平成20年1月31日

中央労働委員会事務局審査課
特定独立行政法人等審査官
下 村 直 樹
TEL 03−5403−2166
FAX 03−5403−2250

日本郵政公社京都中央郵便局事件(平成17年(不)第2号の2)、日本郵政
公社近畿支社事件(平成18年(不)第2号の2)及び日本郵政公社山科郵便
局事件(平成18年(不)第3号の2)命令書交付について

《非常勤職員採用予定者について日本郵政公社に労組法上の使用者性を認定した事例》

【命  令  の  ポ  イ  ン  ト】

労組法第7条の使用者は、かならずしも現に労働者を任用しているものに限られるわけではなく、その者との間に任用関係の成立する可能性が、現実的かつ具体的に存するものも含まれると解され、その判断に当たっては、労働関係の実態を踏まえて判断する必要があり、公社が組合のビラ配布の制止を行った時点の公社と非常勤職員採用予定者である組合員Kとの関係においては、公社は労組法第7条の使用者に該当する。

中央労働委員会(会長 菅野和夫)は、標記事件に係る命令書を被申立人には平成20年1月29日、申立人には同月30日に交付したので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者

申立人   京都−滋賀地域合同労働組合(京都府京都市)
組合員 3名(平成19年8月9日現在)
     
被申立人   郵便事業株式会社(東京都千代田区)
職員数 約10万名(平成19年10月1日現在)
(申立て当時は日本郵政公社(職員数約27万名(平成18年3月現在))。公社解散に伴い被申立人の地位を承継)

II 事案の概要

申立人京都−滋賀地域合同労働組合(以下「組合」)は、国及び日本郵政公社(以下「公社」)が共同して、[1]組合が行ったビラ配布を妨害したこと(平成17年12月19日申立て)、[2]組合の平成17年12月22日付け及び同月27日付けの団体交渉申入れを拒否したこと(平成18年2月15日申立て)、[3]組合が求めた公社の就業規則のコピーの手交に応じなかったこと及び組合の就業規則の書き写しに制限を加えたこと(平成18年2月21日申立て)が不当労働行為であるとして、国及び公社を被申立人として当委員会に救済を申し立てた。

本件は、上記事件について、被申立人ごとに審査を分離した公社に係る事件である。

III 命令の概要

1 主文
本件各申立てを棄却する。

2 判断の要旨

(1) 日本郵政公社京都中央郵便局事件(平成17年(不)第2号の2)

ア 管轄及び被申立人適格

公社は、ビラ配布行為が行われた平成17年12月9日時点において、組合の組合員Kは公社の職員ではなく組合には公社職員はいなかったのであるから、本件の申立ては管轄を誤り、また、公社は被申立人適格を有さず不適法なものであると主張するので、以下検討する。

[1] 労組法第7条の使用者は、かならずしも現に労働者を任用しているものに限られるわけではなく、その者との間に任用関係の成立する可能性が、現実的かつ具体的に存するものも含まれると解され、その判断に当たっては、労働関係の実態を踏まえて判断する必要がある。

[2] Kの公社への採用については、国家公務員法の任用関係の規定が適用され、公社が進めていた採用のための諸手続きは、採用発令を支障なく行うための準備手続き(事実上の行為)にすぎないものであったと認められる。しかしながら、公社が組合のビラ配布の制止を行った平成17年12月9日時点においては、Kは同月21日から山科郵便局において採用される予定となっており、これを前提に、既に同月4日には1日のみ公社に採用された上で事前訓練を受け、同月21日の初出勤の日時の通知を受けていたこと等を踏まえると、Kは、同月9日時点において、同月21日から公社に採用されることが確実なものとなっていたと言うことができ、公社との任用関係が成立する可能性が現実的かつ具体的に存していたものと認められる。

[3] したがって、平成17年12月9日時点の公社とKとの関係について、上記のような事実の限りにおいて、公社は労組法第7条の使用者に該当するものであったと認められることから、本事件に係る申立てに係る処分は労組法第25条第1項に規定する公社職員の労働関係に係る処分に該当するものと解されるので管轄を誤ったものではなく、公社は本事件に係る申立ての被申立人適格を有し、本事件に係る申立ては不適法なものであるとは認められない。

イ 不当労働行為の成否について

公社によるビラ配布の制止行為は、Kが京都中央郵便局敷地内で行ったビラ配布に対して施設管理上の必要性から行われたものであり、組合が主張するような意図的な組合活動の妨害や組合潰しのために行われたものとは認められないことから、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するものとは認められない。

(2) 日本郵政公社近畿支社事件(平成18年(不)第2号の2)

組合の平成17年12月22日付け及び同月27日付けの団体交渉申入れに対して、組合から申入れのあった日時では大阪の近畿支社でなければ開催できないとして京都市内の郵便局では開催しなかった公社の対応は不合理なものではなく、労組法第7条第1号、第2号及び第3号の不当労働行為には該当しない。

(3) 日本郵政公社山科郵便局事件(平成18年(不)第3号の2)

公社が組合からの就業規則のコピーの交付要求に公社が応じなかったことは、公社における一般的な取扱いを踏まえて他の職員と同様の取扱いをしたというにすぎないものであり、また、就業規則の交付に関する公社の対応に組合間差別があったとは認められない。さらに、公社がKの就業規則の書き写しに制限を行ったことは、組合が主張するような不当なものであったとは認められず、また、他の労働組合の組合員の入局の取扱いについても、組合が主張するような事実は認められない。

したがって、このような公社の行為は、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為には該当しない。

(4) 以上のとおりであるので、本件各申立ては、いずれも不当労働行為に当たらないことから、主文のとおり命令する。

〜以上〜


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