(ア) |
社協は、社会福祉法に基づき設立された社会福祉法人であって、町とは独立した法人格を有する法的主体であり、本件給食事業にあっては町と社協の役割分担が明確になされ、給食事業の運営については、社協が自らその内容等を決定して、Aら臨時職員を具体的に指揮命令して実施しているのであって、町が社協の独立性が否定される程度にまで細部にわたって具体的な指示を行っているとか、町が責任を回避するために社協を利用しているなどの実態が存するということはできない。
また、町は給食事業の立上げ作業を担当しているが、そのゆえに直ちに労組法7条の使用者であるとはいえない。そして、給食事業の立上げを担当した町の職員が社協に派遣されているが、同人は、社協に雇用される職員として事務局長等上司の指示に従って業務に従事していたのであって、町が同人を直接指揮したとか、同人が給食事業について町のために業務遂行していたと認めるに足る事実はない。 |
(イ) |
Aに対して、町が臨時職員として採用する旨の意思表示をした事実は認められず、採用に関する意思の合致があったとはいえない。また、町の秘書課長の電話を事実上の採用行為ということはできず、その他、町による何らかの採用行為が行われたことを認めるに足る疎明はない。Aは遅くとも平成14年頃までには、社協が実施している給食事業に従事するものとして社協に雇用されていることを認識していたのであり、Aが町に採用された、あるいは、町との間において雇用関係があったものということはできない。 |
(ウ) |
Aら臨時職員は雇用通知書に従って就業していたのであり、Aらの労働条件を決定していたのは社協であるというべきであって、町がAらの労働条件を決定していたということはできない。 |
(エ) |
社協による本件給食事業の受託廃止の決定は、理事会及び理事・評議員会という社協の意思決定の場で、社協自らの判断によって行われ、Aら臨時職員に対する解雇は、この給食事業受託廃止の決定に伴って行われたものと認められ、町がAらを解雇させたと認めるべき事情は存しない。 |
(オ) |
町が、社協に対してその組織の面において、また、事業運営の面において、支配していたということはできない。 |
(カ) |
以上のとおり、町は社協の組織、事業、給食事業のいずれをも支配していたとはいえず、また、町がAの労働条件及び解雇を現実的かつ具体的に支配していたとは認められず、したがって町がAに対して労組法7条の使用者であることを肯定することはできない。 |