平成19年1月23日
中央労働委員会事務局
  第三部会担当審査総括室
    室長 藤森和幸
 Tel 03(5403)2172
 Fax 03(5403)2250


大阪府・大阪府教育委員会不当労働行為再審査事件
(平成17年(不再)第88号)命令書交付について


 中央労働委員会第三部会(部会長 赤塚信雄)は、平成19年1月23日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。命令の概要は、次のとおりです。

I 当事者

再審査申立人 大阪教育合同労働組合
(組合員数約340名(平成17年6月1日現在))
再審査被申立人 大阪府(大阪市中央区)
大阪府教育委員会(同上)

II 事案の概要

  1.  本件は、大阪府(以下「府」)及び大阪府教育委員会(以下「府教委」)が、平成15年10月28日付け(以下、平成の元号省略)で大阪教育合同労働組合(以下「教育合同」)からなされた16年度における非常勤職員(特別職の地方公務員である非常勤特別嘱託員、非常勤講師等)の報酬引上げに関する団体交渉申入れに対して、(1)誠実に団体交渉を行わず、一方的に団体交渉を打ち切ったこと、(2)16年3月3日付けでなされた団体交渉再開申入れに応じなかったこと等が不当労働行為に当たるとして、教育合同が、16年5月18日に、大阪府労働委員会(以下「大阪府労委」)に申し立てた事件である。
  2.  大阪府労委は、教育合同が、地方公務員法(以下「地公法」)の適用される職員と労組法の適用される労働者(本件非常勤職員)の双方を構成員とするいわゆる「混合組合」であって、両者のうち、地公法の適用される職員が主体となっているので、労組法の適用される構成員個人への不利益取扱い(労組法第7条第1号及び第4号)に関する申立人適格は認められるが、団体交渉拒否及び支配介入(同法第7条第2号及び第3号)に関する申立人適格は認められないとして、17年11月8日に教育合同の申立てを却下する決定をし、同月30日に決定書を交付した。教育合同は、これを不服として、同年12月12日に再審査を申し立てた。

III 命令の概要

1 主文
  (1) 初審決定中、府に対する救済申立てを却下した部分を取り消し、同部分にかかる救済申立てを棄却する。
  (2) その余の本件再審査申立てを棄却する。
2 判断要旨
  (1) 教育合同の申立人適格について
     教育合同のような混合組合も、労組法の適用される構成員に関わる問題については、労組法上の権利を行使することができ、労組法第7条各号の別を問わず申立人適格を有するものと解するのが相当である。このように解しないと、労組法の適用される教育合同の構成員は、組合加入の自由が保障されているにもかかわらず、自らの労働条件を労組法上の使用者に対する団体交渉により解決する手段を持ち得ないこととなり、不当労働行為救済制度の本来の趣旨である労働者の団結権の保護及び労働組合選択の自由の観点からして著しく妥当性を欠くこととなるからである(17年11月16日中労委16年(不再)第61号門真市・門真市教育委員会事件決定、18年10月4日中労委17年(不再)第89号尼崎市・尼崎市教育委員会事件決定等参照)。したがって、教育合同の申立人適格を否定した初審決定部分は、取消しを免れない。
 なお、府教委は、府の執行機関の一部にすぎず、不当労働行為救済命令の名あて人たる法律上独立した権利義務の帰属主体となり得ないものと判断するのが相当であるから、府教委の被申立人適格を認めることはできない。したがって、府教委に対する教育合同の救済申立てを却下した初審決定部分は、結論においては相当である。
  (2) 府の不当労働行為の成否
     府側は、16年度における本件非常勤職員の報酬引上げ要求に関して、4回にわたって行われた教育合同側との団体交渉のうち、第3回団体交渉において、報酬を引き下げるとする回答(第2回団体交渉で提示)の根拠について、先ず、15年度における一般職の常勤職員(以下「一般職員」)の給与改定率に準じて引き下げるものである旨をその具体的計算方法等を示して説明し、これに対する教育合同側からの批判を受けて、一般職員の給与改定率に準じて引き下げることの合理性などを説明して、教育合同側の理解を求めた。一方で、教育合同側は、労組法の適用される本件非常勤職員の報酬引下げは不利益変更であり、労使協議によって決定すべきであるとして、16年度の報酬月額を前年度のまま据え置くよう提案したが、府側は、本件非常勤職員の報酬は、地方自治法所定の給与条例主義の下、府条例に基づき、一般職員の給料との権衡等を考慮して決定すべきものであって、その任用も年度単位であるから、不利益変更ではないとして、教育合同側と対立した。
 さらに、第4回団体交渉において、府側から、教育合同側の前年度額据置きの提案について十分検討したが、理由がないので受け入れられない旨の回答がなされ、また、不利益変更か否かなどをめぐって、再び上記主張の対立が繰り返されたが、双方とも互いの主張を譲らず対立したまま、府側は、双方の歩み寄りは困難と判断して、団体交渉を打ち切った。
  上記の団体交渉経過からすると、府側は、常勤職員との権衡等を考慮して条例により決定するという本件非常勤職員の報酬額決定方法に関する基本的枠組み(地方自治法第203条第5項、昭和40年10月22日府条例第38号)に基づき、教育合同側の合意と理解が得られるように、報酬引下げの回答根拠について繰り返し説明を行っており、また、教育合同側からなされた前年度額据置きの提案についても、検討の上でそれを受け入れるべき理由がないことにつき説明しているのであって、府側としては不誠実な団体交渉を行ったとは認められない。
 一方、教育合同側は、労組法の適用される本件非常勤職員の報酬引下げは不利益変更であり、労使協議によって決定すべきであるとの基本的立場を譲らず、譲歩案として前年度額据置きの提案は示したものの、一般職員の給与改定に準じて引下げに応じるとの姿勢は一切示さなかったことが認められるのであるから、両者には既に歩み寄りの余地はなく、府側が、教育合同側との団体交渉において、不誠実に対応し、一方的に団体交渉を打ち切ったものとはいえない。このことに加え、第4回団体交渉後に団体交渉を有意義なものとする事情の変更があったことも認められないから、府側が教育合同側に対して団体交渉の再開に応じなかったことには合理的な理由が認められる。
 以上のことから、15年10月28日付けで教育合同からなされた16年度における本件非常勤職員の報酬引上げに関する団体交渉申入れに対する府の対応が、不当労働行為に当たると判断することはできない。

トップへ