平成20年10月21日
中央労働委員会事務局 室長西野幸雄
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あしたばの会不当労働行為再審査事件
(平成19年(不再)第14号)命令書交付について
−本件組合掲示板の廃止は支配介入に当たる−
組合が約20年余の長期にわたって継続して使用してきた本件組合掲示板を、法人が組合と の交渉・協議を行うことなく一方的に廃止したことは、労組法7条3号の不当労働行為に該当し、法人は組合掲示板を再貸与しなければならない。
中央労働委員会第一部会(部会長渡辺章)は、平成20年10月20日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
命令の概要等は、次のとおりです。
I 当事者
再審査申立人 |
社会福祉法人あしたばの会(「法人」)(東京都文京区) |
再審査被申立人 |
全国福祉保育労働組合東京地方本部(「地本」)(東京都台東区) 組合員約1,800名(平成15年12月24日現在) 全国福祉保育労働組合東京地方本部中央支部たんぽぽ保育園分会 組合員12名(平成15年12月24日現在)(「組合」)(東京都台東区) |
II 事案の概要
1本件は、法人が(1)組合掲示板を廃止したこと、(2)郵便物・宅配物の取次ぎを拒否したこと、(3)就業規則変更に関する団体交渉における対応、(4)団体交渉中の園長の発言、(5)園長による組合批判の文書配布と職員会議等における園長の言動が不当労働行為であるとして、東京都労委に救済申立てがあった事件である。
2初審東京都労委は法人に対し、(1)組合掲示板の再貸与の具体的条件に関する協議、(2)郵便物・宅配物の取次ぎ拒否の禁止及び取次ぎの具体的条件に関する協議、(3)就業規則変更に関する団体交渉応諾、(4)文書掲示を命じたところ、法人はこれを不服として再審査を申し立てたものである。
III 命令の概要
1 主文要旨(初審命令主文を一部変更)
(1)組合掲示板を再貸与し、設置場所等の具体的条件について組合らと協議すること
(2)郵便物・宅配物の取次ぎの範囲、方法等について組合らと協議すること
(3)定年後の再雇用制度に関する規定の変更等に関して、誠実に団体交渉に応じること
(4)文書交付
(5)その余の救済申立を棄却
(6)その余の本件再審査申立を棄却
2 判断の要旨
(1) 本件組合掲示板の廃止について(労組法7条3号の不当労働行為に該当)
(1)本件組合掲示板は昭和58年3月に現園舎が建設されてから平成15年5月の廃止までの約20年余の長期にわたって継続して使用されてきており、その存在は、本件労使間における慣行的事実として不当労働行為制度による保護の対象となり得ること、(2)組合掲示物の内容等によって園の運営及び施設管理に具体的な支障が生じていたとは認められず、また、本件組合掲示板の廃止をめぐる園長の対応は、組合らとの交渉・協議を回避しようとしたものであって適切な対応であったということはできないから、本件組合掲示板の廃止に合理性があったということはできないこと、(3)組合掲示板をめぐる園長の対応は、組合の園長に対する批判活動を封ずることを意図し、かつ組合掲示板の存在そのものを否定しようとする意図があったと推認できることを併せ考えると、本件組合掲示板の廃止の真の目的は、園の運営上、施設管理上の必要性を理由とするものというより、園長の組合掲示板の存在を否定しようとする意図のもとに本件組合掲示板を一方的に廃止し、これによって組合らの園に対する批判活動を封じることによって労使関係において優位に立とうしたものであり、職員に対する組合らの影響力を排除することにあったといわざるを得ない。よって、本件組合掲示板の廃止は、組合らの弱体化を企図したもので、組合らの組織・運営に対する支配介入に該当する労組法7条3号の不当労働行為である。
(2) 郵便物・宅配物の取次ぎ拒否について(労組法7条3号の不当労働行為に該当)
園が園あてに届けられた個人や組合の信書・荷物の受取を拒否することを通告したことは、従前の慣行を変更するものであるにもかかわらず、園が組合らと交渉・協議を行おうとした事実は認められない。当時、法人は本件組合掲示板をめぐり組合らと深刻な対立状態にあったことからすると、上記通告は組合らの活動を抑制するために行われたものと推認できる。よって、郵便物・宅配物の取次ぎ拒否は、組合らの弱体化を企図したもので、組合らの組織・運営に対する支配介入に該当する労組法7条3号の不当労働行為である。
(3) 就業規則変更を議題とする団体交渉における法人の対応について(労組法7条2号の不当労働行為に該当)
法人は就業規則の変更に際し、再雇用制度に関する規定を削除する理由等について十分な説明を行ったものとはいえず、また、十分な説明を行わないまま協議未了前に就業規則変更の届出を行い、さらに届出後の団体交渉においても組合らの抗議にとりあうことはなく、団体交渉を軽視したものといえる。このような法人の一連の対応は、不誠実な交渉態度に終始したものであって、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
(4) 団体交渉中の園長の発言について(労組法7条2号の不当労働行為に該当)
園長が労働時間制度に関する質疑応答の中で、組合員に対し「あと5年くらいのことだからどうでもいい」と発言したことは、組合の質問に対し真摯に対応したものとは到底いえない不誠実な交渉態度であって、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
(5) 園長による組合批判の文書配布等について(労組法7条3号の不当労働行為に該当)
園長の職員会議での発言及び文書配布は、非組合員を含む園の全職員に向けて組合らの活動、不当労働行為救済申立てを非難することにより、組合の行動を牽制することを意図したものであり、組合らの組織・運営に対する支配介入に該当する労組法第7条第3号の不当労働行為である。
【参考】
1本件審査の概要
初審救済申立日平成15年12月24日(東京都労委平成15年(不)第112号)
初審命令交付日平成19年3月15日
再審査申立日平成19年3月16日
2初審命令主文要旨
上記IIの2のとおり