平成18年5月12日
中央労働委員会事務局
  審査総括官 藤森和幸
Tel  03(5403)2172
Fax  03(5403)2250


スミケイ運輸外1社不当労働行為再審査事件
(平成17年(不再)第4、5号)命令書交付について


 中央労働委員会第一部会(部会長 山口浩一郎)は、平成18年5月12日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。

I  当事者
 再審査申立人   住友軽金属工業株式会社(東京都港区)
 (従業員数約2,300名(16.10.12現在))
スミケイ運輸株式会社(名古屋市港区)
 (従業員数約300名(16.10.12現在))
 再審査被申立人 スミケイ運輸親交労働組合
 (組合員数14名(16.10.12現在))

II  事案の概要
 本件は、(1)スミケイ運輸が、平成14年7月9日付けで組合から要求のあった住友軽金属の伸銅所構内に立地するスミケイ運輸の豊川営業所における組合事務所の貸与に応じなかったこと、(2)住友軽金属が、上記(1)のスミケイ運輸による組合事務所の貸与について、伸銅所構内における安全管理上の問題を理由に異議を述べ、また、同組合事務所の貸与に関して組合から申入れのあった団体交渉を拒否したことが不当労働行為であるとして、同年7月17日、愛知県労委に救済申立てがなされた事件である。
 愛知県労委は、(1)スミケイ運輸による豊川営業所における組合事務所の貸与、(2)上記(1)のスミケイ運輸による組合事務所の貸与に関しての住友軽金属の異議の禁止、(3)文書交付(上記(1)、(2)及び住友軽金属の団体交渉拒否に関して)を命じ、その余の救済申立てを棄却する命令書を、平成17年1月28日から31日にかけて、各当事者に交付したところ、これを不服として、同年2月10日、住友軽金属及びスミケイ運輸は、再審査を申し立てた。

III  命令の概要
 主文要旨
(1)  初審命令主文中、住友軽金属に係る部分を取り消す。
(2)  住友軽金属に対する救済申立てを却下する。
(3)  スミケイ運輸の本件再審査申立てを棄却する。
 判断要旨
(1)  住友軽金属の使用者性について
 住友軽金属とスミケイ運輸が資本関係、役員・人事関係、取引関係等においていわゆる親子企業の関係にあったことが認められるものの、スミケイ運輸は、独自の社員給与規則、資格制度規則等を有してこれらを自社従業員に対し適用し、また、毎年度の給与改定等についてもスミケイ運輸と各労働組合との団体交渉を通じて決定されていたのであり、住友軽金属がスミケイ運輸の従業員に対して直接業務上の指揮命令を行ったり、労働条件の決定に関与するなどしていたとは認められない。しかも、住友軽金属がスミケイ運輸の従業員の基本的労働条件について現実的かつ具体的な支配力を有していたというような事実は認められないし、その疎明もない。したがって、住友軽金属は、スミケイ運輸の従業員に対して労働組合法第7条の使用者としての地位にあるとはいえないから、この点に関する初審命令は取消しを免れない。
(2)  スミケイ運輸の不当労働行為の成否について
 スミケイ運輸は、組合から要求のあった豊川営業所における組合事務所の貸与に応じなかったのは、あくまでもスペースの関係から貸与が困難であるとの独自の判断に基づくものであり、住友軽金属の意向に逆らえなかったからではない旨主張するが、上記主張は、本件初審においてスミケイ運輸が、「豊川営業所建物内において組合事務所を提供することは可能であるとの結論に達したが、住友軽金属に相談したところ、同意できないとの回答が返ってきた」旨主張していたことと明らかに矛盾するものである。
 一つの労働組合のみに対して便宜供与として組合事務所の貸与を論じる場合はともかく、本件のように別組合に対しては既に組合事務所が貸与されているにもかかわらず、組合に対してはそれが貸与されていないというような場合には、スミケイ運輸としては、施設の状況や労働組合の規模、活動状況等を勘案して、組合に対しても便宜供与において別組合に対するのと同じく均衡ある対応をすべきものといわなければならない。
 (1)上記アのスミケイ運輸の主張のように、スミケイ運輸自らが豊川営業所の建物内において組合事務所を提供することが可能であるとの結論に達したというのであれば、組合事務所を設置するスペースを捻出することは可能であったというべきであること、また、(2)スミケイ運輸は、豊川営業所及び名古屋部門ともにトラックの駐車スペースが恒常的に不足しているため住友軽金属から別途駐車場の使用が認められており、このような状況の中で、スミケイ運輸は、名古屋部門において、別組合に対し、敷地内のトラック有蓋車庫横のスペースを駐車場として利用せずにコンテナを設置して組合事務所として貸与しており、組合に対しても別組合の組合事務所に隣接した形でコンテナを設置して組合事務所として貸与することが可能であると回答していたものであったこと、さらに、(3)組合の活動拠点が名古屋部門から豊川営業所に移り、その活動も不便な状況が生じており、その不便さについては名古屋部門において組合事務所の貸与を受けたとしても解消につながらず、組合事務所の貸与をめぐり組合と別組合との間に組合活動上の利便性に大きな差が生じていることが認められ、しかも、(4)スミケイ運輸が和解の席とはいえ、「1労働組合1組合事務所」と考えている旨表明しており、このことは本件初審審問において労使双方の証人によっても確認されていることを合わせ考慮すると、スミケイ運輸が別組合に対しては組合事務所を貸与しているにもかかわらず、組合から要求のあった豊川営業所における組合事務所の貸与に応じなかったことには合理的な理由があると認めることはできない。したがって、スミケイ運輸が組合から要求のあった豊川営業所における組合事務所の貸与に応じないことは、合理的な理由もなく組合間に差別的な取扱いをしたものとして、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると判断される。
(3)  救済方法について
 スミケイ運輸に対して、豊川営業所において組合事務所を貸与することを命じることとするが、同営業所は伸銅所構内に立地している関係上、組合は、組合事務所を使用するに当たっては、伸銅所の定める安全、防犯等管理上の規則を遵守するなど適切な使用に留意する必要があることはいうまでもないことを付言する。

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