平成18年6月20日
中央労働委員会事務局審査課
特定独立行政法人等審査官
黒田 正彦
 Tel 03−5403−2166
 Fax 03−5403−2250


総務省東山郵便局不当労働行為事件(平成14年(不)第1号)及び
日本郵政公社東山郵便局不当労働行為事件(平成15年(不)第1号)
命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成18年6月19日、標記併合審査事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 申立人 M (京都府京都市)

 被申立人 日本郵政公社(東京都千代田区)
 (職員数約27万名 平成16年4月現在)

II 事案の概要
 本件は、東山郵便局長が全逓信労働組合(現日本郵政公社労働組合)の組合員である申立人に対して行った(1)〜(3)の行為及び東山郵便局総務課長らが行った(4)の行為が労働組合法第7条第1号の不当労働行為に該当するとして、平成14年5月7日、当委員会に申立てのあった事件(平成14年(不)第1号事件)、並びに東山郵便局総務課長らが申立人に対して行った(5)の行為が労働組合法第7条第1号及び第4号の不当労働行為であるとして、平成15年6月18日、救済申立てがあった事件であり、当委員会は、平成16年3月4日両事件を併合し審査を行った。
(1) 通勤手当の不正受給を理由とする懲戒減給処分
(2) 両親を扶養親族とする扶養手当の認定取消し及び扶養手当の返納命令
(3) 両親に係る国家公務員共済組合の遠隔地被扶養者証の返納遅延に対する訓告処分
(4) 上記(1)〜(3)に関わる事情聴取及び申立人の両親との面談
(5) 平成14年(不)第1号事件の申立てに関わる事情聴取

III 命令の概要

 1 主文
 本件申立てを棄却する。

 2 判断の要旨
(1) 本件懲戒減給処分等(上記IIの(1)〜(4)の行為)の行為を行った事情の検討及び当局の行為が申立人の組合活動を嫌悪したものであったか否かの判断
 本件懲戒減給処分(上記IIの(1))について
 本件懲戒減給処分は、申立人の通勤手当の不正受給が、同人の過失による諸給与金の不正利得として、懲戒に関する規程に沿って決定したものであり、その逸脱は認められない。
 申立人は本件懲戒減給処分を、通勤手当の不正受給を行った他局職員及び選挙違反を行った郵便局長に対する懲戒処分が戒告であったことに比し、著しく重い処分であると主張するが、当該主張は処分の結果のみを比較するものであり、処分の軽重は判断し難いものであり、東山郵便局では、申立人以外に通勤手当の不正受給が発覚した事例もないから、前例と比べて、同人に対する処分が特に重いともいえない。
 本件扶養手当返納命令(上記IIの(2))について
 本件返納命令の対象となった各年の申立人の両親への仕送りが、両親の生計費の2分の1以上を負担しておらず、扶養親族として要件を欠くことは、認定要件を定める近畿郵政局人事部長通達からも明らかであるから、東山郵便局長が申立人に本件扶養手当の返納を命じたのは、手当の適正支給を図る上で当然の措置であるといえる。
 本件訓告(上記IIの(3))について
 申立人は、当局から、両親の共済の扶養認定の取消しに合わせて、遠隔地被扶養者証の返納を求められたが、長期間返納には応じていないことから、当局は、国家公務員共済組合法施行規則の規定を申立人に遵守させるため、郵政事業庁訓告規程に基づき本件訓告を行ったものと認められ、そのことには理由がないとはいえない。
 本件事情聴取等(上記IIの(4))について
(ア) 本件事情聴取
 当局が申立人に対して行った4回の事情聴取は、その3回は約15分〜約35分であり、長時間とはいえないし、1回は約3時間15分行われ、当局の申立人に対する厳しい対応が認められるが、このことは同人の態度に起因するものであり、事情聴取の対応の全てに当局の非があるとはいえない。
(イ) 両親との面談
 当局が扶養手当及び共済の扶養認定を過去5年間遡及して取り消すことを申立人に告げているが、事柄の性格上、同手当の返納を命ずる前に、同人の送金実態等の正確な把握の必要及び両親の国民健康保険加入への移行について直接説明する必要があると考えることは理解でき、当該面談が不要であったとまではいえない。
 また、面談の内容からは、当局が申立人の組合活動を嫌悪した発言があったとは考えられない。
 申立人の組合活動に対する嫌悪の有無
 申立人は、東山郵便局に異動後、東山総分会の役員となり、その間、京洛支部の日刊紙に、当局批判等の記事の掲載、郵政幹部職員の選挙違反を批判する壁新聞が掲示されていたことが認められ、当局の対応は、京洛支部の支部長に対して日刊紙の記事の是正の申入れを行ったこと、組合掲示板の便宜供与を打ち切る可能性を発言したことが認められるが、日刊紙に関する申入れは、口頭による申入れにとどまり、それ以上の労使問題の進展はなく、上記の当局の対応を組合活動への干渉とみることはできない。また、日刊紙及び壁新聞には、発行元の京洛支部の名前しか記載がなく、申立人と当局の間で労使関係上直接に対立する場面は生じておらず、申立人の組合活動歴から、当局が特に同人を組合の活動家として意識する状況にあったとの事情も認められない。
 以上のことに加え、本件の中心である申立人の通勤手当の問題は、定期監査ないし駐輪場の整理が発端であり、本件懲戒減給処分等の行為については、当局が申立人の組合活動を嫌悪して行ったものと認めるに足る事実はなく、申立人のその余の主張については論ずるまでもない。
 以上のとおり、当局の本件懲戒減給処分等の行為は、それ相当の理由があり、それ自体として特に不自然あるいは不合理な点はなく、また、当局が申立人の組合活動を嫌悪して行ったものでないことは、明らかである。したがって、これらの当局の行為は、労働組合法第7条第1号の不利益取扱いには該当しない。

(2) 救済申立てに係る本件事情聴取(前記IIの(5))について
 本件事情聴取は、平成14年(不)第1号事件の救済申立書に、申立人が故意に通勤手当を不正利得していたのではないかとの疑念が持たれる記載があったため、前任郵便局の通勤について確認しようとしたものと考えられ、事情聴取のやりとりからみても、当局が救済申立て自体に何らかの発言をした事実は認められないから、当局の事情聴取は、申立人の組合活動を嫌悪して行ったものとは到底いえず、不利益取扱いには該当しない。

 3 結論
 以上のとおり、前記IIの(1)〜(4)の行為は、いずれも労働組合法第7条第1号の不当労働行為に当たらず、また、前記IIの(5)の行為は、同条第1号及び第4号の不当労働行為に当たらないから、本件申立ては棄却することとする。

〜以上〜

トップへ