ア |
本件腕章着用就労の経緯
会社は、平成14年10月16日、構内移送業務への従事を余儀なくされたA組合員に対し、3か月をめどに代替車両を探す旨述べ、同年12月6日以後の団交においても、その旨を表明したものの、組合が腕章着用就労を決定した同15年5月10日までの間の長期にわたり、車両購入を実現することができず、輸送業務への復帰時期も明示しなかったのであるから、組合が抗議の意思を示そうとしたことについては理解できなくない。しかし、A組合員の賃金の取扱いについては相当の配慮が払われており、また、会社は、当該車両購入問題については5回にわたり団交に応じ、購入の遅延の事情等についても相応の説明をしているといえる。 |
イ |
会社の腕章着用就労への対応
本件腕章着用就労時において、会社には、就業規則上腕章着用就労を明確に禁止する規定はなかったが、会社の就業規則には業務に関係のない行為により職場規律が乱されることを防止するための規定が設けられており、組合員が所属する新淀川営業所の運転手に適用される賃金規則には、争議行為その他労働組合活動により就労しなかった場合、その期間の給与は一切支給しないと定められており、同規定は就労時間中の組合活動を認めない趣旨であると解される。また、会社は、腕章着用による就労に際し、平成12年11月から同13年6月にかけて組合員が腕章着用就労した際には、その都度、腕章着用就労を認めない旨の「撤去通告書」を手交し、これを禁止することを通告し、さらに、同15年1月にA組合員が車両購入問題に関して腕章を着用した際には、会社は、同人の就労を拒否し、同年5月13日には、腕章着用就労に対して出勤停止処分も辞さない旨記載した通告書(以下「5.13通告書」)を組合員に手交するなどの措置を採っていた。以上からすると、会社は就労時間中の腕章着用を許容していたとはいえない。 |
ウ |
本件腕章着用就労について
本件腕章の形状及び運転業務に従事する組合員らの就労の態様等に照らすと、本件腕章着用就労は、組合員らの就業場所であるB社構内及び配送先のB社の営業所や荷受先における第三者に対して、会社の労使間で紛争が生じていることや、労使関係が良好でないとの印象を与えるおそれがあったものといわざるを得ない。また、会社はB社の専属輸送会社であり、以前、組合員らの腕章着用就労について、B社からクレームを受けたことがあったのであるから、本件腕章着用就労について、B社との取引に影響が生じるおそれがあったことは否定できない。そして、B社が、その構内における腕章着用就労に関しクレームをつけることについては、社会通念上不当とはいえない。そうすると、組合員が腕章を着用して就労することについては、業務運営への具体的、実際的な支障を生じるおそれがあったものである。
また、本件腕章着用就労は、その経緯、会社の就業規則等に照らし、会社が求める誠実な労務提供義務と支障なく両立するとは評価できないものである。 |
エ |
小括
上記アないしウの事情を総合的に勘案すると、組合が行った就労時間中の本件腕章着用は組合活動として相当な限界内で実行されたものとは認められないので、正当な組合活動とは言い難い。 |