平成18年8月8日
中央労働委員会事務局
 第一部会担当審査総括室
  室長   西野幸雄
Tel 03−5403−2157
Fax 03−5403−2250


エイアイジー・スター生命保険不当労働行為再審査事件
(平成17年(不再)第31号)命令書交付について


 中央労働委員会第一部会(部会長 山口 浩一郎)は、平成18年8月7日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 再審査申立人 エイアイジー・スター生命保険株式会社(東京都中央区)
  従業員約4500名(平成17年4月15日現在)
 再審査被申立人 全国銀行労働組合連合会(東京都千代田区)
  組合員約1400名(平成17年12月5日現在)
    同 銀行産業労働組合(東京都千代田区)
  組合員140名(平成17年12月5日現在)

II 事案の概要
 1 本件は、会社が、顧客サービス本部の移転に伴い同本部の嘱託事務員4名を雇止めとしたことに関して、同嘱託事務員が加入した組合との団体交渉に誠実に対応しなかったことが不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件である。
 2 初審東京都労働委員会は、会社に対して、上記団体交渉における会社の対応は不誠実であったとして、(1)団体交渉において組合からの質問に対して回答の根拠を裏付けるに足りる資料を示すなどして誠実に応じること、(2)謝罪文の掲示を命じたところ、会社は、これを不服として、再審査を申し立てたものである。

III 命令の概要
 1 主文
 本件再審査申立てを棄却する。
 2 判断の要旨
(1) 雇用継続要求等に係る交渉について
 嘱託事務員4名の雇用継続要求等に係る交渉について、(1)会社の基本的態度は、団体交渉を拒否すること自体はなかったものの、雇用継続要求について、会社の最高意思決定が出ている、故に雇止めの撤回はあり得ないなどと繰り返し回答しているのであり、その交渉態度に合意達成に向けて努力する意思のあったかについて疑問の残るところであり、(2)会社から60歳まで勤められると言われた等の具体的事項を組合が摘示したことに関して、会社は事実関係を確認しないで調査の必要もないと回答するなど、その交渉態度には問題があったといわざるを得ない。
(2) 新規雇用契約の提案等に係る交渉について
 嘱託事務員4名の新規雇用契約提案等に係る交渉について、会社が提案を行ったこと自体は評価できるものの、その後の会社の対応は、(1)新規雇用先に関する調査結果及び調査方法に関するいずれの回答・説明等もその根拠を具体的に説明せず、裏付けとなる客観的な資料も提供していないものであって、組合の要求・主張に対する対応として適切なものといえないこと、(2)新規雇用契約締結の方向に向けた提案について、その提案が実現するよう真摯に検討した形跡は認められず、当初から合意達成の意思が欠如していたといわざるを得ないものである。
(3) 不当労働行為の成否
 そうすると、本件団体交渉における会社の一連の対応は誠実なものであるとはいえず、使用者としての誠実団体交渉義務に反するというべきである。よって、本件団体交渉における会社の一連の対応は、不誠実団体交渉に当たる。
 本件においては、会社は、組合員である嘱託事務員の継続雇用あるいは新規雇用問題について、会社の決定に変更の余地はないなどとする主張に固執することなく、本件労使間の合意達成に向けてさらに組合と交渉を尽くすべきである。特に、会社は、組合員である嘱託事務員の通勤圏に所在する本社、支社、営業所における配置可能性について、的確な調査を行い、確かな資料の裏付けをもって団体交渉に臨むべきである。

 【参考】
 1 本件審査の概要
  初審救済申立日 平成15年7月14日(東京都労委平成15年(不)第77号)
  初審命令交付日 平成17年4月15日
  再審査申立日 平成17年4月25日
 2 初審命令主文要旨
(1) 会社は、組合が、組合員たる嘱託事務員の雇用問題を議題とする団体交渉を申し入れたときは、会社の決定に変更の余地がないなどとする主張に固執せず、組合からの質問に対し、会社の回答の根拠を裏付けるに足る資料を示すなどして、誠実に応じなければならない。
(2) 会社は、今後このような行為は繰り返さないよう留意する旨明記した文書を作成し、これを本社内に掲示すること。
(3) (2)について労働委員会へ文書報告を行うこと。

以上

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