平成19年1月9日
中央労働委員会事務局
第三部会担当審査総括室
審査官  高橋孝一
Tel  03−5403−2265
Fax  03−5403−2250


中延学園 不当労働行為再審査事件
(平成16年(不再)第43号)命令書交付について

 中央労働委員会第三部会(部会長 赤塚信雄)は、平成19年1月9日、標記事件に係る命令書を当事者に交付したので、お知らせします。

I  当事者
 再審査申立人 学校法人中延学園(以下「学園」という)
 再審査被申立人 朋優学院教職員組合(以下「組合」という)
    組合員8名(平成14年7月2日現在)

II 事案の概要
 1  本件は、朋優学院高等学校を運営する学園が、(1)労働協約締結等に係る平成14年3月8日付けの団体交渉(以下「団交」という)要求に対し、組合に回答書を手交したものの、別組合も含めた三者合同協議を要求して、団交に応じなかったこと及び(2)入試問題及び教科書発注に係るミス等を理由として同年4月16日に組合員Aを戒告処分に付したこと(以下「本件戒告という」)が不当労働行為であるとして、組合から、団交の応諾及び本件戒告の撤回の救済申立てがされた事件である。

 2  初審東京都労委は、学園に対し、(1)Aに対する本件戒告をなかったものとする取扱い、(2)本件戒告及び上記平成14年3月8日付けの団交不応諾に関する文書手交等を命じ、学園は、これを不服として再審査を申し立てた。

III 命令の概要
 1 主文
 初審命令主文第1項ないし第3項(前記II2(1)及び(2)の救済内容)を取り消し、再審査被申立人の救済申立てを棄却する。

 2 判断の要旨
(1)  団交申入れに対する学園の対応について
 本件当事者間の団交手順は、組合の要求書提出、学園の回答書手交の後、日程を調整して実施することを通例とするものであり、平成14年4月15日、学園が、回答書を手交した際には、後日、団交を行うことが想定されていたとみることができる。
 一連の事実関係からすると、学園の対応には柔軟性に欠ける面があるといわざるを得ないが、上記の手順や回答書手交の際の「組合が団交を求めるのであれば、いつでも応じる」旨の発言に照らすと、未だ団交の途が閉ざされていたとまでは判断されない。
 当時、学園の前記回答書には、三者合同協議をすべきであり、それが不可能であれば別組合と締結する労働協約を組合にも適用するのが妥当である旨の記載があること等からすれば、組合が団交に困難さを覚えたであろうことは推測に難くないが、学園は、組合提出の要求書記載の要求事項に対し、前記回答書において具体的回答をしており、全体としてみれば不誠実な応答とはみられない。回答書の別組合を含めた三者合同協議の開催等の記載は学園の希望、要望を述べたにとどまるとみるのが相当であり、当該記載や学園の対応をもって、その後の団交拒否の意思を明らかにしていたと判断することはできない。
 組合は、学園が別組合との間に労働協約を既に締結したものと誤解し、団交を求める具体的行動をとらないまま、都労委に救済を申立てたとみざるを得ず、したがって学園の対応は、正当な理由なく団交を拒否したとまではいえない。

(2)  本件戒告について
(1)  入試問題に関するミス
 平成13年2月実施の入試で、教科主任であり問題作成責任者であるAの不注意により、当該教科に出題ミスが発生したこと、また、当日の訂正放送にも誤りが生じたことについて、学園が、それぞれを戒告事由としたことには理由がある(組合はAの放送への関与を否認するが、Aの誤った指示に従って訂正放送が行われたと認めるのが相当)。

(2)  教科書発注に関するミス
 Aは、13年5月の教科会においてX社教科書が採択されたにもかかわらず、教科書需要票に誤ってY社教科書と記入したものであり、上記ミスは学園の信用を著しく損ねたものと認められることから、Aを戒告処分に付して問責した学園の判断には理由がある(組合は、教科会においてY社教科書が採択されたと主張するが、シラバスの作成経緯等に照らせば、当該主張は採り得ない。)。

(3)  本件戒告処分時期
 入試問題のミスが約1年2か月後に処分事由とされたことについては、入試終了後に理事長らがAに注意をしており、学園がミスを不問にしていたとはいえない。本件戒告は一定の期間において、教科主任たるAが発生させた「不祥事」を併せて処分としたものであり、内容の同質性や程度等に照らし一括して処分したことが不当とはいえない。
また、教科書発注のミスを知ってから6日後に本件処分を行ったことについては、Aの発注手続の誤りが速やかに確認されたのであるから、学園の対応がことさら性急かつ杜撰であったというべき理由はない。

(4)  本件戒告当時における労使関係等
 本件処分当時は必ずしも、労使関係が安定していたとはみられないが、学園に団交を拒否しようとするまでの意思があったとみることはできず、本件戒告には相当の理由がある上、処分の程度も就業規則上は最も軽い処分である「戒告」であること等からすれば、学園がAをあえて狙い撃ちにする必要があったものとも認められない。

(5)  結論
 本件戒告は、組合活動を理由とした不利益取扱いや、組合を牽制・抑圧しようとした支配介入には該当しない。

【参考】  初審救済申立日   平成14年7月2日(東京都労委平成14年(不)第72号)
   初審命令交付日   平成16年6月17日
   再審査申立日   平成16年6月28日

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