平成18年6月12日
中央労働委員会事務局
第二部会担当審査総括室
   室長  神田 義宝
電話 03-5403-2162
FAX 03-5403-2250


ブックローン(査定差別)不当労働行為再審査事件
(平成11年(不再)第49号)命令書交付について


 中央労働委員会第三部会(部会長 荒井史男)は、平成18年6月9日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。命令の概要は、次のとおりです。

I 当事者
  再審査申立人  全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(「支部」)
    組合員1,500名(初審結審時)
     同  個人N
  再審査被申立人  ブックローン株式会社(「会社」)
    従業員 47名(初審結審時)

II 事案の概要
 1 本件は、会社が、支部ブックローン分会(「分会」)の分会長であるNに対し、平成9年度下期賞与及び同10年度上期賞与の各考課査定並びに同年度昇給の考課査定(「本件考課査定」)において、不当に低い評価を行ったことが不当労働行為であるとして、支部及びN(「支部ら」)から兵庫県労働委員会(「兵庫県労委」)に救済申立てがあった事件である。
 2 兵庫県労委は、支部の救済申立てを棄却する旨の命令を発した。
 これを不服として、支部らは、初審命令を取り消し、(1)本件考課査定を5等級Dランクから同Cランクに是正し、既支給額との差額及びこれに対する遅延損害金を支払うこと、(2)謝罪文の掲示を求めて、再審査を申し立てた。

III 命令の要旨
 1 命令主文
 本件再審査申立てを棄却する。
 2 判断の要旨
(1) Nに対する評価の合理性について
 Nの主たる業務である督促業務について、本件考課査定の対象時期におけるNの勤務実績を検討すると、Nが担当する長期延滞債権の回収が進まず、また、適切な貸倒れ処理もなされず、延滞債権の「底溜まり」の状況が生じていたことがみてとれる。そうすると、会社が人事考課制度について明らかにしていないことを考慮しても、本件考課査定において、NがDランク(平均よりやや劣る)と評価されたことが、合理性を欠くとはいえない。
(2) 不当労働行為意思の有無について
 Nの加入する支部及び分会と会社の間には、緊張関係があったことが認められるものの、会社の団体交渉態度や会社社長の行為等に不当とまでいえるようなところは特段認められず、不当労働行為意思があったものとはいいがたい。
(3) 不当労働行為の成否について
 人事考課においては、基本的に会社に裁量権があり、ましてNは準監督職の5等級であるので、Nについては、年功が考慮されて自動進級ができる下位等級よりも、会社の裁量の余地が大きいと認められる。本件考課査定については、(1)のとおり、Nに対する評価が合理性を欠くとはいえず、会社の裁量を逸脱したものとは認められない。また、(2)のとおり、会社が、支部及び分会の活動の故をもって、Nを人事考課において低く査定することにより、その活動を妨害しようとする意図を有していたとも認められない。よって、本件考課査定に関し、労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為の成立を認めることは困難である。

  【参考】初審救済申立日 平成10年6月4日(兵庫県労委平成10年(不)第5号)
 平成10年8月31日(兵庫県労委平成10年(不)第9号)
初審命令交付日 平成11年12月14日
再審査申立日 平成11年12月27日

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