平成18年4月28日
中央労働委員会事務局第二部会担当
審査総括官  神田 義宝
電話  03−5403−2162
Fax  03−5403−2250


 品川区不当労働行為再審査事件〔平成15年(不再)第57号〕命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成18年4月27日、標記事件にかかる命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I  当事者
 使用者側   品川区(「区」)(東京都品川区)
 職員数約3400名(平成8年3月現在、以下同じ)
 労働者側 東京南部労働者組合(「組合」)(東京都品川区)
 組合員数20名

II  事案の概要
 本件は、区が、昭和50年5月6日から同年9月30日まで区に臨時職員として採用されたSの雇用期間満了による雇止めについて、同人の解雇撤回と職場復帰を議題とする平成8年2月13日付け組合からの本件団体交渉申入れに対し、他の労働組合との団体交渉には応じていながらこれに応じなかったことは、団体交渉の拒否及び支配介入の不当労働行為であるとして、組合が同年3月26日、東京都労委に、団体交渉の応諾、他組合との差別による支配介入の禁止を求めて救済を申し立てた事件である。。
 初審東京都労委は、平成15年11月11日、Sは単純労務職員に該当するとみるのが相当であり、地方公営企業等の労働関係に関する法律を介して労働組合法の適用を受け労働組合に加入することができるとして、(1)Sに関する団体交渉については、区は労働組合法の使用者としてこれに応ずる必要があるとしたが、(2)Sの期間満了に伴う問題については、組合はSの期間満了に伴う問題発生後20年余を経過して初めて団体交渉を申し入れたのであるから、社会通念上合理的な期間を著しく超えた団体交渉申入れであるとして、区が本件団体交渉申入れを拒否したとしても正当な理由のない拒否とはいい難く、(3)また、区が本件団体交渉申入れを拒否したことをもって他の労働組合と差別したとはいえないとして、救済申立てを棄却した。
 これを不服として、組合は、平成15年11月25日、再審査を申し立てた。

III  命令の概要
 主文要旨
 本件再審査申立てを棄却する。
 判断の要旨
(1) 当委員会の判断
 地方公務員であったSについて、労働組合法上の組合加入資格及び区の使用者性を確認することが前提となるが、当委員会は、当時、Sが従事した職務の内容と責任の程度及びその任用、給与の取扱い等に照らすと、初審命令が要旨、Sは地方公務員法第57条の「単純労務職員」に該当すると判断し、したがって、同人は労働組合に加入できるとともに、同人に関する団体交渉については、区は労働組合法上の使用者としてこれに応ずる必要があるとしたことを相当とする。
 再審査申立人は、本件における問題は団体交渉拒否であるから、考慮すべき事項は、Sの事情ではなく、組合の団体交渉申入れに至る事情が社会通念上相当でないかということであると主張するので、この点について検討する。
 確かに、本件団体交渉申入れそのものは組合結成後著しく長期間を経て行われたものではないが、団体交渉申入れが社会通念上合理的期間内に行われたといえるか否かを判断するに当たっては、交渉申入れに係る議題について団体交渉による解決が実際上期待できるかという観点から、交渉申入れに至る諸般の事情を総合的に勘案すべきである。
 そこで本件についてみると、交渉議題の内容であるSの雇止めは、雇用期間の満了によるものであり、それ以前に更新も行われていないから一応の理由があるといえ、さらに、本件雇止めについて組合が団体交渉を申し入れたのは平成8年2月13日であり、それまでの間、区においては、Sの雇止め問題について、職場復帰はさせえないとの立場をとりつつも品川臨職共闘との間で折衝を重ねたが解決には至らず、Sが在籍しない状態が20年余の長期にわたり継続したものである。これらのことからすれば、本件団体交渉申入れは、社会通念上交渉議題に関する解決を実際上期待できる時機を失したものといわざるを得ず、区がこれを拒否したとしても、正当な理由のない拒否とはいい難い。
 再審査申立人は、Sは団体交渉を申し入れるのに要する相当の期間内に実際に団体交渉を申し入れることが必要であったとする初審命令は、同人に無理を強いるものである主張をするが、本件団体交渉申入れに至るまでの間、自らの選択の結果として、労働組合法の交渉以外の方法によって解雇撤回を求めていたといわざるを得ないものであり、それにより交渉時機を失したことの不利益は組合側において甘受すべきものである。
 他組合との差別の存否について、前記(1)判断のとおり、区が組合からの本件団体交渉申入れを拒否したことを不当労働行為とはいえないのであるから、本件申入れの拒否をもって区が組合と他組合とを差別したとはいうことができず、その主張は採用の限りでない。
 以上のとおりであるので、区が組合からの本件団体交渉申入れに応じなかったことについて労働組合法第7条第2号及び第3号に該当しないとした初審命令は相当であり、本件再審査申立てには理由がない。

 本件審査の概要
 初審救済申立日  平成 8年 3月26日
 初審命令交付日  平成15年11月11日
 再審査申立日  平成15年11月25日
 再審査終結日  平成18年 4月27日

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