III 命令の概要 |
〔主文〕 |
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初審命令主文第1項を取り消し、これに係る救済申立てを棄却する。
第46号事件再審査申立人の本件再審査申立てを棄却する。 |
〔判断の要旨〕 |
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3.18要求書記載の要求事項に係る団体交渉について |
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(1) 平成14年4月24日の団体交渉(4.24団交)
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団体交渉における会社の対応をみると、会社は、組合要求事項及び分会要求事項について項目別に相当程度具体的に回答し、このことをめぐって組合との間で質疑応答が行われ、会社が会社の実情や考え方を述べるなどかなりの程度協議していることが認められる。そうすると、会社の回答が必ずしも組合の意に沿うものでなかったとしても、会社は組合との間で実質的な交渉を行っているというべきである。したがって、4.24団交での会社の対応が不誠実であったとはいえない。 |
(2) 協定書締結の合意の有無
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4.24団交において、組合は、分会要求事項の5項目についての会社の回答を要約して読み上げた上、協約書作成のため「後日、連休明けに会社に協定書の案文を送ります。ファックスで送りますので、送った中で文言を調整しましょう」と述べたのに対し、会社は協定書に調印するかどうかも含めて検討する旨の回答をしていること及びこれに対し組合から特段の異議が示された証拠はないことを併せ考えると、分会要求事項の5項目について、組合と会社の間に合意が成立していたということはできない。 |
(3) 平成14年5月16日の団体交渉(5.16団交)
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会社は団体交渉において、組合の質問に対し、労働時間等については1週間の労働時間は40時間であること、従業員の時間管理はコンピューター管理であることなどを具体的に回答し、これに対する組合の質疑にも対応している。 |
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また、協定書については、組合と会社間において、4.24団交で協議した事項について未だ協定書の案文に対する合意が成立していない状況下で、組合が4.24団交において会社側に連休明けに協定書の案文をファックスで送る旨述べていたにもかかわらず、これを履行しなかったため、会社が5.16団交に先立って協定書(案)の内容について検討することができず、このため、5.16団交の場では組合提示の協定書案を持ち帰る対応を行ったものと認められる。したがって、5.16団交の場において、協定書を締結しなかった会社の対応を不誠実であるということはできない。 |
(4) 平成14年7月11日、7月23日、9月19日の団体交渉(7.11団交、7.23団交、9.19団交)
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会社は4.24団交及び5.16団交において組合の団体交渉申入れに実質的に応じ、同年5月29日付けで、組合に対し会社の提案として確認書(案)を送付し、組合の要求事項に対し合意形成のための対応を行っており、組合と同項目について合意すれば文書化する意思があったことが認められる。にもかかわらず、組合は卒然として街頭宣伝活動を開始し、その後も会社側の中止要請を無視して同活動を行い、同活動は、会社ないしB社長らについて第三者に誤った情報を与えるものであった上、B社長の私生活の静穏を著しく侵害する態様のもので、しかも多数回にわたるものであった。そのため、会社は団体交渉において、組合の街頭宣伝活動について先議することを提案し、組合はこれを了承している。これらの事情からすれば、会社が、組合の街頭宣伝活動に対し態度を硬化させ、7.11団交等の3回の団体交渉において、最優先の議題としてB社長の自宅周辺における同活動の中止と謝罪を求め、これが実現しない限り、組合の要求事項の交渉には入らないとし、これらを組合が拒否したために組合の要求事項について交渉に至らなかったとしても、この一事をもって会社の対応を団体交渉の拒否ないしは不誠実な交渉態度と評価することはできない。 |
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2 |
Aに対する雇い止め等について |
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Aが勤務時間の減少という不利益な取扱いが開始されたとする時期は平成14年4月ないし5月であり、また、一方的に雇用契約の終了を通告されたとする時期は同年11月22日であることが認められるが、会社がAの組合加入の通知を受けたのは同月25日であり、Aに対してこのような取扱いをするに至る以前から、同人が組合員であるが故にあるいは同人の正当な組合活動の故に上記取扱いをなしたとみることは困難である。したがって、その余のことを判断するまでもなく、この点に係る組合の救済申立てを棄却した初審判断は相当である。 |
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3 |
Aの雇い止め等に関する団体交渉について |
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Aの雇止め等に係る団体交渉において、会社は同人の雇用を継続しないという会社の見解・理由について具体的に説明し、2回にわたる交渉で、会社と組合間において具体的な主張と応答が行われていること及びその他当該交渉の過程において会社が不誠実な対応をしたことを認めるに足りる証拠はないことからすると、同団体交渉における会社の対応を不当労働行為であるということはできない。よって、この点に係る組合の救済申立てを棄却した初審判断は相当である。 |