平成18年10月19日
中央労働委員会事務局
   審査総括官 藤森和幸
Tel 03−5403−2172
Fax 03−5403−2250


函館厚生院不当労働行為再審査事件
(平成17年(不再)第61号)命令書交付について


 中央労働委員会第三部会(部会長 荒井史男)は、平成18年10月19日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 再審査申立人 社会福祉法人函館厚生院(以下「函館厚生院」)(函館市)従業数約2200名
 (16.4.1現在)
 再審査被申立人 函館中央病院労働組合(以下「組合」)(函館市)組合員数約580名
 (18.4.20現在)

II 事案の概要
 本件は、函館厚生院が、(1)団体交渉実施のルール、定期昇給等の労働協約の破棄、就業規則の改正等に関する団交申入れに対し、組合員の誰もが参加する団交(以下「組合員参加型団交」)を拒否したまま、労働協約の破棄を通告し、就業規則を改正したこと、(2)平成15年度3月期末手当等に係る労使協議会での協議において不誠実な対応をしたこと、(3)組合が毎年春闘時に行ってきた組合旗掲揚や腕章等の使用を許可しなかったこと、(4)同16年度春闘要求に関する団交申入れを上記(1)と同じ理由で拒否したこと、(5)組合の定期昇給等を求める署名活動に抗議し、中止を求めたことが不当労働行為であるとして、申立てがあった事件である。
 同17年8月31日、初審北海道労委は、上記(1)(2)(4)(5)については不当労働行為と認め、(3)については申立てを棄却したところ、函館厚生院は、これを不服として、同年9月8日に再審査を申し立てた。中労委は、初審命令を一部変更し、上記(1)のうち、労働協約の破棄通知をしたこと、就業規則の改正に関する組合員参加型団交に応じなかったこと、及び(2)の労使協議会での函館厚生院の対応については、不当労働行為に当たらないとして組合の救済申立てを棄却した。

III 命令の概要
 1 判断の要旨
(1) 団交実施のルール等に関する団交申入れについて
 組合員参加型団交については、函館厚生院と組合間で、長年何らの問題もなく行われてきたものであったが、函館厚生院は、交渉委員の人数を絞った団交実施のルールを提案し、このルールによる団交以外には応じないとして、この問題に対する組合の団交申入れに合理的理由もなく応じないのであるから、このような函館厚生院の行為は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
(2) 定期昇給等の労働協約の破棄について
 定期昇給の根拠を巡る昭和52年協定及び同53年協定の解釈に関して、函館厚生院と組合の見解が対立し、平行線のままの状況にあった以上、函館厚生院が、両協定を破棄することとし、その旨を組合に通知したとしても、その行為自体は不当労働行為に当たるとはいえない。
 しかし、函館厚生院は、協約破棄通知に関する組合の団交申入れに対し、申入れ事項とは直接関係ない「従来形式での団交には応じない」との理由を挙げて、組合が求める組合員参加型団交に応じておらず、このような行為は、上記(1)と同じく、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たる。
(3) 就業規則の改正について
 函館厚生院は、就業規則改正問題について約5か月にわたり、新旧対照表を示すなどして、組合からの質問に対して詳細な説明を行うなど、実質的には団交としての実態をもった事務折衝等を行っており、このような経過を踏まえた上で、組合に対して意見書の提出を求めたが、組合が提出しなかったため、やむなく労働基準監督署に就業規則の変更を届け出たのであるから、函館厚生院が、組合の申し入れた組合員参加型団交に応じなかったからといって、不当労働行為に当たるとまではいえない。
(4) 労使協議会における函館厚生院の交渉態度について
 労使協議会は、平成15年度3月期末手当等を巡り交渉が難行したことから、北海道労委のあっせんにより設置され、期末手当の協議を含めた話し合いを行うこととされていたが、その後労使間で団交のあり方を巡って対立し、団交が行われない状況が続いていた。このような状況にあって、同16年1月30日の労使協議会では、期末手当についても議題として挙げられていたのであるから、函館厚生院が労使協議会の中で期末手当について回答したとしても、労使協議会設置の趣旨を遵守せず、不誠実な対応をしたとまではいえないから、不当労働行為には当たらない。
(5) 平成16年春闘要求に関する団交申入れについて
 平成16年春闘においても、組合は組合員参加型団交を求め、一方函館厚生院は適正数による団交を主張して対立し、同春闘の話し合いは全く進展せず、膠着状態にあった。その原因が組合員参加型団交には応じないとする函館厚生院にあることは明らかであって、そのような行為は上記(1)と同じく不当労働行為に当たる。
(6) 組合の署名活動に対する抗議書の提出について
 署名活動は、平成16年春闘の交渉方法を巡って組合と函館厚生院が対立し、話し合いが膠着状態の状況の下で行われたものであり、その内容を見ると、病院周辺や繁華街で行われているものの患者を対象としたものでなく、繁華街で行われたのもわずかに1回であったこと、また、その記載内容も、同年の春闘の定期昇給に関する要求内容と考え方が記載されており、特に函館厚生院を誹謗、中傷するような記載もなかったことからすれば、本件署名活動は正当な組合活動の範囲を逸脱したとまでいうことはできず、このような組合の署名活動に抗議し、その中止を求めた函館厚生院の行為は、不当労働行為に当たる。

【参考】 本件審査の経過
  初審救済申立日 平成16年 3月26日(北海道労委16年(不)第7号)
  初審命令交付日 平成17年 8月31日
  再審査申立て 平成17年 9月 8日

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