平成19年4月20日

中央労働委員会事務局
 第三部会担当審査総括室
  審査官 高橋孝一 電話 03-5403-2265
 fax.  03-5403-2250

工業所有権協力センター 不当労働行為再審査事件
(平成18年(不再)第55号)命令書交付について

中央労働委員会第三部会(部会長 赤塚信雄)は、平成19年4月20日、
標記事件に係る命令書を当事者に交付したので、お知らせします。

I 当事者

再審査申立人 全労協全国一般東京労働組合(以下「組合」という。)
 組合員4,000名(平成18年12月1日現在。以下元号省略。)
再審査被申立人 再審査被申立人 財団法人工業所有権協力センター(以下「財団」という。)
 特許庁の審査・審判業務への協力事業などを主たる業とする。

II 事案の概要

本件は、財団が(1)組合員A及び同Bらを15年3月31日付けで嘱託員雇止めとしたこと、(2)同人らの功労金を減額したこと、(3)14年及び15年の労働者代表選挙における組合員候補者への得票妨害が不当労働行為であるとして、15年10月24日に救済申立てがあった事件である。
初審東京都労委は、15年の同選挙における財団の行為を不当労働行為と判断して文書掲示を命じ、14年の同選挙に係る申立てを却下(期間の途過)し、その余の申立てを棄却したところ、組合は、初審命令が棄却した嘱託員雇用契約の更新に係る申立てについてのみ、当委員会に再審査を申し立てた。

III 命令の概要

1 主文

再審査申立てを棄却する。

2 判断の要旨
(1) 両名の組合加入の事情

Aは、14年度当初に特許庁から同人担当の業務の発注停止を受け、14年7月末頃、財団から雇用継続が難しいと言われた後に組合加入し、Bは、13年10月に同庁から発注停止を受け、15年1月21日に財団から雇止めを示唆された後の同月下旬に組合に加入したことから、財団は、両名の組合加入前から業務遂行能力を問題視し、雇止めも検討していたことがうかがえる。

なお、Aの組合活動は14年8月29日の団体交渉(以下「団交」という。)及び同年11月16日の折衝以外にはうかがえず、財団がこれを嫌悪した事情も認められないから、組合の主張する、組合弱体化を図ったものとの主張は、直ちには採用し難い。

(2) 両名の雇止め理由について

ア Aについて

組合は、Aの雇用継続は、適性テスト合格の伝達と翌年度の業務設定票が交付された事実からみて既に決定していたにもかかわらず、15年2月25日にBのフレックスタイム制に関する要求が雇止めの契機になったと主張する。しかし、財団は14年12月にAに特許庁あての報告書作成を指示し、Aは財団の指導を受けて同報告書を提出したが、財団は2月3日にAの能力に問題ありとの評価をしていること、業務設定票交付の時期は同年1月22日であるところ、この時期は財団の主幹がAら主席部員と相談して翌年度業務量を決める最中であったこと、財団は、業務設定票をAに「仮のもの」として交付していることからみて、同票交付の時点ではAの雇用継続は未定だったと認めるのが相当である。

以上から、Aの雇止めは、特許庁から業務の発注を受けられる見込みが立たなかったことが理由であると考えられる。

イ Bについて

組合は、Bの雇用継続は15年3月までの報告書で検討されるはずだったのに、財団がBのフレックスタイム制に関する要求を嫌悪して雇止めを行ったと主張する。しかし、財団は、雇用継続の可否は、同年2月末までの実績をもって同年2月の役員会で決定される旨Bに伝えていたことから、組合の上記主張は採用できない。また、財団は、Bの業務水準が低いことから担当業務を替えた後も業務の遅れなどを指摘・指導をしており、15年1月21日に雇止めを示唆する以前から、前記役員会についてBに伝えていたことから、財団はBの雇用継続の判断を念頭に業務遂行状況を管理していたのであって、同人の雇止めは、異動後の業務実績を総合的に判断した結果とみるのが相当である。

組合は、Bの業務遅延はM主幹の指導方法やいじめに起因するとも主張するが、M主幹が不慣れな分野に従事していたBの業務の適正さを確保しようとしたことには合理性が認められ、Bの業務量を半数程度に抑えて一定の配慮のもとに指導したのだから、組合の主張は採用できない。

3 本件雇止めに係る財団の組合への対応

組合は、両名の雇止めが団体交渉権を否定した形で行われたと主張する。

しかし、Aに関し、財団は、14年8月29日の団交で雇用継続の可否は未定だと説明し、適性をテストした上で判断すること、今後問題があれば相談してほしいと述べたにとどまり、Aの処遇を事前に組合に通知することを約束したり、その旨の合意を交わしていないから、財団が本人通告前に組合に連絡しなかったことが組合無視であるということはできない。

Bに関しては、財団が15年2月19日の団交申入れを受けながら、同25日にBの雇止めを決定して本人のみに通告したことは好ましい対応とはいえないが、3月13日の団交で雇止め理由等を説明し、同24日には回答資料を渡しているから、組合を無視したり、団体交渉権を否定したとまでいうことはできない。

【参考】

1 本件審査の概要 初審救済申立日 平成15年10月24日
初審命令交付日 平成18年8月17日
再審査申立日 平成18年9月1日(労)
2 初審命令主文要旨 上記II2のとおり

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