平成20年1月30日

中央労働委員会事務局
第一部会担当審査総括室
室 長   西野幸雄
Tel 03−5403−2157
Fax 03−5403−2250

長栄運送不当労働行為再審査事件〔平成17年(不再)第39号〕
再審査命令書交付について

―配車差別問題に関する団交応諾命令―

会社が、トラック乗務員である組合員に対する配車差別等に関する組合の団交申入れに、組合員が以前所属していた別組合との合意により解決済みであるとして応じなかったことは労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。

中央労働委員会第一部会(部会長 渡辺章)は、平成20年1月29日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。

命令の概要等は、次のとおりです。

1  当事者

再審査申立人:関西合同労働組合  組合員約130名(平成16年10月19日現在)
関西合同労働組合兵庫支部  組合員約90名(同上)(以下両者を併せて「組合」)
組合員A

再審査被申立人:株式会社長栄(以下「会社」)

       

2  事案の概要等

(1)  本件は、貨物輸送業等を営む会社が、(1)組合員Aに対して配車等において差別取扱いを行ったこと、(2)組合が申し入れた団体交渉(以下「団交」)に、Aが組合に加入する前に所属していた別組合の分会(以下「建交労分会」)との間で合意された平成11年11月25日付け合意(以下「平成11年合意」)によって既に解決済みであるとして応じなかったことが不当労働行為であるとして、平成16年1月13日、救済申立てがあった事件である。

(2)  初審兵庫県労委は、平成11年合意はそれまでの労使紛争をすべて解決する趣旨で締結されたものと解するのが相当であるとして、平成15年9月29日付け要求書及び同年10月27日付け要求書記載の事項のうち、平成11年合意後における労使間の諸問題についての団交応諾を命じ、その余の救済申立てを棄却した。

(3)  組合は、この初審命令を不服として、平成17年5月23日、再審査を申し立てた。

3  命令の概要等

(1)  命令主文要旨(初審命令主文一部変更)

ア  配車差別による賃金減額、賃金体系変更等による賃金減額及び一時金の支払に関する団交応諾

イ  平成10年4月及び平成12年6月の賃金体系変更等に係る救済申立ての却下

ウ  その余の本件救済申立て及び本件再審査申立ての棄却

(2) 判断要旨
ア 本件団交拒否について

(ア)  平成11年合意書において円満解決するものとして明記されている労使紛争は、「本書面記載の会社における労使紛争」と定められているのであるから、特段の事情の存在しないかぎり、その明記された労使紛争の範囲を超えて、同合意書成立以前の、そこに記載されていない一切の労使紛争を解決するものと解釈することは相当ではない。

他方で、建交労分会は平成11年合意の後にも、平成9年1月以降の配車差別について会社に繰り返し是正を求め、抗議を行い、公平な配車について会社と合意書を交わすなどしているのであって、労使双方とも、平成11年合意によって、配車問題を含めてそれ以前の労使間における問題がすべて解決したものとみなしていなかったことは明白である。

以上からすると、平成11年以前の諸問題が団交申入れ当時においてすべて解決済みであったといえないことは当然であるから、本件団交拒否には正当な理由があったということはできず、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。

(イ)  本件労使間においては、初審命令交付後、配車差別や賃金等労働条件に関する問題について団交が実施され、また神戸地裁判決に基づいて配車差別に係る金員の支払もされていることから現時点での団交の必要性についてみると、「平成9年からの配車差別による賃金の減額」「平成15年年末一時金要求の件、平成12年年末一時金から平成14年年末一時金までの継続協議の合意の件、平成8年夏季一時金から平成12年夏季一時金までの就業規則所定の支給条件による額と支払済み額との差額の支払の件」についてはいまだ解決をみておらず団交を命ずるべき救済利益は存在する。

イ 本件配車差別と不利益取扱いの成否について

平成15年のトラック乗務員5名の賃金の年額をみると、非組合員と労働組合所属者との間には明白な賃金の格差が存在しており、本件配車差別による賃金格差を生じるような業務配置の必要性等について合理的理由は認められないことから、本件配車差別は、Aの労働組合所属ないしその活動を理由とするものであると推認できる。

しかしながら、平成15年及び平成16年における配車差別については、神戸地裁判決に基づく強制執行によってその実損が回復されていることから、本件配車差別にかかる問題については、もはや是正を命ずるべき救済の利益は失われており、本件配車差別をめぐる救済申立てについては棄却を免れない。

ウ 賃金体系の変更等と不利益取扱いの成否について

平成10年4月及び平成12年6月の賃金体系の変更等に関する救済申立てについては、本件救済申立日の1年前である平成15年1月13日前の事項であるから、申立期間(労組法第27条第2項)を徒過したものとして却下を免れない。

エ Aの車両交換に関する不利益取扱いの成否について

Aの車両に関しては、平成17年8月3日、会社は新車を購入して同人の車両とし、同人は翌4日から同車両に乗務しているのであるから、この問題についてはすでに解決済みであり、組合の再審査申立ては棄却を免れない。

【参  考】

○  本件審査の状況

・ 初審救済申立日  平成16年1月13日(兵庫県労委平成16年(不)第1号)
・ 初審命令交付日  平成17年5月12日
再審査申立日 平成17年5月23日


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