平成18年5月30日
中央労働委員会事務局
第一部会担当審査総括室
 審査総括官 西野幸雄
Tel 03-5403-2157
Fax 03-5403-2250


オサメ工業不当労働行為再審査事件
〔平成17年(不再)第18号〕
   命令書交付について


 中央労働委員会(第一部会長 山口浩一郎)は,平成18年5月29日,標記事件の再審査命令書を関係当事者に交付しましたので,お知らせします。
 命令の概要等は,次のとおりです。

I 当事者
再審査申立人オサメ工業株式会社(製造業;従業員約60名)
再審査被申立人全日本金属情報機器労働組合大阪地方本部(大阪市所在;組合員約860名)
全日本金属情報機器労働組合大阪地方本部オサメ工業支部
(大阪府門真市所在;組合員約3名)

II 事案の概要等

 1 本件は,オサメ工業株式会社(以下「会社」)が,同社従業員が執行委員長となって全日本金属情報機器労働組合大阪地方本部オサメ工業支部(以下「組合支部」)を結成した際,同執行委員長に対し解雇通告を行ったこと,その後同組合支部及びその上部団体である全日本金属情報機器労働組合大阪地方本部(以下「組合地本」)との団体交渉に際し,日時,場所,参加人数等の団交条件に固執して実質的な団体交渉を行わなかったこと等がいずれも不当労働行為であるとして,平成15年11月25日,組合支部及び組合地本が大阪府労働委員会(以下「大阪府労委」)に対し救済申立てを行った事案である。
 2 平成17年3月4日,大阪府労委は,同申立てのうち,組合活動のための会社食堂の使用を求めた部分を棄却したが,その余はいずれも認容し,会社に対し,誠実団交を命じたほか,不誠実団交,組合支部執行委員長に対する解雇通告,組合支部三役らに対する会社社長の発言,組合支部役員に対する処遇がいずれも会社の不当労働行為と認められたため今後これを繰り返さないことを明記する内容の文書の手交を命じた。
 3 会社は,上記初審命令を不服として,同年3月16日,再審査を申し立てた。

III 命令の概要等

 1 命令主文要旨
 本件再審査申立てを棄却する。

 2 判断要旨

(1) 組合支部三役に対する発言について
 組合支部の結成通知交付当日である平成15年7月29日,会社社長が同社従業員である組合支部三役に対し,「誰が組合を作ったんだ。お前ら,いい年をして,いいことか悪いことか分からんのか。」「お前たちも明日,辞表を書いて持ってこい。」などと発言したことが認められ,これは会社による組合支部に対する支配介入に該当するから,これが不当労働行為に該当するとした初審判断は相当である。
(2) 組合支部執行委員長に対する解雇通告について
 同月30日,会社は,同社従業員である組合支部執行委員長に対する解雇通告書を掲示するなどしたが,当時の具体的状況に照らし,これは同人が組合結成及び会社に対する組合結成通知等の組合活動を行ったことによるものと認められるから,正当な組合活動を理由とする不利益取扱いであり,これが不当労働行為に該当するとした初審判断は相当である。
(3) 組合支部員に対する発言について
 同年8月4日,会社社長が,同社従業員である支部組合員に対し「組合に入るのか。」「やめとけ。」「あんな組合入ったらえらいことになるよ。」「将来のことを考えよ。」などと同人に対する脱退勧奨を内容とする発言を行ったものであることが認められ,当時の状況に照らし,同発言が会社による組合支部に対する支配介入の効果を有するものであることは明らかであるから,これが不当労働行為に該当するとした初審判断は相当である。
(4) 非組合員3名に対する発言について
 (3)同日,会社社長が,非組合員である同社従業員3名に対し「組合に入るのは構わん。」「お前ら,分かっているやろうな。ここを辞めたら行くとこないぞ。」などと発言したことが認められるところ,当時の状況に照らし,これは組合支部に加入するなどすれば会社による不利益取扱いがあることを予想させるものと言わざるを得ず,組合支部に対する支配介入の効果を有するものと認められるから,これが不当労働行為に該当するとした初審判断は相当である。
(5) 元組合支部役員の昇任昇給について
 会社は,同年10月1日,当時組合支部役員であった会社従業員1名についての昇任辞令を発令したが,これは会社から不利益取扱いを受けることを嫌った同役員が組合支部を脱退したことを受けて,同役員が今後組合支部の活動に関係しないようにする目的をもって同役員を厚遇したものと認めることが出来,かかる会社の行為は,同社従業員らの組合支部加入を躊躇させると共に,組合支部からの脱退を奨励する効果を有するものと言えるから,組合支部に対する支配介入に該当し,これが不当労働行為に該当するとした初審判断は相当である。
(6) 誠実団交について
 組合ら申入れにより,3回にわたって団体交渉の場が設定されたことは認めることが出来るが,いずれの場合も,冒頭で会社が組合側人数を3人にせよと主張したため,実質団交に至らないまま会場の制限時間により終結しているものであり,かかる会社の主張には合理的な理由がないから,正当な団交拒否とは言えず,従って会社が誠実団交義務を尽くしたものとは認められないため,これが不当労働行為に該当するとした初審判断は相当である。

【参考】

 ●本件審査の概要
初審救済申立日 平成15年11月25日(大阪府労委平成15年(不)第8号)
初審命令交付日 平成17年 3月 4日
再審査申立日 平成17年 3月16日
再審査結審日 平成17年12月 6日

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