平成19年3月28日    
中央労働委員会事務局
第一部会担当審査総括室
審査総括室長   西野幸雄
Tel 03-5403-2157
Fax 03-5403-2250

田尻町不当労働行為再審査事件
〔平成18年(不再)第6号〕再審査命令書交付について

   中央労働委員会第一部会(第一部会長   渡辺章)は、平成19年3月27日、標記事件の再審査命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。
   命令の概要等は、次のとおりです。


当事者
再審査申立人 大阪自治労連・公務公共一般労働組合(「組合」)
組合員99名(平成18年10月11日現在)
再審査被申立人 田尻町(「町」)
2   事案の概要等
(1)    町は、申立外社会福祉法人田尻町社会福祉協議会(以下「社協」)に給食事業を委託実施していたが、食中毒発生を契機として同事業の委託が廃止され、これに伴い、Aら社協の給食事業担当として雇用された臨時職員が解雇された。Aは、組合に加入し、組合は町に対して雇用者責任を果たすことを求めて団体交渉(以下「団交」)を申し入れたが、町はAの使用者には当たらないとしてこれを拒否した。
   本件は、この町による団交の拒否が不当労働行為に該当するとして、平成16年3月11日、救済申立てのあった事件である。
(2)    初審大阪府労委は、町が社協を支配していたとはいえず、また、町が、Aの社協への採用、労働条件及び解雇を現実かつ具体的に支配・決定したとは認められないから、町は、Aとの関係においては労働組合法(以下「労組法」)7条の使用者とはいえないとして、平成18年1月20日付で救済申立てを却下した。
(3)    組合は、この初審命令を不服として、平成18年2月6日、再審査を申し立てた。
(4)     争点
[1]    町は、Aが加入している組合との関係において、社協と並び労組法7条の使用者に該当するか(争点1)
[2]    [1]が肯定される場合に、町が団交に応じなかったことが不当労働行為に当たるか(争点2)
3   命令の概要等
(1) 命令主文要旨
本件再審査申立てを棄却する。
(2) 判断要旨
   町が労組法7条の使用者に該当するか(争点1)
(ア)    社協は、社会福祉法に基づき設立された社会福祉法人であって、町とは独立した法人格を有する法的主体であり、本件給食事業にあっては町と社協の役割分担が明確になされ、給食事業の運営については、社協が自らその内容等を決定して、Aら臨時職員を具体的に指揮命令して実施しているのであって、町が社協の独立性が否定される程度にまで細部にわたって具体的な指示を行っているとか、町が責任を回避するために社協を利用しているなどの実態が存するということはできない。
   また、町は給食事業の立上げ作業を担当しているが、そのゆえに直ちに労組法7条の使用者であるとはいえない。そして、給食事業の立上げを担当した町の職員が社協に派遣されているが、同人は、社協に雇用される職員として事務局長等上司の指示に従って業務に従事していたのであって、町が同人を直接指揮したとか、同人が給食事業について町のために業務遂行していたと認めるに足る事実はない。
(イ)    Aに対して、町が臨時職員として採用する旨の意思表示をした事実は認められず、採用に関する意思の合致があったとはいえない。また、町の秘書課長の電話を事実上の採用行為ということはできず、その他、町による何らかの採用行為が行われたことを認めるに足る疎明はない。Aは遅くとも平成14年頃までには、社協が実施している給食事業に従事するものとして社協に雇用されていることを認識していたのであり、Aが町に採用された、あるいは、町との間において雇用関係があったものということはできない。
(ウ)    Aら臨時職員は雇用通知書に従って就業していたのであり、Aらの労働条件を決定していたのは社協であるというべきであって、町がAらの労働条件を決定していたということはできない。
(エ)    社協による本件給食事業の受託廃止の決定は、理事会及び理事・評議員会という社協の意思決定の場で、社協自らの判断によって行われ、Aら臨時職員に対する解雇は、この給食事業受託廃止の決定に伴って行われたものと認められ、町がAらを解雇させたと認めるべき事情は存しない。
(オ)    町が、社協に対してその組織の面において、また、事業運営の面において、支配していたということはできない。
(カ)    以上のとおり、町は社協の組織、事業、給食事業のいずれをも支配していたとはいえず、また、町がAの労働条件及び解雇を現実的かつ具体的に支配していたとは認められず、したがって町がAに対して労組法7条の使用者であることを肯定することはできない。
   町が本件団交申し入れに関して労組法7条の使用者に該当しないことは前記アで判断したとおりである。したがって、争点2について判断するまでもなく、本件再審査申立ては棄却を免れない。

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