務変更を伴う配転及びその後の配転先での組合員に対する業務命令等は、組合の主張する継続する行為には当たらず、それぞれ別個の行為として判断する。したがって、申立期間を徒過した支店統廃合、業務変更を伴う配転及び業務命令等に係る申立ては却下する。また、申立期間内の組合員に対する業務命令等に係る申立ては、使用者の労務指揮権に委ねられた範囲内もので義務的団交事項には当たらず、棄却する。

I当事者

再審査申立人スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合大阪支部連合会大阪支店支部(大阪府豊中市)申立外スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合(以下「組合」)大阪支部連合会の下部組織で、初審結審当時(5年5月)の組合員数は4名(以下「支部」)。

再審査被申立人エクソンモービル有限会社(東京都港区)初審申立て当時はモービル石油株式会社(以下「会社」)と称していたが、エッソ石油(有)外4社との業務統合(12年7月)を経て、エッソ石油(有)外3社と合併(14年6月)して、現在に至っている。

II事案の概要

会社及び大阪支店(以下「支店」)が、[1]支部との協議を経ず労使合意のないまま支店統廃合(昭和61年3月1日付)を行い、支部組合員4名(A、B、C、D。以下「Aら4名」)を配転して業務内容の変更を行ったこと、[2]Aに対し、一旦同人の業務から外れると説明した業務を命じたこと、[3]C及びDを配転(同63年8月1日付。以下「63.8.1配転」)して業務変更を行ったこと、[4]Cに対し、威迫・強迫して電話を取るよう業務命令したこと、[5]Cに対し、[3]の配転後、職務明細書のその他の項目を根拠に業務を命じたこと、[6]別件申立ての報復として、Cに対し、職務明細書により業務変更して同明細書に署名を強要し、団交に応じなかったこと、[7]支店統廃合後も、支部との協議を経ない業務を命じたことが不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。

平成6年12月12日、初審大阪府労委は、支店に対する申立てを却下し、会社に対する申立てを棄却したところ、支部はこれを不服として再審査を申し立てた。

III命令の概要

主文の要旨本件再審査申立てを棄却する。
判断の要旨
(1)支店の被申立人適格

支店は法人たる会社の部分的な組織に過ぎず、不当労働行為の責任主体たる使用者には当たらないから、被申立人として認めることはできない。

(2)支店統廃合並びにAら4名の配転及び業務変更(IIの[1])

支店統廃合及びAら4名に業務変更を伴う配転を行ったことはそれぞれ別個の行為であり、その後の業務命令その他の行為とも別個の行為であって継続する行為に該当しないから、救済申立期間を徒過したものとして却下した初審命令は相当である。

(3)Aに対する業務命令等(IIの[2])

E課長による業務の減免措置とAに対する複数回の業務命令等とは別個の行為であり、複数回の業務命令等は一部を除き別個の案件に関する別個の命令等であって継続する行為に該当しないから、救済申立期間を徒過したものについて却下した初審命令は相当である。また、申立期間内の業務命令等は、AがE課長の発言後に特段の異議を述べずに当該業務を行っていること等から、同課長の発言の趣旨は「業務量の調整を図るもので、負担にならない軽度の補助的業務を含め一切の当該業務を外すものではなかった」とみられ、職務明細書の範囲内でさしたる負担になるものではないことから、不当労働行為には当たらない。

(4)C及びDの63.8.1配転及び業務変更(IIの[3])

63.8.1配転及びこれに伴う業務変更についての申立ては、救済申立期間を徒過したものとして却下すべきものと認められる。また、団交拒否の申立てについては、業務変更を伴う当該配転の当否に関して団交を求めているものであることは明らかであるから、既に棄却命令を発した別事件の申立て(当該配転に係る団交拒否)と同一内容のものであって、新たに判断を行う余地がないとして却下した初審命令の判断は相当である。

(5)Cに対する電話応接に関する威迫・強迫的な業務命令(IIの[4])

「電話の応接」がCの職責とされていたこと等から、不当労働行為とは認められない。

(6)Cに対する職務明細書のその他の項目を根拠とした業務命令等(IIの[5])

当該業務命令等の発出は、63.8.1配転以降Cの業務量の調整を図るために行ったものであって、会社が団結破壊を企図して業務命令を乱発したものとはいえないこと等から、不当労働行為とは認められない。

(7)Cに対する職務明細書による業務変更及び同明細書への署名指示並びに団交不応諾(IIの[6])

当該業務変更については、[1]職務明細書の作成及び交付自体は不当なものとは認められないこと、[2]同明細書によるCの業務は労働の種類、難易度などにおいて、同人の職位(position)から想定される業務の範囲内にとどまっていること、[3]上記[2]程度の業務内容の変更を行うことは、労務指揮権に委ねられている範囲内の問題であり、労働者との合意を要せず、また、事前協議約款の存在等の特段の事情がないから支部との事前協議を要しないものと解される。また、団交不応諾については、[1]職務明細書によるCの業務変更は義務的団交事項に当たらず、[2]Cの業務変更について事前協議や事前同意を義務づける協定が存在する等の特段の事情は認められない。したがって、いずれも不当労働行為には当たらない。

署名指示については、社内規程に基づく手続きを実行したもので、拒否した場合の制裁その他不利益取扱いの示唆を伴っておらず、Cの署名留保の後は署名を求めていないこと等から強要したまでとはいえない。また、団交不応諾については、[1]義務的団交事項に当たるとは認められず、[2]事前協議や事前同意を義務づける協定が存在する等の特段の事情は認められない。したがって、いずれも不当労働行為には当たらない。

会社が、Cの別件申立ての代理人としての行動に対して、不利益な取扱いを行ったとは認められない。

(8)大阪支店統廃合後のその他の業務命令等(IIの[7])について

これらの業務命令等はそれぞれ別個の案件に関する別個の命令等であって継続する行為には該当しないから、救済申立期間を徒過したものについて却下した初審命令は相当である。また、申立期間内の業務命令等は、指示した業務内容及び業務命令の態様、勤務状況等からすると、会社が不当な業務命令等を行ったとまでは認められないこと等から、不当労働行為には当たらない。

【参考】本件審査経過本件審査の概要

初審救済申立日平成元年7月1日及び8月19日(大阪地労委平成元年(不)第36・47号)

初審命令交付日平成6年12月12日

再審査申立て平成6年12月15日

初審命令主文要旨

(1)大阪支店に対する申立ては却下(2)会社に対する申立ては棄却


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